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クリスマスは恋の季節

 



 学期末試験が始まった。

 今回は先生達に本気で試験に挑む様に言われて、本気で勉強をしている。


 500点満点で500点を取る事が気に食わないと言うのだ。

 私が手抜きをしてると……


 全く訳が分からん。


 だけど……

 勉強をしていたら苦手な刺繍をしないで済むので、レティは勉強をしている。


 そう……

 試験が終わるとクリスマスがやって来るのだ。


 お母様は「 殿下へのクリスマスプレゼントは手作りを贈りなさい 」…と、やたらと煩い。



 初めてのクリスマスプレゼントは豚の刺繍をしたマフラーで、昨年は手袋に刺繍をした。


 さて……

 今年は何を贈れば良いんだ?

「 恋人達は毎年何を贈っているの? 」


 リサーチに行かなきゃ!

 あっ!駄目だ勉強しなきゃ。

 500点取っちゃうわ。


 ……って……これおかしくない?


 何で500点じゃ駄目なのよ~

 先生達に乗せられて、変な勝負をしたもんだと後悔するのだった。




 夜遅く、公爵家にアルベルトがやって来た。

 今日のお妃教育は試験で中止にしたので、少しだけレティの顔を見に来たのである。


 レティが皇宮に出入り自由な様に、アルベルトも公爵家に出入り自由だ。


 夜遅くに訪ねて来た時には、執事のトーマスが気を使ってくれて、敢えて公爵家の家人達を呼びに行かないでくれる事が有難い。


 レティは部屋で勉強中だとトーマスが言う。


 大きな中央の階段を上がり、レティの部屋のドアをノックしたが……返事が無い。

 寝てるのかな?と、こっそりとドアを開けて部屋に入る。



 あっ! 勉強してる。


 レティの部屋の真ん中にはソファーとテーブルが置いてあり、左側は寝室があり、その奥にサニタリーと衣装部屋がある。

 右側が勉強スペースになっていて、大きな書棚には色んな種類の本が数多く並んでいる。


 その中でも分厚い医学書がドーンと並んでいるのを見ると、レティは医者なのだと改めて思い知らされる。



 レティは窓近くの文机に向かって椅子に座り、教科書を開いて熱心にペンを走らせていた。

 湯浴みは既に済ませたのか、ナイトドレスにカーデガンを羽織っている。


 可愛いな~

 ずっと見ていたい。



 レティを見てると切なくなる。

 こんな可愛い子が何でループなんてしてるんだろうと。

 そして……

 3度も死んだなんて……


 きっと……

 俺と出会って無かったからに決まってる。

 絶対に4度目は無い!

 そう言い聞かせないと怖くてたまらなくなる。


 そして……

 そんな思いをレティはずっと1人で抱えて来たのだ。

 それなのに……

 俺はレティを泣かせてばかりだ。


 アルベルトはたまらなくなって小さなレティの肩を抱き締めた。



「 !?……… アル!?……何時来たの? 」

 レティはアルベルトの腕の中でキョトンとしている。


「 随分と集中してたね? 少し前からここにいたよ 」


 テーブルの上には2人分のお茶が置いてある。

 トーマスが運んで来たのさえも気付かなかった。


 レティの集中力は凄い。

 彼女は自分を天才じゃ無いと言うが、この集中力があるからデザイナーであり、医師であり騎士であり薬師なんだろう。



「 ごめんなさい。全然気が付かなかったわ 」

「 今回はちゃんと勉強をしてるんだね 」

「 先生達がね…… 」

 レティは先生達との勝負の話をすると、君は何時も誰かと戦ってる……と、アルベルトがケラケラと笑う。


「 ええ! 戦いは負けるわけには行かないわ! 私は騎士なんだから 」

「 ……… いや……僕の婚約者だから…… 」

 先生達をギャフンと言わせてやるわ!……と、鼻息を荒くしているレティの頬にアルベルトはチュッとキスをした。




 結果。

 レティは500点満点で905点だった。

 先生達は実力を発揮したと大満足。

 勉強には終わりが無いのだと言って。

 ふざけるのにも程がある。


 それに……

 何なの?……プラス5点って?

 たったの5点……


 何だか負けた様な気がするレティなのであった。




 ***




 試験が終わると直ぐにクリスマス。


 学園ではクリスマスパーティーが開かれる。

 パートナーと踊りたいが為に、この時期にはカップルが増える。

 皆、勇気を出して告白するのである。



 学園中が浮かれ気分になり、皆がソワソワする季節だ。


 レティの友達のマリアンヌはレティよりも少し早く婚約をしていて、彼は1つ上の学年で、今年最後のクリスマスパーティーになる。


 ユリベラは騎士クラブの部長に絶賛片思い中。

 騎士クラブの部長も4年生だから、今回が最後のクリスマスパーティーとなる。



 ユリベラは一大決心をした。

「 わたくし……告白しますわ 」

 キャーッ!

 やっと決心したのねとレティとマリアンヌはユリベラに抱き付いた。



 その方法は……お手紙。

 レティはユリベラから手紙を渡された。

 騎士クラブで渡してくれと。


「 任せて! 」

 もう、今日の放課後が待ち遠しくて仕方ない。



「 リティエラ君? 今日は集中出来て無かった様だが? 」


 グレイは、学園に指導に来てる時は先生なので、他の生徒と同じ様に君付けで呼び、レティもグレイ先生と呼んでいる。


 レティはクラブ後に重要任務があるので気が気ではない。


「 今日は駄目ね、全く的中しなかったわ 」

「 何か考え事でも?」

「 後でラブレターを渡すの 」

「 !? 」


 休憩時間が終わりそうなのでレティは皆の元へ駆けて行った。


「 うそだろ? 相手は誰なんだ? 」

 今日のグレイのお供はロン。


 何時も指導にはグレイと助手が1人来ている。

 皆が懐かしい学園に行きたいと思っているので、助手の席は取り合いになっていた。



「 部長! お話しがあります 」


 部活が終わると、少し緊張した顔で公爵令嬢がやって来た。

 この部長は、卒業試合でエドガーと試合をする時に、大泣きをして試合にならなかったガタイの良い男子部員である。



「 えっ!? 」

 部長は汗を拭きながら地面に座って皆と談笑中だ。


「 こちらに来て下さい 」

 立ち上がると、公爵令嬢が付いて来るように促した。

 何か部の事で意見があるのかと思いながら、建物の陰に付いていくと……


「 これを読んで下さい! 」

 公爵令嬢が手紙を差し出してくる。


 手紙は可愛らしいピンクの花模様。

 間違いなくラブレター。


 気になって覗いていた部員達が嘘だろーっ……と、絶叫する。

 グレイとロンも手を口に当てて絶句していた。


 一番驚いたのは部長だ。

 真っ赤になりながらも、辺りをキョロキョロ見渡している。


「 俺はそれを受けとる事は出来ません! 殿下が…… 」

 そう言いながらもまだキョロキョロと周りを警戒している。


「 ち……違います! わたくしではありませんわ。わたくしのお友達からです! 」

 慌てて否定した公爵令嬢に……

 2人の様子を覗いていた皆は安堵した。


 よくよく考えれば当たり前だった。

 こんな奴が殿下に勝つ筈が無いのであると皆は思った。



「 なんだ……良かった 」

 聞いてみれば、何処からか殿下の稲妻が飛んで来るかもと怯えていたと言う。


 部員達皆がウンウンと頷きながら、まだキョロキョロと辺りを見渡し怯えていた。

 以前……レティが31名の同期達と仲良くしてたら、アルベルトに稲妻を落とされまくっていた恐怖を皆は忘れてはいない。



「 お返事は直接本人にお願いしますわ 」

 私のお世話はここまでよ。

 後は本人達の問題だから。

 こうしてレティは無事任務を完了したのであった。



 翌日の放課後。

 3年B組にやって来た部長は、誰かにユリベラを呼び出して貰うと、赤い顔をして彼女に手紙を渡して直ぐに立ち去って行った。


 皆はヒューヒューと囃し立て、大騒ぎになった。


 煩いわね! ……と、皆を威嚇したユリベラは……

「 お断りだったらどうしましょう……と、涙目である 」


 いや……あの部長のデレた顔はオッケーだし……

 あの部長の顔で断るなんてあり得ないわよね~とレティはマリアンヌと失礼な事を言う。


「 まあ!? リティエラ様はともかく、マリアンヌ様には言われたくございませんわ 」

 ユリベラとマリアンヌが睨みあっている。



 ユリベラはマッチョが好きなんだと言う。

 昔はエドガー推しだったが……

 彼女が恋をしたのはエドガーよりも部長だった。


 確かに部長はエドガーよりもマッチョだけれども。

 カッコいいエドガーよりも部長が良いなんて……

 人の好みは分からないもんだわ。

 ……と、レティは部活で、あの部長を見る度に思っていたのだった。



 貴族の婚姻は家同士の繋がりを強く求める事から、政略結婚が多い。

 だけど……

 先にお付き合いする事となっても、本人同士のお付き合いよりも先に、先ずは家族に紹介して婚約をしてからお付き合いをする事になる。


 アルベルトとレティもそうであった様に。



「 オッケーだって…… 」

 手紙を読んだユリベラが赤い顔をして涙目になっている。


 キャアーっ!おめでとーっ!!

 3人で抱き合って喜んだ。


 クラスの皆もヒューヒューと拍手をして喜んだ。

 レティのクラスは皆仲良しだった。


 部長は、何時もレティと一緒にいるユリベラが気になっていたらしい。

 友達2人が婚約をしていて、少し寂しい思いをしていたユリベラにも恋の季節がやって来たのだった。



 3度の人生では、レティにはこんな話が出来る友達はいなかった。

 だからこそ、彼女は今を大切に生きているのである。



 20歳になれば……

 5度目の人生が始まってしまうかも知れないと言う恐怖と戦いながら。









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