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閑話─父は憂う

 


 だから嫌だったのだ。


 ルーカスがレティを隠し続けたのは、皇族との婚姻を避ける為でもあった。

 

 宰相の娘だと言うだけで攻撃の対象になるのに、皇子の婚約者候補になるなら、レティにどんな嫉妬や憎悪が降りかかって来てもおかしく無いのである。

 ラウルが皇子の遊び相手となった事でも、心ない貴族達からやっかみや憎悪を向けられていた程だ。



 ルーカスは国防相のデニス(エドガーの父親)とずっとレティの婚姻の話をして来た。

 ルーカスの要望で、デニスの甥で騎士団団長の息子……グレイとレティを婚約をさせるつもりでいたのであった。



 シルフィード帝国では16歳が成人である。

 これはまだ学園が設立されていない時に定められた制度である為、学生ではあるが社交界にデビューする事は避けられない事であった。

 いくらレティを隠したいと思っても、16歳になれば否応なしに社交界に出る事になる。


 グレイは24歳、レティとは8歳違いである。

 あの好奇心旺盛で猪突猛進のお転婆レティには、この位の大人の男が丁度良いと思いずっと目を付けていたのだった。


 それに、グレイは容姿端麗ながらも女性の噂も聞かない剣一筋の実直な男で、公爵家の娘を嫁がせるには身分的にも申し分の無い男であったのだから………


 皇室から打診がある前に婚約を成立させようと考えていた。



 まさか殿下ご自身がレティを見初めるとは……


 殿下がレティを見初めたのなら、これはもう他の婚姻話は退けるしかないのである。



 だから……

 殿下と王女との婚姻が決まった時には内心ホッとしたのも事実であった。

 皇族と王族の婚姻ならば、雲の上の出来事として誰もが受け入れる事が出来るからである。



 そして……

 今回の魔力使いの事件。

 魔力使いがいかに危険な因子を持ってるのかを浮き彫りにした事件でもある。


 今までも魔力使いの暴走した事故は多々あったが、帝国に登録して監視されてる魔力使いが、危険を回避する為に使った魔力では無く、敵意を持って攻撃したのは初めての事であった。


 レティは否定したが……

 殿下と護衛騎士達の話からしても、明らかにレティ1人を狙って攻撃した事は明らかである。


 事件を起こした時に、直ちに魔力使いを処刑をするべきだった。

 あの敵意は準皇族に向けられたものであり、それは皇族への謀反として、謀反を起こした者の処罰を世間に知らしめなければならなかったのである。



 しかし

 レティには驚いた。

 風の魔力使いとの面会での事だ。


 ルーカスは、面会したいとのレティの要請を受けて、あの時こっそり聞いていたのであった。

 囚人の監視は宰相の管轄なのである。


 殿下の意向で……いや、レティの懇願があっての事だろうが……風の魔力使いの罪状は随分軽いものとなった。


 しかし……

 ルーカスは風の魔力使いを人知れず暗殺する方向で動いていた。

 危険分子は後からどんな政治勢力に利用されるか分からないからである。


 しかし、レティは自分できっちりと片を付けたのだ。

 勿論、風の魔力使いはこれからも監視していかなければならない対象だが、それでも彼女がレティの指示通りに動いたと言う事は、レティは見事に彼女の気を削ぎ自分の懐へ入れたのだ。

 例えそれが一時的な物であったとしても……


 それが吉と出るか凶と出るか……



 これからも、大事な娘がこんな危険な目に合わされるかも知れないと言う恐怖。

 母親やラウルはどれだけのショックを受けた事か……


 しかし……

 二人を乗せた船はもう動き出しているのである。


 殿下のレティへの想いの強さと

 レティの引きの強さに掛けるしかない……


 母親に刺繍を伝授され、あたふたしている小さな娘を見ながら………

 ルーカスの憂いは尽きることが無いのであった。




 


本日2話更新予定です。


読んで頂き有り難うございます。

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