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公爵令嬢が箒を持った時



「 先日は悪かった…… 」

ウィリアム王子が項垂れながらレティに謝罪した。


「 君の気持ちも考えずに、酷い事を言った…… 」

「 気にしておりませんので、お気遣い無く…… 」


「 いや、お詫びをさせてくれ、でないと……俺の気が済まない 」

「 ……じゃあ、王立図書館への入館許可をお願いしたいのですが…… 」

「 えっ!?、そんな事で良いの? じゃあ、次の休日に一緒に行こう 」


よし!

こんな王子の前で泣いてしまったのは不本意だったけど、王立図書館へ行けるのは凄い収穫だわ。





********





バシャッ

「 つっ………!? 」


昼休みに、庭にいたレティはいきなり頭から水を掛けられた。

「 えっ……何?…… 」


「 うちの王子様を誘惑するんじゃないわよ! 」

2階の窓から、女子生徒2人と男子生徒の3人がレティを見て、指を指しながら、ゲラゲラと笑っていた。


「 リティエラ様、大丈夫ですか? 」

リンダ達が青ざめた顔でオロオロしている。


うう……臭い………

この水は、雑巾を洗った後の汚い水……

彼等は、空のバケツをガンガン叩いてギャハギャハと騒いでいた。



「 リティエラ君、大丈夫か? 」

「 ケイン君………臭くてごめん 」

彼は、同じクラスで語学クラブも一緒、騎士クラブでも一緒の弓兵(予定)仲間の仲良しの男子生徒だ。


「 あいつら、C組のニール達を苛めてるらしいぞ 」

「 何ですってぇ!? ……許さ…ない…… 」

レティ達留学生は、女子3人が同じクラスで、男子は2人と3人のクラスに分かれているのであった。



「 行くわよ! 奴等を追い詰めるわよ! 」

「 ラジャー! 」


レティは、庭の端に立て掛けてある箒を持ち、ブンと一振りし、ケインと二手に分かれて走り出した。

ジラルド学園騎士クラブの私達を嘗めるんじゃないわよ!



一気に二階に駆け上がり、ケインと挟み撃ちにすると、男子生徒達は、卑怯にもレティに襲い掛かった。


レティは箒の柄で男子生徒の腹を突き、続け様にもう1人の男子生徒の横っ腹をぶっ叩いた。

悲鳴をあげ、うずくまる男子生徒達………


もう1人がバケツを投げて来たので、箒の柄で叩き落とし、彼の鼻先に箒の柄の先をピシリと突き付けた。

ニヤリと笑うレティ。


「 何だこの女ーっ! 強いぞーっ!! 」

バケツを投げた男は逃げていった。


ケインが倒れてる二人を踏みつけている間に、レティはバケツを拾いあげ、逃げたバケツ男を追い掛けた。

女子生徒の二人もバケツ男の後を追い、逃げていく……



彼等は大勢いる食堂に逃げ込んだ。


柱の陰に隠れているバケツ男に

「 み~つけた 」

レティはニヤリと笑い、持っていたバケツを頭に被らせ、箒

の柄でバケツをガンガン叩いた。


「 うわーっ止めてくれ!参った…助けてくれー! 」




そこに、騒ぎを聞き付けた王子がやって来た。

「 止めろ! これは、何の騒ぎだ!? 」


食堂が静まり返った。



ケインが二人を引きずって来て、バケツ男と一緒にした。


「 王子様に説明しなさい! 」

レティが冷たく言う。


「 そこの女子達も来なさい! 」

隅で震えている、女子生徒をチョイチョイと指で手招きをする。


彼女達は王子に向かって走って行った。

「 私達は何も…… 」

レティがひと睨みすると彼女達は黙って下を向いた。



「 さあ、王子様に説明しなさい! 」

彼等は渋々、王子に、自分達がした事を話した。



「お前ら、ちゃんと謝罪しろ! 」

「 はい、スミマセンでした 」


皆がレティに謝罪した。


レティは女子生徒達の方を向いた。

「 私がいつ王子様を誘惑した? 説明しなさい! 」

「 あの……ごめんなさい……王子様と図書館に行くって聞いて……だから…… 」


王子様はため息をフゥっと吐き

「 お前達、困ったもんだ……もうこんな事をしちゃいけないよ 」

「 はい…… 」



ふん! 随分甘い事……

「 ケイン君、行きましょ! 」

レティは踵を返し、歩き出した。


「 あっ、それから2年C組の留学生達を苛めたら、次は頭を叩き割るわよ!! 」

振り返ったレティは、箒の柄の先をバケツ生徒達に突き付け叫んだ。


その姿に皆が見惚れていた……



あ~どうしょう……

制服がこんなになっちゃった……

替えが無いのよ……替えが……

レティはケインにぶつぶつ言いながら、心配して見に来ていた留学生達と出ていった。



格好良い……

食堂がキャアキャアと騒ぎ出した。


レティを見送る王子様の耳が赤くなっていたのだった。





********





レティは保健室に行き、事情を話してシャワーをさせて貰い、アントニオ学園の制服を借りた。


「 まだ臭うわ………」

レティは自分の臭いをクンクン嗅ぎながら、クラスに戻って行った。


周りにいる皆に、ちょっと臭うから先に謝っとくわね。

そう言ってニコッと笑ったレティが、あまりにも愛らしくて………

皆は、この少女が箒を持って戦闘したのだと言う事が信じられなかった。



レティは、隣国でもレティだった。

汚ない水をぶっ掛けられても、自分が我慢すれば良いとスルーしようと思ったが、友達が苛められていると聞いたとたんに、爆発する心優しい少女だった。


そして強い………

彼女は騎士クラブに入って、確実に強くなっていた。

相手がかなり弱っちかった事もあるが、階段を難なく駆け上がった事も、体力がついた証である。


もっと強くなりたい……

レティは騎士だった自分を忘れてはいなかった。







次話からはアルベルト皇子が登場です。


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読んで頂き有り難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしたらありがちな主人公めそめそ方向に行っちゃうのではとハラハラしておりましたが。 いやいやいや。 ごめんなさい。 この主人公はもっと凛々しかったのですよね。 アルさん方面も気にはなりま…
[良い点] 隣国でも、レティは心優しくて正義感が強いのは相変わらずですね、こちらまで元気がもらえます。 [一言] 次話からはアルベルト皇子がやっと登場しますね。願わくば、レティの事を諦めずに頑張って欲…
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