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閑話─皇宮騎士団第1部隊第2班

 



「 お嬢様……本当にその様な格好で行かれるのですか?」

「 だってお掃除に行くのよ。 綺麗なドレスやワンピースなんておかしいじゃない。やる気が無いのかと思われちゃうわ 」


 服装は、薬草の世話をする時や使用人に変装をする時に着ている小作人の着るオーバーオール。


 そう……

 レティは皇太子殿下から罰則をくらって、今からその罰を受けに行くのである。



 あの日。

 あの火事の日。

 レティと護衛騎士の2人は大活躍をした。

 これは皇帝陛下からもお褒めの言葉を頂いたが……


 それはそれ。

 皇太子殿下の婚約者として、その護衛騎士としては決してやってはならない事であった。

 自ら危険に飛び込んで行くなんて……


 騎士の2人は警護する対象者から離れた事で、護衛騎士の任務を怠ったとしての罰は当然の事。


 騎士はその任務に誇りを持っている。

 その誇りが遂行されなかった時……

 己の失態を罰する事……それが騎士の矜持。



 そして……

 この可愛らしい婚約者も騎士なのである。

 自分のせいで彼等だけが罰則を与えられるなんて耐えられ無いだろう。

 ループの話を聞いた今ならそれが分かる。


 皇太子は婚約者である公爵令嬢にも罰を与えた。



 騎士の2人には、騎士団の訓練所にある連絡所の建物周りの掃除を2週間。


「 リティエラ・ラ・ウォリウォール公爵令嬢! そなたは護衛騎士を無視して、勝手に危険な場所に行ったのは皇太子の婚約者としてのあるまじき行為。しかし、医師として多くの者を助けた事を考慮して、1日だけの騎士団の連絡所前の清掃の罰を命じる 」

「 御意 」


 レティは騎士の忠誠の姿勢を取り、皇太子殿下の命令を甘受した。



 アルベルトが……

 小さな可愛らしい騎士がいると、吹き出しそうになったのはレティには内緒だ。

 彼女は真剣なのだから。





 ***





 騎士達の掃除は、訓練が終わった後に当番でする事になっている。


 訓練はまだ終わってはいない様だが、少し早く訓練場に着いたレティは、教えられるでもなく掃除用具の入った戸棚を開けて、箒と塵取りを取り出して掃除をし出した。


 ここは勝手知ったる場所である。


「 リティエラ様! 私達も今から一緒に罰を受けます! 」

 訓練の終わった2人の騎士と共に和気あいあいと掃除をしてる。



 ここに第2部隊がいる。


 第1部隊には1班と2班がある。

 グレイのいる班は1班。


 2班の騎士達は先日の温泉地の視察に1班が任務に当たった事が口惜しい。

 まさかレティが同行するとは思って無かったのである。


 特に……

 ドラゴン討伐に当たったグレイや、サンデイ、ジャクソン、ロン、ケチャップが羨ましくて仕方無い。

 彼等は今でもあの時の話を自慢する。


 まあ……

 全員無事だったから語られる武勇伝だが。




 公爵令嬢がオーバーオールを着て掃除を真剣にしている。


 そもそもこの罰則は……

 火事の時に現場に駆け付けた事が、皇太子殿下の婚約者としての自覚が足りないと言う事の罰則である事が、騎士達の間では大層好ましく感じられていたのだった。



 可愛い……

 天使がこの穢苦しい騎士団に下りて来た。

 皆の頬は赤くなり……

 ほわ~んと彼女を見つめている。



 訓練の終わった第2部隊の連中は、既に公爵令嬢の周りを囲んでいて、幸せそうにデレた顔をして掃除を手伝っている。


 彼等は何時も公爵令嬢の護衛の任務に付いているので、今はすっかり仲良し。


 乗合馬車でのお2人のお忍びデートの任務に付いた護衛の4人は、ロブスターや海の幸の料理を殿下にご馳走になったと言う。

 これは衝撃的な出来事だった。


 第2班はそんな美味しい思いはした事が無い。




 同じ第1部隊でありながら2班の面々はあまりレティとは面識が無い。

 これはお近付きになるチャンス。

 彼等もレティと仲良くなりたかった。


 楽しそうなレティと第2部隊の騎士達がいる輪の中に入ろうとした時に……

 ざわざわと大勢の騎士達が訓練場の路肩を歩いて来た。

 皇太子殿下の公務の護衛を終え戻って来たのだ。



 この日は皇太子殿下専用馬車に乗っての視察で、第1班と、人垣の整理に第2部隊の一部の騎士達が任務に付いていたのだった。


 グレイを見た時の彼女の嬉しそうな顔。

 第1班でもあのドラゴン討伐にいた彼等5人は特別な様だ。


 それはそうだが……

 何だか悔しい。


 それでも頑張って輪の中に入ろうとしたら……


 皆がザザザと後退し頭を下げ道を作った。

 皇太子殿下がやって来たのだ。


 彼女はもっと嬉しそうな顔をした。

 皇太子殿下は直ぐに彼女を連れて行った。



 ああ……

 お近づきになるチャンスだったのに……


 皇宮騎士団第1部隊第2班の皆は項垂れた。




 同じ第1部隊でも1班と2班では雲泥の差があった。

 仕事内容は同じで、大きな式典以外は1班と2班とで交代で任務に当たる。

 両方が外に出る事で、皇宮に何かあってはいけないからである。



 何が違うのかと言えば……

 1班にはグレイがいる。

 彼は騎士団で年に1度ある武道大会で、皇帝陛下付きの特別部隊の騎士と試合をして勝利した騎士。


 名実共に皇宮騎士団1の実力者だ。

 そんなグレイにアルベルトが絶対の信頼を置き、側に置きたがるのは当然の事。


 だからか……

 重要な任務は何時も第1班だ。

 特にレティが絡む警護には、必ずや1班が任務に当たる。

 


 我等が2班の班長は……

 腕は勿論立つが、グレイ班長に並ぶものでは無い。

 人柄は良いが……


 はぁぁ……

 班長をトレード出来ないものかと……

 真剣に思う皇宮騎士団第1部隊の第2班の騎士達なのであった。







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