閑話─私が貴女を守ります
小話その2です。
本日は2話更新していますので
ここから入られた方は、もう1話前もお読み下さい。
騎士クラブの訓練が終わり
後片付けをしていたら、俺達は皇太子殿下に呼ばれた。
長期休暇中は部活が無いので、皆が久し振りの部活だった。
勿論、アルベルトが部活にいるという事は、レティが部活に来ているのである。
アルベルトに呼ばれたのは、レティと同じクラスで、同じ語学クラブで、同じ騎士クラブであるケインと、レティとレオナルドにサハルーン語を教えているノアだった。
 
皇太子殿下は椅子に座り、俺達を交互に見てきた。
アルベルトはレティと同じ時期に入部した、ケインとノアとレティを入れて、32名の部員の指導をしている。
しかし、こうして改めて向き合うと、二人はアルベルトの前に自然とひざまずき、頭を垂れていた。
これが皇族の力……
人の上に立つ者のオーラは半端無い。
 
「 二人は、私の婚約者と随分と親しいと聞いたよ 」
「 ……… 」
「 ……… 」
二人共、緊張して声を出せない。
親しいから……罰せられるのか?
親しいから……離れろと言われるのか?
彼等の頭の中で、グルグルと否定的な考えが駆け巡る。
 
「 ケイン、留学先で彼女を守ってくれて感謝する 」
「 いえ……リティエラ君……リティエラ嬢はお一人でも十分強かったです、僕は……何も…… 」
「 いや、君が側にいたから彼女は無事だったんだと思うよ 」
ケインもノアも、皇太子殿下が何を言わんとしてるかが分からない。
「 学園では君達が彼女を守ってくれないだろうか? いや、彼女を気に掛けていてくれるだけで良いんだ 」
「 !? 」
「 えっ!? 」
「 君達も知ってる通りに、私の婚約者はとんだお転婆だからね、何時も考えるより先に突っ走ってしまう、それに……私の婚約者となった事で、これからどんな事が起こるか予測が出来ないんだ、そして私は、来年には学園を卒業してしまう…… 」
だから学園では彼女の近くにいる君達に頼みたいのだと言った。
ああ……
こんな僕達にお願いするなんて……
本当に大切な人なんだ。
「 はい! 私が彼女をお守りします 」
「 はい! 命に変えましても! 」
 
二人はそう言って、頭を垂れた。
アルベルトは、この二人がレティを好きだと言う事を認識していた。
勿論、他の騎士クラブのメンバー達も、皆がレティを好きだが、この二人は特別な想いをレティに抱いている。
その特別な想いは信頼に足りる想い。
彼女を守ってくれる。
いや、彼女の傍らにいるだけで良いのである。
そして……彼等は将来良い騎士になるだろう。
 
レティが着替えて、建物から出てきた。
アルベルトは、レティの方に歩いていく。
レティは、ケインとノアが居ることに気付き、バイバイと手を振った。
ああ……なんて愛らしい……
ケインは入学式に、教室に入って来たレティに一目で恋に落ちた。
だから、レティが語学クラブに入部したら自分も入部し、騎士クラブに入部したら、自分も迷いなく入部したのだった。
留学も、実はレティが申し込む時を偶然目にしたので、自分も急遽申し込んだのだった。
レティは、平民のノアには決して手の届かない高貴な女性である。
だけど……
身分差なんか物ともせず、平民達と接するレティを好きになり、身を挺して彼女を助けた事により、強くなりたいと騎士クラブに入部した。
料理クラブの行き帰り、騎士クラブ、学食でレティを見掛けるだけで、心が踊った。
今は、こんな平民の俺から、サハルーン語を習っているのだ……
 
手を繋ぎ、楽しそうに帰って行った二人を見送りながら、皇太子殿下に、大切な婚約者の護衛を頼まれたと誇らしくなる二人であった。
皇太子殿下の大切な人……
私が貴女を守ります。
 
 
読んで頂き有り難うございます。
 




