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4度めの人生は 皇太子殿下をお慕いするのを止めようと思います  作者: 桜井 更紗
第2章

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小さなトラウマ




「 ねぇ……君は何故婚約をしてるのかな? 確か、我が国に来た時はそんな雰囲気では無かったよね? 」

ウィリアム王子が、レティの机の前の椅子に後ろ向きで座り、レティの顔をジロジロと眺めている。


因みに、ウィリアム王子の配属されたクラスはA組であり、レティはB組である。

休み時間に、お仲間達とレティのクラスにやって来ていた。

勿論、そのお仲間達の中にバケツ君もいる。




「 あの時、泣いたよね? それともあれは俺の気を引く為の、偽りの涙だったのかな? 」

「 ………… 」

こいつの頭をかち割って、脳みそのシワの1本1本を見てみたいわ!

何処をどう考えたらそんな話になる?



「 ワタクシが誰と婚約しようが、誰と結婚しようが、王子殿下には関係の無い事ですわ 」

「 関係あるね、だって君は俺の前で泣いたんだよ、それは、俺に助けて欲しいと言う合図だったんだよね? 」


はあ?

何で会ったばかりのあんたに助けを求める?

ああ……もうめんどくさい!

「 それで? 」

「 だから、何故こんなに急に婚約をしたのを知りたいんだよ 」


「 それは、俺が彼女を諦めなかったからだ! 」

何処から聞いていたのか……

ドアの柱に凭れ、腕組みをしているアルベルトが言った。


教室にキャアキャアと黄色い声があがる。


殿下だ……

「 おいで、レティ 」

アルベルトはスタスタとレティの席まで行き、レティの手を掴んで、クラスから連れ出した。


皇子様が、王子様から公爵令嬢を連れ去って行ったと、 キャーと、ざわめきがピンク色に変わった。



「 婚約なんて、あって無いようなものだよ……ねぇ? 」

ウィリアム王子は、クラスの女子生徒達にウィンクをした。

彼女達はキャアキャアと赤くなっていた。



アルベルトはレティの手首を掴み、どんどん歩いていく。

「 あの……殿下…… 」

怒っているのかと……不安になる。

無言で生徒会室に入り、手洗い場まで突き進み、レティの手をゴシゴシと洗いだした。


「 殿下、ちゃんと洗ったから…… 」


それでも無言で洗い、レティの手を優しくタオルで拭きながらレティの目を見、悪戯をする時の様な顔をして「 消毒 」と言って、手の甲にチュッとキスをした。


何これ……何これ……

どうしょう……殿下が可愛い……

これが婚約パワーなのか……

両手で両頬を押さえてクルリと後ろを向くと……

兄がいた。


「 あら、お兄様、ごきげんよう 」

「 何で? 」

妙な事を言うレティを見るラウルの横を、スンとなったレティは生徒会室から出て、クラスに戻った。


ああ……恥ずかしい……

殿下にチューをしたくなるなんて……

婚約パワー恐るべし……





***





今日は、長期休暇が終わり、初めての料理クラブの日である。

久し振りの料理クラブは……

あの日……

王女とのごちゃごちゃがあった日以来であった。



クラブが終わり、何時もの様に並木道に通じるドアを開けようとすると、急に緊張が走った。

胸の鼓動が激しくなり、取っ手を持つ手が震える。


結果的には、あれがあったから殿下に自分の気持ちを伝える事が出来たのだから、それで良かったのだと思いたい。

だけど……

どうしても、殿下と王女が二人でベンチに座っている姿は辛いのだ。

幸せな筈の今でも、時折夢に見る。


カチャリ……

ドアを少しだけ開ける。

これ以上はどうしても開けられない……どうしょう……


すると……

ドアが強い力で引っ張られた。

「 キャア! 」

「 あっ、ごめん! 」

ドアに引っ張られてつんのめりそうになった私を、殿下が受け止めた。

「 あっ、良かったレティだった 」

見上げると、殿下は嬉しそうに微笑んだ。


「 おかえり 」

「 ……ただいまです……」


ああ……

ドアと一緒に私の心も開けてくれた……



「 中々出て来ないから、どこかへ行ったのかもって心配したよ 」

殿下はそう言って私の手を繋いで来た。


皇子様のベンチを横目で見る。

胸の奥がザワザワして、チクリと胸が痛む……

この痛みはトラウマからなのか……




「 王子ってどんな奴なの? 」

そこか……

私が王女の影と抗っているのに、殿下の気になる事は王子だったわけで………

全然王女を引きずっていない殿下に、嬉しいやら悲しいやらの複雑な気持ちになって、何だか可笑しくなってしまった。


「 何?」

「 ううん……何でもない 」



王子ねぇ……

王立図書館でも、そんなに喋らなかったし……

それは……

赤のローブの爺達の、レティ包囲網が優れていたからなのである。


「 アントニオ学園では、同じクラスだったんだけど……何時でも大勢の女子生徒達に囲まれて……教室がハーレム状態になって、本当に迷惑したのよね 」

「 …………… 」

「 王子なんだから、来るなと一言命令すれば良いだけなのに、デレデレして……ハーレムを楽しんでいたに違いないわ 」



いや………

耳が痛いアルベルトだった……

ジラルド学園の1年の時と、ローランド国のアントニオ学園に居た時が、まさにそんな状態であったのだ。

そうか……

皆からは、ハーレムだと思われていたのか……



そしてレティは、1度目の人生でアルベルト皇太子殿下に纏わり付いてる自分を思い浮かべていた。

来るなって皇太子殿下に言われても……行っていたに違いない。

周りには迷惑を掛けていたんだわ……



二人で手を繋いでいながら

時間を越えて何だか気まずくなる二人だった。




そして……

そんな二人を見つめるギャラリーは

今までと変わらず仲良く歩いてる皇子様と公爵令嬢を見て、幸せな気分になるのであった。



いや……まてまて……

あーっ!!

手が……繋いでる手がーーっ

恋人繋ぎになってるーーっ!!!


萌え死にしそうなギャラリー達だった。








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