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4度めの人生は 皇太子殿下をお慕いするのを止めようと思います  作者: 桜井 更紗
第1章

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君が好き




嘘だろ?



ウォリウォール領地の館に着いたが

まだ夜明け前だったと言う事もあり

流石に訪問するわけにはいかないので

屋敷前の閉じられた門の近くで待機する事にした。



馬に水を飲まそうと

川まで行くと

この館の執事のセバスチャンに遭遇した。



彼とは面識があった。

ラウルが「爺」と呼んでいた。

大層驚いていたがクラウドが事情を説明した。




先に川に行くと

レティがいた。



何と、魚釣りをしていた。

公爵令嬢が1人で糸を垂らした釣竿を持って、ボンヤリ地面に座って居た。



公爵令嬢と言う肩書きとのあまりにものギャップに目眩がしそうだった。

自分が想像していた感動の再会の場面とはあまりにも掛け離れていた。




笑いが込み上げてきた。

ああ………レティだ。

この斜め上を行く規格外の少女がレティなのだ。



そして………

やはり怒鳴られた。

魚を逃がしたと………

下手くそだと………



もう、何もかもが可笑しくて

何もかもが愛しかった。





好きだ…………

ああ、俺はレティをこんなにも好きだ。




彼女を好きだとはっきりと意識したのは

食堂での事。



「 我々貴族は平民が納める税金で暮らしていけるのであって、 それを甘んじて受ける貴族は、そんな庶民の生活を守る為に存在してるものに過ぎないのですわ! 」




頭に雷が落ちた様な気がした。

これは、小さい頃から帝王学を学ぶ時に、何度も叩き込まれた国を治める者のあり方そのものだ。



それを14歳の少女が、堂々と声を張り上げ言ってのけたのだ。



これは衝撃だった。

その姿に、その声に、その顔に、その彼女の真摯な姿勢に

胸を撃ち抜かれた。




いや、もしかしたら最初に出会った時に

一目惚れをしていたのかも知れない。


その位、彼女との出会いはあまりにも衝撃的だったのだ。






そんな大好きなレティに会えて浮かれていたら



突然来たラウルと母君の様子に驚いた。

そしてレティが、母親にすがり付いてご免なさいと泣いているではないか………



ラウルに話を聞くと

ここに着いてからずっと何かに思い悩み、夜も寝られずに

食事も取れて無いと知らされた。



何があったんだろう?

さっきまでのレティは何時ものレティだった。


彼女を観察していると

朝食は食べた様だ。それもしっかりと。

安心した。

母君もラウルも安堵していた。



気が付くと、ソファーでウトウトし出した。

こんな所で公爵令嬢がウトウトするなんて事は有り得なかった。

本当に寝られなかったんだ。

胸が痛くなった。



母君が部屋へ行くように促したら

「 ……デンキャ、クラウドシャマ………シツレイシマス…… 」

……と………ふにゃふにゃと言っていた。



可愛らしい………

まだ、15歳の少女なんだ。




そんな事を考えていると

ラウルが険しい顔をして自分の部屋に来る様に言ってきた。



「 レティが悩んでる原因はお前じゃ無いのか? 」



わけが分からなかった。

原因が俺?


何もしてない筈だ………まだ



その時

ラウルにレティを好きかと聞かれた。



「 本気だ、俺はレティを好きだ 」



俺の本気度をみて

ラウルは妹を泣かすなよ、と言っただけだった。

ちょっと寂しそうだった。

安心しろ!俺は君の大事な妹を大切にするよ。




1度目の視察から帰って来てもレティは眠りから覚めていなかった。

もしかして皇子様のキスで目覚めるのか?

そうだ俺は正真正銘の皇子だ。


………とよこしまな考えで、こっそりとレティの部屋に行った。




寝ている彼女が苦しそうに魘されていた。


何をこんなにも悩んでいるのかと切なくなり

そっと彼女の額に掛かる髪に触れた。



すると

「 アル…ベルト……でんか 」

………と、うわ言の様な彼女の小さな声が聞こえた。



名前を呼んでくれたのが嬉しかったが

それより………俺の夢をみて苦しんでいるのか?


ショックだった………

暫く彼女を見つめていた………



「 レティ………良い夢を 」

………と彼女の手を握り、半ば放心気味に部屋を後にした。





2日目の朝もまだ目を覚まさず

夕方に、2度目の視察から帰って来たら

レティが目を覚ましたと侍女が叫んでいた。


嬉しくなって彼女の部屋へむかう。

やはりレティは何か悩んでいる様子だった。

何かに怯えている様にもみえた。



君を悩ませているのは何?




そして

どんなレティでも可愛いと言ったら

うるさい!早く出ていけと怒鳴られた。



俺達何か悪い事言った?



だけど、それから

湯浴みを済ませ可愛いドレスを着て

ツンツンしながら、夕食の席に付いたのには笑ってしまった。


夕食も沢山食べて、彼女がかなり元気そうだったので安堵した。








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