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婚約式の前日



毎年、建国祭が近付くとシルフィード帝国は華やかになる。

帝国旗があちこちに掲げられ、街は花で色とりどりに飾られた。


今年は、皇太子殿下と公爵令嬢の婚約式が執り行われると言うおめでたい事もあり、3日間の休みだけではなく、皇宮から振る舞い酒がなされるというお触れもあり、街は一段と活気付いていたのだった。



皇宮は各国からの招待客が続々と到着し、慌ただしくなった。

公務で忙しくなったアルベルトは学園に来なくなり、学園は火が消えた様に寂しくなっていた。


皇子様は学園の最高学年の4年生。

来年度には居なくなるのかと……

学園の皆が改めて寂しく感じてしまう事になったのであった。



「 お前……婚約者なのに、やらなきゃならない事とか無いのか? 」

「 うん……現地集合だって…… 」

「 遠足じゃ無いんだから…… 」

ラウル達は笑った。


基本は、婚約者と言う立場はまだ皇族では無い為、公務は出来ない事になっている事から、レティが何かをしなきゃならない事は無いのである。


招待客も、立太子の礼の時は共通語の出来るラウル達3人も、通訳に駆り出されたりする程に来国者が多かった。

皇太子となった美丈夫だと評判であるアルベルトを、各国の使者達が見る為に訪れていたのであった。



帝国は建国祭に向けて準備を進めるが、学園は来月にある学園祭に向けて準備をしなければならないので、レティ達は生徒会室に集まる機会が増えていた。


しかし……

偉そうな俺様会長皇子様の席には、主が居ない……

勿論レティも寂しく感じていた。





********





建国祭の休日になる3日間は振る舞い酒が振る舞われ、それを目当てに各地方から続々と人が集まって来た。

前日ともなると皇都は人、人、人でごったがえして、お祭り騒ぎとなっている。

治安維持の為に皇宮騎士団も街の警備に加わり、カッコいい騎士達の姿は女性達を喜ばせた。



「 婚約者様は、見目麗しい令嬢だそうだ 」

「 美しいだけじゃなく、頭脳明晰で医師の資格もお持ちだとか 」

「 皇太子殿下とは、学園で恋に落ち、愛を育まれたなんて、凄くロマンチックだわ 」

「 婚約者様は、バルコニーにお立ち下さるかしら? 」


帝国民の感心は、皇太子殿下と婚約者がバルコニーに二人で並んで立ってくれるかどうかで、賭けまでしてる程に国中が盛り上がっていた。



その渦中の女性(ひと)である皇太子の婚約者は、婚約式を明日に控えているのに、トコトコとレオナルド風に変装して、盛り上がっている皇都の街を、荷物を抱えた侍女と歩いていた。


公爵邸から注文されたドレスを納品に来ているのだ。

いや、ドレスを引き取りに行ったのである。


基本、高位貴族の家は、ドレスを新調する時はオーダーメイドで注文をする。

洋裁店から、デザイナー達が自宅まで出向いて、そこでサイズを計りデザインを決める。

しかし、注文者がレティでデザイナーがリティーシャなんだから、公爵邸に行く事も出来ないので、どうしようも無いのである。

全てのオーダーはリティーシャのお店で行った。


そして、レティがドレスに拘り過ぎた為に、仕上がりが大幅に遅れ、まさかの前日仕上がりとなった。


「 もう、ドレスが間に合わなかったらどうするおつもりだったのですか? 奥様もそれはやきもきしてらして…… 」

「 間に合ったんだから良いじゃない、『パティオ』は納期を守る店です 」



店のオープンに向けて、準備もしなければならないレティは、何時でも忙しかった。

建国祭で3日間休日となったので、2日間共、店に通っていた。



こっそりと裏口から入り、衣装部屋に行く。

はぁ……

無事に公爵邸に納品出来ました。

フフフ……お父様にしっかりと請求せねば!


その時、ざわざわとして、執事が声を上げる。

「 お嬢様、皇太子殿下がお見えになられました 」


うきゃ~

危なかった。

危うく変装姿で鉢合わせをする所だった。

急いでワンピースに着替えて、応接間に行く。


あっ……髪型がレオナルドだわ……まあ、いっか……


「 アル……いらっしゃい 」

「 久し振りだね 」

殿下と会うのは、あのお茶会以来だ。


「 直ぐに戻らなければならないんだ 」

宮殿で招待客との食事会があるらしい。

少しだけ時間が空いたので、私に会いに来たのだと言う。


「 忙しいの? 」

「 うん…… 」

殿下は疲れた声を出す。

充電だと言いながら、私を抱き締めた。

私も殿下の胸に手を回して、よしよしと言いながら背中をトントンと叩く。


「 レティ……髪型が誰かを想像させる 」

「 これ楽なのよね 」

レティは髪を後ろで無造作に三つ編みにしていた。

それが、レオナルドの髪型と同じなのである。


「 明日だね 」

「 うん……とうとう明日になっちゃったね 」

「 緊張してる? 」

「 うん、少しだけ…… 」

「 明日は僕が一緒だからね、今夜は早く眠るんだよ、じゃあ、明日待ってるよ 」

殿下はそう言って、私の頬にチュッとキスをして出ていった。


えっ!?もう?

…………そんなに忙しいのに私に会いに来てくれたんだ。


本当に……

殿下は4度目の人生では、どうしてこんなに私の事を好きなんだろう?


きっとどの人生でも、私の事を知らないわけ無いのに……

だって私は宰相ルーカスの娘で、殿下の親友のラウルの妹なんだから……

色々と思い出しては考えさせられる。

『 縁 』と言う物の不思議を……



「 あら? ……レティ? 殿下は? 」

お母様が応接間にやって来た。


「 忙しいからって……もう、お帰りになったわ……私の顔をちょっと見たかったんだって 」

「 まあ、レティは幸せね 」

お母様は、殿下推しである。

雑貨屋さんで買った、殿下の絵姿をプレゼントしたら、凄く喜んでいた。

額に入れて部屋に飾ってるらしい。


ところで、明日のドレスは?

………と、皆で衣装部屋に行く。

ドレスを着て、キャアキャア言いながらアクセサリーを合わせる。



皇太子殿下との婚約式はいよいよ明日である。






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