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時間よ止まれ


時間の流れの表現をしたいと思い、場面が変わりまくって読みにくいかも知れませんが宜しくお願いします。


 



 レティは走っていた。

 豪華な真紅のドレスを身に纏い、頭にはティアラ。


 途中で走りにくいヒールを脱ぎ捨て、真紅のドレスの裾を掴んで走る。

 何度も何度も転びながらも懸命に走った。




 ***




 アルベルトは次の王女と踊り出す。

 彼女もまたオルレアン王女と同じで求婚をして来た。


 オルレアン王女と同じ質問をこの王女にもする。

 答はやはり同じ様な答だった。



「 貴女と踊った今宵のダンスは楽しい一時だった 」

「 素敵な思い出を作る事が出来て、嬉しく思います 」


 ダンスが終わると王女を送りながら、レティがいるであろう方向を見た。


 さっきはウィリアム王子と踊っていたが……

 王子の姿は見えるが、レティはいない。


 何処に行った?




 ***




 何で思い出さなかったんだろう。

 何で忘れてしまっていたのか……

 自分の身に起こる20歳の時にある出来事があまりにも悲劇的だったからなのか。


 ずっと心がざわついていたのに。

 ずっと警鐘が鳴らされていたのに……


 あまりにも幸せ過ぎて浮かれていた。



 今日だ!

 間違いなく今日だ!


 3度のどの人生でも小さな新聞の記事だった。

 新聞の記事には、宮殿で小さな爆発事故があったと言う事だけが書かれていたと言う記憶。


 帰宅した宰相である父が苦渋の顔で小さく呟くのを見た。

「 殿下と………………が怪我をした 」

 ……と………



 それは間違いなく建国祭の前日。

 翌日の建国祭後の舞踏会が中止になった事から考えたとしても。

 要人との舞踏会が行われていた時に宮殿が爆発をし、皇太子殿下が怪我をしたのだ。


 殿下だけでは無い。

 きっと大勢の人達が怪我をしたに違いない。

 もしかしたら亡くなった人も……


 侍女がメイドが女官が……

 護衛騎士が警備員がシェフが……

 今はこんなにも沢山の知り合いがいるのだ。


 回避しなきゃ皆が危ない。


 それに……

 アルが怪我をするのは………絶対に嫌だ!




 ***




 アルベルトは次の王女の手を取りホールの中央に行く。

 レティは?


 あっいた!

 真紅のドレスがウィリアム王子を挟んだテーブルの向こう側に見えた。

 まだ一緒にいるのかとそれはそれでイラッとする。


 他の王子達の姿も見える。

 彼女にダンスの申し込みをしているのだろうか。

 早く王女達とのダンスを終えて……レティの側に行きたい。



 王女の目を見つめながらマナー通りの言葉を交わす。

「 今宵一時を私とともに過ごして頂ける事を光栄に思います 」

「 アルベルト様……嬉しく存じます 」


 そしてアルベルトと王女は音楽に合わせて踊り始める。




 ***




 レティは皇太子宮の自分の部屋に駆け込み、弓矢を背負った。

 爆発させる犯人がいるかも知れない。

 今あるのはこの弓矢の武器だけ。

 いざとなれば矢で戦う!

 そう思いながら部屋を飛び出した。



 舞踏会が始まっているからか廊下には人がいない。

 でも……何故警備員もいないの?


 爆発は7時に起きたと新聞には書いてあった。

 それも2回起きたと。


 2回も爆発するなんて………大事故だ!

 身体が震える……



 ウィリアム王子に時間を聞いた時は6時半前だと言っていた。

 7時までは後どれくらいなの?


 急げ!

 急げ!


 新聞記事には何処で起きたと書いてあった?


 思い出せ!

 思い出せ!




 ***




 ダンスをしているこの王女も、求婚をして来たのでアルベルトやはり同じ質問をした。


 彼女も答は同じだった。

 同じ様に諭しながら、丁寧に拒絶する。

 ハッキリと言わなければ後々にややこしい事になるのはごめんだ。


 俺はレティしか要らないのだから。




 ***




 今宵は外国からの要人達との舞踏会。

 王太子や王子が怪我をすれば外交問題になり、王太子が亡くなりでもしたら……下手をすれば戦争になる事もあり得る。


 アルのドラゴン討伐があったから、3度の人生の建国祭の時よりも、来国してきている要人達が多いのは明らか。



 未来は変わっているのだからもしかしたら、何も起こらないかも知れない。


 だけど……

 私は……未来を知っている。

 3度もあった事故なのだ。


 探せ!

 探せ!


 何処だ

 何が爆発した?

 爆発する所は?


 思い出せ!

 思い出せ!


 時間が無い。

 爆発が起こってしまう。




 ***



 

「 思い出に残る楽しい一時を有り難う 」

「 素敵な思い出になりましたわ……もっと早くにお会い出来なかった事を残念に思います 」


 ダンスを終え、王女を送りながらレティを見る。

 テーブルの回りにいる人々の間をゴソゴソと動いている真紅のドレスが見える。


 ん?

 王子達とは踊らなかったのか……


 じゃあ……レディ、リティーシャになってドレスのリサーチをしているんだな。

 アルベルトはリティーシャは仕事熱心だとクスリと笑う。


 そして次の王女にダンスを申し込む。




 ***




 厨房か?

 レティは厨房に向かって走る。



 いや……この時間なら怪我をしたと言うアルが会場にいるのは確かだ。


 やはり会場か………

 あんなに大勢がいる場所で爆発なんか起きたら大惨事だ。


 レティは会場に戻る事にした。

 長いドレスが足枷になり、何度も何度も転ぶ。

 多分膝からは血が出てると思う。

 何度も同じ場所を打ち付けるからか膝に熱を持っているのが分かる。



 お願い!

 時間よ止まって!


 もうすぐ7時になってしまう。

 泣きそうになりながらレティは走る。




 ***




 次の王女は酷かった。

 話が通じないのである。


 自分の話を一方的にして、悲劇のヒロインになる。

 可愛らしさと、弱々しさをアピールし、相手に庇護欲を抱かせ様としている所は感心する。

 そこだけ長けていて、国民や税の話なんかには興味すら無い。


 アルベルトはある程度は人の心が読める。

 この王女は一番うんざりする女性だった。


 もう話すのも面倒になり、音楽が終わるやいなや元いた場所に連れていった。




 ***




 新聞には何て書いてあった?


 そうだ!

 後日の新聞に

『 爆発元はボイラー室だった 』

 確かそう書いてあった。


 ボイラー室。

 ボイラー室は何処だ?


 そうだ!

 以前、宮殿を迷った時にシエルさんに会った場所がボイラー室。


 確か……

 ここを真っ直ぐに……真っ直ぐ行った突き当たりを左。

 そしてその突き当たりの部屋が………ボイラー室だ!



 誰もいない廊下を曲がると………

 ボイラー室から誰かが出てきた。


「 貴女は誰!? 」


 あっ!?

 お互いにあっと言う顔をした。


 昼間に火傷で皇宮病院に来た侍女だ。

「 ここで何を? 」




 ***




 最後のダンスはイニエスタ王国のアリアドネ王女。


 えっ!?

 王女はテーブルを囲んだ人達の輪から現れた。

「 お待ちしている間に、他の王子達とも交流を図っておりましたのよ 」


 真紅のドレスはレティでは無かったのか?


 レティだと思っていた真紅のドレスは……この王女。

 じゃあ、レティは長い間何処に行っているのか?


 レティを探しに行こうとすると、イニエスタ王女が腕を取って来た。


「 ワタクシとは踊っては頂けませんの? 」

「 いや、少し待っててくれないか? 急用が出来た 」

「 先にワタクシと踊ってからにしてくれませんか? ずっと待っていたのですもの 」

「 直ぐに戻って来る 」

 行こうとするアルベルトの腕に絡み付きながら、行かせないと引っ張る王女。


「 今、ワタクシと踊って下さい 」

「 ………… 」

「 ………でないとワタクシ……ここで土下座をしますわ 」




 ***




 レティを見て侍女は驚いた。

「 あの医師は貴女だったのか…… 」


 彼女は……

 手を上げてパチンと指を鳴らした。

 ゴーっと言う音と共に赤い炎が飛んで来る。


「 キャアーっ!! 」 

 レティは地面に倒れ込む様に伏せて懸命に避けた。


「 炎の魔力使い! 」

 彼女はニヤリと笑った。


「 私に攻撃をするのは何故? 」

「 ………… 」


 問いには答えない彼女が、腕を顔の前にあげて指をパチンとならすと、炎が凄い勢いでレティ目掛けて飛んで来る。


 問答無用の攻撃だ。

 今度はさっきより大きい。

 駄目だ………避けきれない……



「 レティ! 危ない! 」


 声の主はレティを抱き寄せて彼女に覆い被さると……

 赤い炎に包まれた。










読んで頂き有り難うございます。

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