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閑話─父と息子と父と娘

 



「 しかし……そちの娘は面白い 」

「 我が娘ながら……本当に……何処まで斜め上なのか…… 」

 もう、あれは私の手には負えませんと、肩を竦めるルーカスを見る皇帝陛下は嬉しそうだ。



 会議が終わって、2人でそのまま会議室に残り休憩中である。


 アルが魔力使いでレティちゃんがヒーラーって……

 これはもう運命だと皇帝は言った。

 余も皇后も、そなた達夫婦も兄のラウルも普通の人間なのにと。



 因みに……

 魔力使い同士が結婚しても産まれてくる子は魔力使いでは無い。

 魔力とは、あくまでも個々に宿る能力で遺伝とは何ら関係は無かった。


 魔力使いとヒーラーの結婚。

 そもそも、ヒーラーの存在が確認されて無いと言われているので、その2人が結婚をしたらどうなるのかなんて誰にも分からない。


 だからこそ……

 彼女を研究しなければならないのだが。


 本人は医師。

 アルベルトの言う様に、医師として自分で試したがるだろうから、とてもじゃないが本人に伝える事は出来ない。

 何よりも……

 彼女はシークレットでなければならないのだから。




 父と息子


 前皇帝が若くして崩御した事により、ロナウド・フォン・ラ・シルフィードは早くに皇帝に即位する事になった。


 自由が利く皇太子時代に、もっと色んな場所に行き、色んな経験をしたかった。

 皇太子妃と皇子を連れて色んな国を訪問したかった。


 そして何よりも……

 幼い皇子の側に、殆ど一緒にいる事が出来なかった事に今でも心を痛めている。


 住居も、皇帝と将来の皇太子になった事から、皇宮と皇子宮(←今の皇太子宮)に別れて住まなければならなくなった事もあり、寂しい思いをさせたのだ。


 自分の子供時代は、皇太子宮に両親と姉と長く住んでいたが、皇子とは5年しか住んであげれなかった。

 皇子は……

 父と一緒に住んでいた事さえ記憶には無いのだろう。



 父を亡くした悲しみに暮れる事も出来ない程に、突然の崩御は貴族や国民達に衝撃と混乱を招き、国を立て直す事に3年も要した。

 その間に母も崩御して、忙しさのあまり皇后でさえ皇子から遠ざかっていた。


 気が付くと……

 もう皇子は我々に甘えるどころか、話をする事さえも距離を置かれてしまう関係になっていた。



 それでも……

 皇子は真っ直ぐに育ってくれていた。


 きっとラウル達との関係が良かったのだろう。

 ラウル達は、皇子を皇子としてだけじゃなく友達として接していた。

 親達は不敬だとして制する事をしようとしたが……

 それは自然のままにと皇帝は彼等を制する事はしなかった。


 彼等といる皇子は、親にも見せない程の屈託のない笑顔で遊んでいたのだから。



 側で護衛をしているクラウドとの関係も良かった。

 彼は、度を越した悪戯や言動には、皇子であろうとも本気で叱り付ける事が出来る数少ない大人だった。


 昔……

 皇子が木に吊るされていると侍女が血相を変えて駆け込んで来た事がある。


 見に行くと……

 4人が吊るされていて……爆笑した。

 吊るされてる訳を聞いて呆れたが。

 親達はせめて皇子だけでもと慌てて下ろそうとしたが……

 クラウドに任せて親達を連れてその場を後にした。


 本音で皇子と接してくれる、ラウル達やクラウドが皇子の側にいる事が有り難かった。


 皆は今でも皇子の側にいて……

 彼等は皇子の御代の良い片腕になるだろう。

 余の側にルーカス達がいてくれる様に。





 父と娘


 娘は母親との関係が深い事は昔から変わらない。

 ラウルは皇子の遊び相手として私の手元に置いていたが……

 レティは違った。


 今となってはそれが良かったのか悪かったのか。

 結局は皇族に嫁がせる事になったのだから。

 あれ程、皇子と関わらせたく無くて遠ざけていたにも関わらず。


 ラウルの妹なのだから皇子と知り合うのは必然的だったのだろう。

 だけど……

 こんなに早くに皇子の目に止まるとは……

 皇子が我が家にやって来たのは、娘が学園に入学してから直ぐの事。


 帰宅して……

 皇子が我が家に来たと聞いて……

 嫌な予感がした事を覚えている。


 皇子が我が家に遊びに来るなんて事は今まで無かった事。

 いくらラウルが皇子の遊び相手でも。


 皇族の色々を身近で見てきたからこそ、娘を皇族には嫁がせたくは無かった。

 ましてや皇子はあれだけの美丈夫。

 皇子に娘を嫁がそうとして躍起になる親達や、皇子に想いを寄せる令嬢達の、どろどろとした世界に娘をいれたくは無かった。

 


 これも……

 運命なんだろうと、ルーカスは溜め息をついた。

 


 娘の入学当初の事と言えば……

 彼女が変わった瞬間がある。

 学園での入学式から帰宅しての事。


 一体何があったのかと言う位に変わっていたのだ。

 まるで別人かと思う程に。


 しかし……

 次の朝には明るい娘になっていた。

 それでも……

 入学式の朝までとは全く違う雰囲気である事は変わらない。

 元々母親ベッタリの娘であったが……

 暫くは母親と一緒に寝る位であった。



 ラウルとの関係も……

 入学式前には、学園に一緒の馬車で行くのは嫌だと言っていたが……

「 あら?同じ場所に行くのに何故別々に行くの? 」

 ……と、昨日まではあんなに嫌がっていた事を忘れたかの様に、翌日から一緒に登園する様になった。



 今でも思い出したら不思議で仕方ない。


 しかし……

 レティがヒーラーだと聞いた事で、もしかしたらあの時に、ヒーラーとしての何かが覚醒したのかも知れないと思ったりもしている。


 ヒーラーについて調べたりもしたが……

 何せ……

 ヒーラーの情報が無さすぎて、これと言う確信が出来ないのだから仕方がない。




 因みに入学式の後は……

 3度目の人生の終末を迎え、ループして来たばかりのレティである。


 ガーゴイルの討伐に出ていて……

 皇太子殿下を守る為にガーゴイルに飛び掛かり、目に矢を突き刺した時に、暴れたガーゴイルに薙ぎ倒されて絶命した。

 あの……

 壮絶な戦いの後だったのだ。




「 陛下……本当にうちの娘が皇室に嫁いでも宜しいのですか? 」

「 ん!? 余は構わぬぞ 」

「 あれが、皇后陛下になる姿が想像がつかないのですが…… 」

「 うむ……確かに……可愛すぎるかの? 」


 アルがあれだけ好いとるのだ。

 アルの為にも嫁がせてやってくれと……

 皇帝陛下がルーカスの肩を叩きながら笑った。








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