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約束

 


「 ドラゴンの血の……中和剤の…… 」


 レティが医師会に提案した薬学研究員との情報交換会が、虎の穴で開かれていた。


 虎の穴の薬学研究員達が医師達にドラゴンの血の説明をする。

 そこには、虎の穴の所長であるルーピンに文部相、そして皇太子殿下までもが同席した。

 文部相の秘書や、クラウドも来ていた。



 マウスによる実験はかなり進み、ドラゴンの血は中和剤で100倍に薄めた血液を注入しても、小さなマウスが荒ぶるには十分な効き目であった。


 前回の実験のマウスは身体が一回りでかくなり、自分をドラゴンだと思い込んでいる様で、風格を醸し出し100倍に薄めたマウスを脅していた。

 しかし100倍に薄めたマウスも鼻息が荒く、前回のマウスに蹴りを入れ様としていた。

 勿論、柵で分けられている為に戦えないのだが……

 戦わせてみたいと言う欲が皆から出ていた。


 いや、そこでは無い。

 ドラゴンの血にはそれだけのパワーがあると言うことを証明出来たが、人間が使用するにはまだまだであった。



「 このドラゴンの血は何処から入手した? 」

 皇太子殿下の問いに、研究員達が一斉にレティを見た。


 み……みんな……そりゃあ私が持ち込んだんだけど……ちょっと冷たくない?


「 リティエラ嬢……後から事情聴取だ! 」

 皇太子殿下がレティを訝しげに見る。


 ドラゴンの血の研究は医師達からも大いに関心が持たれ、知恵を出し合い研究をしていく事になった。


 虎の穴を管轄する文部相からは皇帝陛下や他の大臣達に報告をし、研究への助成金を出すとまで断言した。


 オオゴトになってしまった……


 レティからドラゴンの血の話を聞いた皇宮病院の委員長が、事の重大さを感じて文部相に報告をしたのが事の発端だった。




 皇太子殿下に呼び出しを受けたレティが応接室に入る。

 既にソファーに長い足を組んで座っていた皇太子殿下は、レティに座る様にと顎をクイッと上げた。


 これは……かなり怒ってるわね。

 レティはソファーにこっそりと腰を沈めた。


「 ……で? リティエラ嬢はドラゴンの血なんかを何処から入手したのかな? 」

「 えっと……サハルーン帝国から…… 」

「 どうやって? 」

「 えっと……ジャック・ハルビンが…… 」

 皇太子殿下の顔色が変わる。


「 その、ジャック・ハルビンとは何処で会った? 」

「 お店で 」

「 何処の? 」

「 新しくお店がオープンして……お祝いに集まった時に、ジャック・ハルビンが来ていて……彼は貿易の仕事をしているらしいの 」

 自分の店とは言ってないが、嘘は言ってない。


「 君がドラゴンの血を欲しいって言ったの? 」

 レティは、ローランド国の王立図書館でドラゴンの血は万能薬だと知り、貿易の仕事をしているジャック・ハルビンに手に入れたいと頼んだのだと説明した。


「 それでね、サハルーン帝国ではドラゴンの血からポーションと言う凄い回復薬を作ったんだって 」

 レティが興奮気味に言う。



「 レティ! 事の重大さが分からないのか? 」

 ドラゴンの血なんて代物は父上にまで報告をしなきゃならない程の事だとアルベルトは言う。

 実際に報告され、慌てて大臣が同席したのだった。


 そして、当然どの様にして入手したのかの話になる。


「 君はジャック・ハルビンとの関係を上手く説明出来るのか? そして、ジャック・ハルビンも調べ上げられる事になるんだぞ!」


「 ごめんなさい 」

「 俺も、何故君が入手出来たのかを父上や宰相に報告しなければならない 」


 大変だわ……

 ジャック・ハルビンまで調べられたらどうしょう。

 彼が捕まったら、船で私に何を渡したのかが分からないままになるわ……


 レティは耳や尻尾が下げられ眉毛も下げて、叱られた子犬の様にシュンと悄気返っていた。




 アルベルトとレティは、舞踏会で喧嘩をしてからギクシャクしていた。

 ラウルから喧嘩の理由を聞かれたが……

 嫉妬で誰と踊るか踊らないのかのただの痴話喧嘩の理由なんて言えないのである。


「 早く仲直りをしろ! お前らのイチャコラも鬱陶しいが、そんな状態は余計に鬱陶しい! 学園の皆も心配してるぞ!」

 そう……

 学園は小さな国である。

 皇子様と婚約者の不仲は生徒達も暗くなるのであった。


 そんな事を言われても……

 殿下の勝手な言い分を聞くわけにはいかないわ。

 ジジイとも踊れないなんて横暴もいいとこよ!


 アルベルトの視線を感じて……鼻息も荒くフンっと顔を背けるレティなのであった。

 皇太子殿下にこんな事をするのはレティだけである。




 虎の穴でしこたまアルベルトに叱られたレティは、『 ほうれんそう 』を約束させられた。


 本当に……

 ルーカスが言っていた通りだ。

 彼女は何時でも事後報告なのである。

 いや、事後報告するならまだ言い方だろう……ほっておいたら言わない事もあるんだろうなと考える。

 俺の婚約者は一筋縄ではいかない……



『 報告、連絡、相談 』

 レティにはこれを義務付けた。

 特にジャック・ハルビンと会うときはアルベルトも同行しなければ会ってはならないときつく言い渡した。


「 これは皇太子命令だからね 」

 守れないんなら、皇太子宮に閉じ込めるからと本気で言った。


「 メンドクサイ 」

 レティは不服そうな顔をして小さな声で呟く。

「 何!? 」

「 何でもありませんわ……ワタクシ達は喧嘩中ですわ、この件以外では話し掛けないで頂きたいですわ 」

 フン! レティはツーンとして横を向いた。



 さあ、この可愛い婚約者をどうしょうか。

 何時までもこのままではいたくないしな……


「 レティ……おいで……仲直りしよう 」

「 じゃあ、ジジイと踊っても良い? 」(←いつの間にかジジイと踊るかどうかの話になっている)


 レティはアルベルトの座っているソファーの空いてるスペースまで行きちょこんと座った。


「 ジジイも駄目! これは譲れない 」

 どんだけジジイと踊りたいねん?


「 じゃあ、舞踏会で私は何をすれば良いの? 参加する意味が無いじゃない 」

「 僕と踊れば良い 」

「 殿下が、ボンキュッボンのスタイル抜群のもの凄い美女と踊ってる時は、私は何をすれば良いの? 」


 ボンキュッボンって何だよ?

 アルベルトはクスっと笑う。

 しかしその笑いには嬉しさが入っていた。


「 踊らないから……これからはレティ以外の女性(ひと)とは踊らない! 公務でも父上か外相に踊って貰う 」



 嘘つき……

 王女が来たらまた踊るくせに……



 レティは頭を横に振る。

「 公務はちゃんとしなきゃ駄目よ、それが殿下の大切な仕事なんだから 」


 別に誰と踊ったって構わないのに……

 だってダンスって、見ていても踊っていてもドレスの創作意欲が湧くんだから! (←どこまでも商売人)

 折角の舞踏会は楽しく踊らなくっちゃ!


 ……と、思うレティとは裏腹に、レティが少しやきもちを妬いてくれたんだと勘違いして嬉しくなるアルベルトだった。




「 レティ、仲直りのキスは? 」

 レティは辺りをキョロキョロと見渡し、ノートで顔を隠しアルベルトの頬にチュッとキスをした。


 仲直りをする時は『頬っぺにチュー』が2人のルール。


 アルベルトは堪らなくなって、レティの頬に手を当て口付けの体勢にはいる。

「 キャーッ!!アル止めて!ここは虎の穴よ! 」

 レティはアルベルトを突き飛ばし、応接室から出ていった。


 虎の穴の部屋は各部屋ガラス張りだった。

 丸見えではあったが、前ではクラウドが護衛として立っていた。


 レティに突き飛ばされ、アルベルトはソファーからずり落ちてしまった。

 皇太子殿下にこんな事をするのはレティだけである。


 レティがドアから勢いよく飛び出して行ったので、慌てて応接室の中を見ると、ソファーからずり落ちているアルベルトが居て、クラウドは笑いが止まらなかった。

 何があったか想像出来た。



 殿下………ご自重を……




 明日からは

 2人のイチャラブが学園で見れる事になるだろう……








 


読んで頂き有り難うございます。

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