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ディオール家の人々─後編

 



 レオナルド・ラ・ディオールはディオール家の嫡男である。

 彼には6歳上の姉がいるが他国へ行ったっきり帰って来てはいない。


 父イザークは外相で母はイザークが外交官時代に、他国で恋に落ちた他国の令嬢である。



 ディオール家の狙いは公爵令嬢であるレティだった。


 昔、カルロス・ラ・マイセン辺境伯とデニス・ラ・ドゥルグとルーカス・ラ・ウォリウォールの3人は、学園時代にルーカスの妻であるローズを取り合った。


 だから……

 まさかルーカスに敗れたデニスがルーカスの娘を狙う事は無いだろうと考えていた。


 何故ルーカスがそんなにも娘を隠しているのかが、同じ娘を持つ親として不思議だったが、レティを見た瞬間にイザークは成る程と思った。


 うちの娘のカトレアも自慢の娘だが……

 あれはそんじょそこらの娘では無い。


 それにレオナルドの為にも隠してくれてるのは有難いと思っていたのだった。


 油断していた。

 まさか皇太子が彼女に目を付けていたとは……


 皇族は近年は他国王女を迎えている。

 今回も、皇太子の婚姻相手は王女だとして外相デニスは水面下で話を進めていたのである。


 全く口惜しい……



 それなのに……

 宮中晩餐会で聞いたロバート騎士団長(グレイの父)の言葉にイザークは驚愕した。


 デニスとルーカスがグレイとリティエラ嬢と結婚させようとしていただと?


 グレイは我が娘と婚約寸前までいった仲なのに……

 ルーカスは何故レオナルドでは駄目だったのか?


 確かにグレイは良い人間で勿体ない事をしたと思う。

 グレイをフッたカトレア嬢は今でも勘当状態である。





 ***




 カトレア・ラ・ディオール侯爵令嬢。

 レオナルドの6歳年上の姉だ。

 勝ち気で高飛車で我が儘な性格は、高位貴族の令嬢そのものと言えるだろう。


 公爵令嬢であるレティとは8歳の年の差がある令嬢である。


 4年生になった2人は生徒会を任される事になる。

 今もそうだが、選挙などは無いため先生に依頼された生徒が生徒会の役員をする。


 生徒会会長のグレイと副会長のカトレア。

 美男美女の2人は学園の生徒達の注目の的だった。


 生徒会の仕事を一緒にする内に、付き合っている訳でも無いのに学園公認のカップルになっていた。

 たまにカトレア嬢が騎士クラブが終わるのを待っていたからか……



 卒業プロムでカトレアはグレイに告白をする。

 その時はグレイに断られたが彼女は諦めない。

 プライドの高い彼女だったが、思いどおりにならないグレイへの執着がどんどん増していく。


 外交官になるべくして文官養成所に入所した彼女は、騎士養成所に入所したグレイを口説きに口説いた。


 待ち伏せしたり……待ち伏せしたり……待ち伏せしたり……

 断っても断っても諦めない彼女に根負けをしたグレイは、

 彼女の申し出に返事をして、とうとう2人はお付き合いをする事に。


 しかし……

 剣一筋に己を高めたい時期に彼女との付き合いは面倒だった。

 それでも、結婚前提とした釣り合う身分同士でもある2人のお付き合いは、両親を含め周りを喜ばせた。



 文官養成所を修了した彼女は外交官になり外国へ研修に行く。

 彼女の帰国を待って婚約をする予定であり、その前に2人でこの領地にいる祖父であるリンデンに挨拶も済ませていた。


 しかし……

 彼女は帰国する事はなかった。

 たった一通の書簡をグレイに出して、彼女は外国の同じ外交官の貴族と大恋愛をしてそのまま結婚をした。


 手紙にはこう書かれてあった。

 ─愛の言葉の1つも囁いてくれない貴方より、私を本気で愛してくれる人を見つけました。

 彼は沢山の愛を与えてくれます。

 幸せになります。

 さようなら─



 グレイは突然フラれ、その時から女性不振になり現在に至る。



 殿下とリティエラ様は恋愛中である。

 2人を見ていると、殿下は常に彼女を熱くみつめ、甘く蕩けそうな顔で彼女に愛の言葉を囁いているのだ。


 それを目の当たりにしたら、確かに自分はカトレアにはそんな熱い想いを抱いた事は無い。

 結局は彼女を愛してはいなかったのだと思った。




 ***




 ディオール領地に行くには真っ直ぐだとグレイがラウルに行ったのは、1度ここにカトレアと2人で来た事があるから。


 カトレアの父イザークからは、彼女の勝手な行いを謝罪され、父母は一時期は激怒したが結果的には婚約をする前で良かったと言う話に落ち着く。



 自分が至らなかったんだと心の整理が付いた頃に、叔父である国防相のデニス(エドガーの父)と宰相ルーカスの間で、グレイとレティとの結婚話が水面下で進められていた事はこの時グレイは知らない。


 しかし……

 その話は、レティが学園の1年生の長期休暇で領地に行った時に、彼女を追い掛けて行ったアルベルトの想いをラウルから聞かされたルーカスによって、立ち消えになった話だったのである。




「 グレイ様とレオナルドのお姉様は一緒に生徒会をなさってたのよね? 」


 酒を吹き出したグレイに何かあると目をギラギラさせて見つめてくるレティ。


 吹き出した酒は目の前に座っているサンデイが諸にかぶった。

「 は……班長! 何なんですかーっ! 」

「 ス………スマン…… 」

 ……と、慌てるグレイにゲラゲラと笑う声や嘆く声で大騒ぎとなった。


 勿論、ディオール邸の家人達はカトレアとグレイの結末を知っているのである。


 騎士団の第1部隊に所属しているグレイが、殿下の護衛で来ましたと小さな声でリンデンに伝えると、リンデンは申し訳なさそうな顔をした。



 レティの爆弾はディオール家の家人達を震え上がらせた。


「 慌てる所が怪しいですわね 」


 もう止めてくれーっ!

 止めてあげてーっ!

 グレイ様がお辛そうですーっ。

 ……と、家人達は心の中で叫ぶ。



 しかし、探偵になった様な悪い顔をしてグレイに追及するのを止めないレティ。

 ソファーから乗り出して真ん丸い目で真っ直ぐに見つめてくる。


 可愛い……

 不覚にもそう思ってしまうあたりがやはりカトレアとは違う。

 彼女に対してはそんな気持ちになった事は無い。


 だけど……

 今の片想いの相手に昔の女の話はしたくない。

 それもかなり痛い話であるのだから。

 殿下も彼女の横でこっちを凝視している。



「 グレイ班長とカトレア嬢は学園の公認のカップルでしたよ 」

 サンデイがツマミをかじりながら「 なあ?」と、ジャクソンに同意を求める。


 グレイが4年生の時、サンデイとジャクソンは2年生であった。


「 何時もカトレア嬢が騎士クラブの終わりを待って、2人で仲良く帰宅してましたよね! 班長! 」

 ジャクソンが爆弾をグレイに投げた。


 こいつ……何を言う!?

 学園の時はまだ付き合ってなんか無いぞ!


 屋敷中の人達はハラハラしながらグレイに注目をしていた。


「 へぇ……お付き合いをされてたんだぁ~ 」

「 いや……まだその時はしてはいない 」

 レティの可愛い顔をしての追及が嬉しいやら辛いやら……

 生汗がダラダラと流れる。

 こんな拷問みたいな事は初めてである。



 そこに助け船が……

「 姉貴の話なんかどうでも良くない? 」

 レオナルドが面白くも何とも無いとひょうひょうとして言う。

 でかしたぞ!レオナルド!グレイは小さく拳を握りしめた。


「 あら!? 素敵な恋物語をお聞きしたいわ! 」

 レティは引き下がらない。

 いや、貴方達の足元にも及びませんから。

 殿下も何とか言って下さいよ~っとアルベルトを見るグレイ。

 しかしアルベルトは何を考えているのか、やはりグレイを凝視したままである。



「 出会いは? 」

「 生徒会室で…… 」

 あら! あの部屋で出会ったのねとレティの目がギラ付く。


「 告白はどちらから? 」

「 彼女……から……」

「 初恋ですか? 」


 だから俺は何で尋問されているのか?

 誰か……

 この地獄から生還させてくれーーっ!!

 グレイは気絶しそうだった。


 その時……

「 リンデン爺! レティの初恋の相手が誰だか知ってますか? 」

 普段からKYなエドガーがリンデン侯爵に向かって話し出した。


「 誰なんじゃ? 」

 皆の視線が一斉にエドガーに集まる。

 グレイは話の矛先が変わってホーッと長い息を吐く。


 エドガーナイス!

 流石我が従兄弟だ!

 後から頭を撫でてやろう……


 グレイは少し傷を追ったが無事に生還した。



「 それは……それはレオナルド君でーす 」

「 何!? 本当か? 」

 酔っ払いエドガーのレオナルド発言にリンデンが喜ぶ。



「 あら! 私の初恋はレオナルドじゃ無いわよ 」



 レティはまた爆弾発言をした。









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