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閑話─皇子は妹に恋をする


本日は2話更新していますので

ここから入られた方は、もう1話前もお読み下さい。


 




 俺が、ローランド国への留学から帰国して、妹が学園への入学式を終えた頃に妹は変わった。


 俺が学園に入学した事で妹と会う事が極端に減り、その後の俺の留学で約1年近く離れていた事もあり、年頃の娘の多少の変わり様は仕方ないとするのだが……


 明らかに入学式の朝の妹と帰宅した妹が全く違うのである。

 まるで別人かと思う程に変わっていたのだ。



 入学式から帰宅した妹は雰囲気がぐっと大人っぽくなり、ずっと何か考え込んでいた。

 親父もお袋も入学式で何があったのかと心配する程で、妹に聞いても「何でも無いわ」と首を横に振るだけであった。


 結局、領地で自由に暮らしていたレティが新しい環境に驚いたのだろうと言う事に無理やり結論付けたのだが………

 やはり、あの変わり様は今でも頭を捻る位である。



 そんな家族の心配を余所に、妹は何と庶民棟のクラブである料理クラブに入部して来ていた。

 まあ、元々食いしん坊な妹だからそれも有りで、平民達と距離が何気に近いのもウォリウォール家ではそんなに驚く事では無かった。


 領地では普通に領地民である平民達と飲んだり食べたりして交流を図り、皇都でも平民達のいる飲み屋に俺も親父も普通に出入りしていた。

 情報収集や平民達の暮らしぶりや、皇族に対する思いを量る為であるのは否めない。



 親父から、レティのクラブのある日は防犯上必ず一緒に帰る事を約束させられ、そして妙な男が大事な娘にちょっかいをかけない様に見張れと言われたのである。


 まあ、人慣れ、都会慣れのしてない妹だから心配し過ぎになるのも仕方無い。

 ましてや我が妹ながらその容貌はかなり美しいのだから……




 しかし……

 皇子が妹に興味を持ってしまったのだ。


 始まりはアルがうちの家に来た日である。

 何時も何事にも慎重なアルがいきなり俺ん家に来ると言った事が不思議だったのだが、きっとあれは神様のお導きがあったとしか思えないのだ。

 神なんかこれっぽっちも信じてはいないが……



 俺の部屋に妹が唐揚げを持って入ってきた日。

 俺は人が恋に落ちる瞬間を初めて見た気がした。


 俺の幼馴染みであるこの国の皇子は俺の妹に恋をしたのである。



 料理クラブのある日は、妹が料理クラブの部屋に入ると窓からこっそりと覗き、そして幸せそうにベンチに座って本を読みながら妹が出てくるのを待っているのである。



 そう、彼は料理クラブに行く妹の後ろ姿を見ながら並木道を歩いているのだ。

 何故声を掛けずに妹の後ろを歩いているのかは謎だが………


 クラブが終わるまでの1時間から2時間近く、暑い日も寒い日も、雨の降る日も風の吹く日もベンチに座り妹を健気に待っているのである。


 だからあのベンチは皇子様のベンチと生徒達から呼ばれ、皇子様の公爵令嬢への究極の愛として語られていたのだった。


 この、事実を知らないのは妹だけである。





 アルは兎に角モテる。

 まあ、この様相で皇子なのだから令嬢達がほってはおかないのは仕方無い。


 なので、何処へ行っても女達が寄ってきた。

 隣国に留学中では皇子だと言う事を隠していても女達は寄って来ていたのである。


 そしてアルは女達には兎に角スマートで何時も彼女達に優しく接していた。

 皇子様スマイルを崩さないし、崩せない立場であるから仕方が無いと言えば仕方が無いのだろうが……

 あの化粧バリバリの香水がプンプン匂う女達にでも、笑顔を絶やす事も無く優しく平等に接していたのである。




 そんな皇子が妹を見る時だけは別の顔になる。

 妹を見る時は蕩けそうな程の甘い顔をするのである。


 もう、言葉使いまでが甘い……

 レティの前では自分呼びを『俺』から『僕』に変わっている事にアルは気付いているのだろうか?

 初めて『僕』呼びを聞いた時には、エドガーやレオナルドとひっくり返りそうになった。



 俺の妹は将来は皇太子妃になる。

 そして俺は皇太子の義理兄になる。

 うん……悪くない。








 




 


読んで頂き有り有り難うございます。

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