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彼女の威力

 



 アルベルトは公務に、レティは虎の穴に通い詰めて各々が忙しくしていた。



 レティが皇宮に登城したら、門番から直ぐにアルベルトに知らせが行く様になっている。


 この日は朝からレティが虎の穴に来ている。

 アルベルトも魔力の事をルーピンに聞きたいので、それも兼ねてレティと一緒に昼食を取ろうと虎の穴にやって来た。



 解体したドラゴンを乗せた馬車は、次の日の夜には皇宮に到着した。

 薬師達はいきなりそれが届いたので大慌てだった。

 虎の穴に届いたのが夜だった為に薬師達は全員ルーピンに呼び出され、レティからの添えられた手紙に嬉々として徹夜でその処理をしたのだった。



 薬師にとって、これ以上の宝は無い。

 彼等は終始時間が経つのも忘れて研究に没頭している。


 勿論、レティも例外ではない。

 流石に夜は帰されてはいるが、皆と研究出来る事に喜びを感じていた。


 1度目の人生は商人、2度目の人生は医師、3度目の人生では騎士である彼女は、4度目の人生である今はこのどれもが当てはまる。


 しかし……

 もしも5度目の人生があり振り返る事があるならば、4度目の人生は薬師だったと答えるだろう。




 楽しそうだ。


 薬学研究室を覗けば、大きな白いローブ達の中に、白いローブを着た小さなレティが目をキラキラさせて懸命に作業をしている。

 可愛い……

 アルベルトは何時なんどきでもレティが好きである。


 邪魔をしちゃ悪いな。


 黒のローブを着たアルベルトは、レティに声を掛けずに踵を返して魔法の部屋に入って行った。



 ルーピンから魔力の話を聞く。

 魔力とは身体の中に魔力の袋があり、そこに溜まっている様な物で使うと勿論無くなる。


 袋の中の魔力が無いにも関わらず、最大限の魔力を使うと命を削る行為になるかも知れないと言う。

 今回の様に……


 ただし、どの魔力使いも普通はあんなになるまで使うことは無い。

 ドラゴンと言う難攻不落な敵がいたから起きた事であるのだから。

 アルベルトの例は今までに無い事なので資料として残したいと言うルーピンに、更にドラゴン討伐時の話を詳しく話す事になった。



「 それで……リティエラ様とキスをしながら魔力を放ったと…… 」

「 ああ…… 」

「 皆が見てる中で? 」

「 ?……俺達がキスをする事に何か問題があるのか? 」


 呆れる様に言うルーピンにアルベルトはひょうひょうとして全く悪びれない。


 ため息を付きながらルーピンは話を続ける。

「 では、本題に入ります。殿下の命が助かったのはリティエラ様とのキスのせいかも知れません 」


「 何だって? 」


 ルーピンは言う。

 レティとのキスで身体の中に命の炎が新たに溜まったのだと。


 普通ならあんな魔力切れの中で、更にドラゴンの首を切れる程の魔力は出せない。

 そしてあの日は朝食を食べていなかった事で余計に命の危険があった。

 本来ならば袋の中の魔力が無くなったとしても、食べた物がエネルギーになるからである。


 あの時、命を削る程の魔力を出したのだから、レティとのキスで溜まっていた炎がなければ、死んでいたか……そのまま植物状態になっていた可能性があるかも知れないと言う。


 気を失っただけで済んだのはキスがあったからだと。



「 成る程……あの時レティに無性にキスをしたかったのは、命の炎を欲していたからか…… 」


 いや……

 殿下は何時もリティエラ様を欲しているでしょうが!

 ……と、思ったルーピンだった。




「 殿下、今日はリティエラ様が来られてますよね? この際に実験させて貰いたいのですが…… 」


 そうして……

 レティが呼ばれて実験をする事になった。



「 リティエラ様! 皇太子殿下とルーピン所長がお呼びです 」

「 何? 今良いところなのに…… 」


 虎の穴の案内のお姉さんに呼び出されて、ドラゴンの鱗の磨り潰しを中断させられたレティは不機嫌だ。


 ルーピンだけなら無視をするが、皇太子殿下と言われて無視をかましたら、呼びに来たお姉さんにも迷惑がかかる。

 皇族の命令は絶対なのであるから。



 周りの薬師達は、そんなレティに目をくれずにドラゴンの研究に没頭していた。

 虎の穴の薬学研究員達は研究が3度の飯より好きな人達の集まりなのだ。


「 鱗ちゃん……また後でね 」

 後ろ髪を引かれる思いで薬学研究室を後にした。




 魔法の部屋。

窓の外からは見ていたが、この部屋の中に入るのは初めてだ。

 円形型のだだっ広い部屋の真ん中の飾り台の上に、大きな魔石が置いてあるだけの部屋。



 その置いてある魔石の前にアルベルトとルーピンがいた。


「 やあ、レティ 」

「 ご機嫌よう殿下 」

 スカートの裾を持ち膝を折りながら挨拶をするレティを抱き寄せ、頬にキスをする。


 ルーピン所長の前で何をするのかと睨むレティに、挨拶のキスだよと言うアルベルトはやけにテンションが高い。



 何だこのアルのテンションは?

 それに窓の外には沢山の人がいる……

 あら? クラウド様まで……



 皇太子殿下がドラゴンを倒した時の魔力の再現をするとの話が、秘密裏に皇宮に伝わった。


 すると、クラウドだけでなく……

 何と、皇帝陛下までもがやって来たものだから虎の穴のスタッフ達は慌てふためいた。


「 よい、そのままで構わぬ 」


 勿論ルーカス宰相を初め、各大臣達もズラリと魔法の部屋の窓の前に並んだ。



 中にいるルーピン、アルベルトとレティの3人は皇帝陛下達がいる事には気付いてはいない。

 魔法の部屋は強固に作られており、防音設備が行き届いている部屋であった。




 ルーピンから簡単に今からする事を説明される。

 殿下の魔力の調節。

 要は、ドラゴンを倒した時の魔力を今から再現するのだとレティに言う。



「 それなら協力を惜しまないわ 」



 レティはこの協力を直ぐに後悔する羽目になるのであった。








読んで頂き有り難うございます。

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