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閑話─政権交代の余波

小話その1です。



レティが留学から帰国した日。

公爵邸の前では、父のルーカス、母のローズ、兄のラウルと使用人達、そして……アルベルトが待っていた。


港までレティを迎えに行った皇宮の馬車が静かに止まる。

馬車の扉が開けられると、レティが下りて来る。

レティは何の躊躇いもなく真っ直ぐに駆けて行き、アルベルトの胸に飛び込んでいった。


そんな二人を

何とも言い難い思いで見ていたのは、母親のローズであった。

嬉しそうな皇太子殿下と、幸せそうな最愛の娘……




アルベルトが6歳の時に、先代の皇帝が崩御した。

突然死だった。

皇太子だったロナウド・フォン・ラ・シルフィードは、いきなりシルフィード帝国第15代皇帝に即位した。

当然の事ながら何の準備もしていない帝国は大混乱に陥った。


突然の政権交代は、権力争いで多くの血を流した。

政権の中枢が乱れると、そのまま国が乱れた。

誘拐、窃盗、殺人………


そんな中で、ロナウド新皇帝陛下を守り、支える為に、ルーカスは来る日も来る日も皇宮に泊まり込み、家に帰る事は無かった。

政権争いの危害が及ばない様にと、ローズとラウルとレティは領地で長らく過ごしていた。



そんな家臣たちの努力もあり、皇宮が落ち着きを取り戻した頃に、皇太后になっていた前皇后が病気で崩御した。

父親の皇帝陛下に続き、その前後から母である皇后陛下は多忙になり、アルベルト皇子にあまり会えない日々が続いた。


そんな頃、皇子宮に(現在の皇太子宮)独り寂しく暮らしているアルベルト皇子の遊び相手として、ラウルが行く事になった。

ラウルは、母親のローズが領地にいる時には、父親のルーカスに連れられ皇子宮に通ったりもした。

やがて、エドガーやレオナルドも皇子宮に来る事になるのである。


皇帝陛下の突然の死が、アルベルト程では無いが、ラウルもレティも政治の犠牲になり、寂しい幼少期を過ごした事になったのであった。

……と言っても、本人達にはあまりその自覚は無いが……


そして……

見目麗しいレティを、どす黒い嫉妬や妬みから守る為に、ルーカスはレティを領地で過ごさせたのである。


母ローズは、レティのいる領地と、ラウルのいる皇都の公爵邸を行き来した。

時にはラウルを連れて領地に行き、レティを皇都の公爵邸まで連れて来たりの生活をしていた。

そしてレティは、母親と会う度に「 お母様会いたかった 」と言って、抱き付いて来たのである。



アルベルトの腕の中で幸せそうに笑うレティを見て

「 あなた……私達のレティは、もう殿下の元へ行ってしまうのですね 」

「 殿下が幸せにしてくれるよ 」

ルーカスはローズの涙をそっと拭ってあげた。


「 ラウルに早くお嫁さんが来て欲しいわね 」

「 お兄様のお嫁さんは私が認めた女性(ひと)以外は駄目だからね 」

レティが、アルベルトから離れて、ローズに抱き付きながら言った。

「 お父様、お母様……ただいま 」

「 お帰り、レティ 」


「 お兄様! 絶対に勝手に結婚したら駄目だからね! 」

「 何でお前の了解がいるんだよ! 」

……というラウルは嬉しそうだった。







本日2話更新予定です。


読んで頂き有り難うございます。

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