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皇太子殿下と公爵令嬢の攻防戦



最悪だわ。

皆の前であんなに泣き喚くなんて……

それに……

殿下の膝の上に乗ったなんて……


穴があったら入りたい。


レティは濡れたタオルで目を冷やしていた。

別人かと思う程に、目が腫れていたのだった。


「 お前……ブサイクだな 」

ラウルがレティの顔を見るなり言った。

「 本当にブサイクだわ…… 」


夏休みの長期休暇も今日で終わり、明日から学校が始まる。

レティは、今日中には店に仕入れ商品を持って行こうと思っていたけれども、あまりにもブサイク過ぎて外に出る勇気が無く、自宅の庭の薬草畑の手入れをする事にした。


「 マーサ、有り難う、薬草の世話をしてくれて……」

「 お嬢様だと思って誠心誠意お世話を致しました 」

薬草畑は枯れる事もなく、青々と繁っていてくれた。

マーサのおかげだ。



日焼け避けの帽子を被り、鼻歌を歌いながら水を撒いていると


「 今日は随分ご機嫌さんだねぇ 」


うわっ!殿下だ……

レティは顔を隠す様に、くるりと後ろを向いた。

「 あれ? 可愛い顔を見せてくれないの? 」

「 嫌よ、ブサイクだから見ないで 」


アルベルトはクスクスと笑いながら

「 ブサイクのレティを見せて欲しいなぁ 」

「 ブサイクって言った…… 」

「 自分で言ったくせに……良いから顔を見せてよ 」

「 嫌! 絶対に見せない 」

アルベルトはレティを後ろから抱き締め、顔を覗き込もうとすると、レティは顔を両手で隠した。

ねぇ……見せてよと、顔を見たいアルベルトと、嫌よと、見せたくないレティの攻防戦は続く……


「 お前ら、暑いのにイチャイチャやってんじゃねぇぞ! 」

余計に暑いとラウルが団扇で扇ぎ、窓から覗きながら言った。



「 あっ、そうだ! 婚約式の日が決まったよ 」

「 本当に、婚約式をするの? 」

「 ………嫌なの? 」

「 嫌じゃないけど……私達、まだお付き合いを始めたばかりなのに…… 」

「 僕が誰のものか……レティが誰のものかを発表するんだよ、もう横恋慕はされたくないからね 」


「 議会で叫んだしね 」

ラウルがニヤニヤしていた。

「 ラウル! 黙れ! 」

「 何を叫んだの? 」

レティがアルベルトを見上げた。


「 いいの! あっ……やっと顔が見れた……ブサイクでも、僕は好きだよ 」

「 やっぱりブサイクなんだ 」

レティが顔を両手で覆う。



「 おい、バカップル! お袋がお茶をいれたから、入って来いってさ 」

「 じゃあ、行こうか? 」

アルベルトは蕩けそうな顔をしながらレティを見つめ……

ブサイクじゃないよ可愛いよと言い、レティと手を繋いで居間に入って行った。



あんな腫れた瞼……どう見てもブサイクじゃないか?

好きになったら痘痕も靨に見えるって本当なんだ……

……と、ラウルは感心したのだった。





***





「 さあ、レティ、イチャイチャする前に、ジャック・ハルビンの事を聞こうか? あの店に1人で行ったんだろ? 」


母親のローズが、二人で話す事が沢山あるだろうと、レティの部屋でアルベルトと二人っきりにしてくれていた。

二人は長椅子に並んで座っている。


「 1人で行くのは駄目だって言ったろ? 」

「 ごめんなさい……あの時の賊は絶対にジャック・ハルビンの仕業だと思って……どうしても、殿下を皇太子殿下と知って襲ったのかを確かめたかったのよ 」


「 そんな……そんな危ない事を…… 」

「 あっ!全然大丈夫だったわ……殿下が強そうだったから、腕っぷしを試したかっただけなんだって……」

「 そんな事を仕掛けて来る奴なんだから、危険な奴じゃないか!!よくそんな所に行けたもんだ! 」

アルベルトはカンカンに怒っている。


「 ごめんなさい…… 」

「 ……で?……何でハルビンを探してたの? レオナルドから聞いたよ 」

「 もう! 殿下には秘密にしてと言ったのに……レオナルドもエドガーと一緒で使えないわね! 」

「 何でこの口は、そんなに悪い事が言えるのかね!? 」

殿下に顎を持たれ頬をぐにゅりとされた……

「 痛……いれしゅ…… 」



「 それで……? 何で探してたの? 爺達を見送りに行った時に、船に乗っていたのは彼だよね? 」


気付いていたのか……流石だわ……

「サハルーン帝国が昨年、魔獣に襲われたと知って……サハルーンの人に詳しく聞きたかったの……ノア君は知らないって言ってたし……」

嘘ではない……


「 また……魔獣……」

「 気になる事は、とことん追究する性質なんで……」

呆れ顔のアルベルトに向かって、レティはニコッと笑い、自分のこめかみを指でツンツンとした。

それを見てアルベルトは、レティの腕を引き寄せ抱き締めた。

「 えっ!? 何? 」

「 君が可愛すぎるのが悪い 」


レティをぎゅうぎゅう抱き締めながら

「 ドラゴンだよ、ドラゴンが現れて街を壊滅的にしたんだ 」

「 えっ!? ドラゴン……… 」

ドラゴンはローランド国の王立図書館で調べたばっかりである。

確か血は万能薬になると書いていた……

薬師であるレティはウズウズしてきた。


「 それで、どうやってやっつけたの? 」

「 皇太子軍が夜にドラゴンの穴蔵を、攻撃したらしい、ドラゴンも夜には寝るみたいだね 」

どの国も……皇太子殿下が出陣してるんだわ……

レティはアルベルトにギュッとしがみついた。

アルベルトはしがみついてきたレティの頭に、嬉しそうにキスをした。



「 攻撃方法は? 」

「 そこまでは知らされてないかな 」

そこが知りたい所なのに……使えないわね。

「 また、悪い事を考えたな! 」

今度は鼻をつままれた。

「 それで、そのドラゴンはどうなったの? 」

「 さあね……どうしたんだろうね 」


う~ん……解体して色々と調べたのかしら?

調べたのなら何らかの資料がある筈よね。

万能薬の……血は採取したのかしら?

もう、凄く血に興味がある……


「 街が壊滅的になった事から、我が国からも支援金を渡したよ、米とか小麦とか……あの時はルーカスの采配が光ったね 」

「 お父様が……」

ちょっと感動してうるうるした。

国の為に働いてくれている父が誇らしかった。



あら?

「 殿下! いつの間に…… 」

気が付くと、レティはアルベルトの膝の上に乗せられていた。

慌てて下りようとすると

「 駄目だよ! これからは二人っきりで話をする時は、僕の膝の上に乗せる事にしよう 」

昨日、泣くレティを膝に乗せたアルベルトは、その柔らかいレティとの密着度を大いに気に入ったのだった。



「 無理無理無理……こんな恥ずかしい格好なんてあり得ないわ 」

「 婚約したんだからもっと仲良くならなきゃ 」

アルベルトはそう言って、レティにキスをしようと顔を近付けて来る……

「 駄目よーっ!」

両手でアルベルトの肩を押さえ、突っ張ってキスをさせない様にするレティ。


レティの細い手を自分の肩から外し、キスを迫るアルベルト。

「 まだ話があるんだからーっ!! 」

「 あとで…… 」

アルベルトの甘い顔が近付いて来る……

レティはもがきながら

「 結婚は私が21歳になるまでしないから! 」


アルベルトとレティの唇が触れる寸前の所でアルベルトが止まった。


「 何だって? 」







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