皇太子殿下の想い人
皇立ジラルド学園は長期休暇に入った。
庶民棟で寮生活をしてる生徒達は実家へ
お貴族様達は領地や避暑地へと向い、各々が夏の長期休暇を楽しんで来る様だ。
アルベルト皇子は
立太子の礼で正式に皇太子となってからは
まだ学生であるにも関わらず、公務の仕事も少しずつ増えて来ていた。
この日も、クラウドと執務室で仕事をしていた。
皇后の使いが来て
今夜の皇后陛下主催の夕食会にアルベルトも出る様に言われた。
「またか………」
立太子の礼の時の舞踏会では
接待もかねて他国の王女や貴族令嬢達と連日ダンスの相手をさせられていた。
シルフィード国の皇太子殿下は
優しく爽やかな紳士と言うだけでなく、大変見目麗しい美丈夫だと騒がれていた。
そんな皇太子への結婚の打診が殺到していた。
我が国だけでなく
他国の王女や他国の高貴族令嬢達からの打診が多く来ていた。
今夜の夕食会は自国の高位貴族の令嬢達が招かれていた。
皇后主催なので断る事は出来ないのだが
アルベルトは何とかして行かずにおける理由は無いものかと思案していた。
クラウドが参加する令嬢の名前を読み上げる。
………別にどうでもいいのに………
次々に読み上げられて
「そして……… リティエラ・ラ・ウォリウォール 公爵令嬢の以上です」
クラウドはわざと最後にレティの名を読み上げた。
訝しげに興味がないと聞き流していた殿下が固まった。
「何だって!? リティエラ・ラ・ウォリウォール だって!?」
クラウドから慌ててリストを取り上げ確認した。
とたんに殿下の顔が破顔した。
クラウドがニヤリと笑った。
リティエラ嬢で決まりだな………
「殿下、誰か気になるご令嬢でもおられましたか?」
「いや………夕食会は何時からだ?」
殿下はソワソワしだした。
彼女が来る
彼女が皇宮に来る
彼女が僕に会いに来る
ああ………彼女に会えるんだ…………
不思議な事に
宰相のご令嬢なのに
リティエラ嬢の参加は初めてだった。
殿下の思い人はどんなご令嬢なんだろうか?
会ってみたい。
クラウドもソワソワした。




