公爵令嬢、異国の地へ
長期休暇に入って間もなくレティは異国に旅立った。
学期末の試験の結果が気に入らないと、教員室に文句を言いに行った時に、偶然見掛けた『夏休み期間! 2年生の留学生募集』の貼り紙を目にして、申し込みをしたのだった。
「 留学生募集はまだ締め切ってませんか? 」
「 うーん、本当はもう締め切ってるんですが………共通語がある程度話せる事と……成績優秀者である事が条件ですが……貴女なら全く問題は無いわね 」
そう言われて、その場で書類を書いて申し込みをしたのだった。
学生だから保護者の承諾書も必要だと言われて、その夜、父母に報告をした。
急な話しに、かなり驚かれはしたが……
まあ、学園がやってる留学なので良いだろうと、了承を貰えたのだった。
こんな風に、行動的なレティは、何時も事後報告をする少女だったのである。
馬車に揺られて皇都の街を進む………
『 皇太子殿下と王女、ご婚約間近! 』
そんな垂れ幕があちこちに掲げてあった。
こんなに早く広まるんだ……
国民の皆が祝福してるわ。
王女様はお綺麗だものね、ちょっと性格悪いけれども……
やっと自分の気持ちが言えたのに
結局、4度目も同じ……
しかし……恋人同士になったとたんに別れなければならないってどうよ?
殿下と私は……余程結ばれない運命なんだわ。
レティはじっと馬車の窓から街を眺めていた。
レティの前に座っているマーサが、目を赤くしてレティを見つめていた。
こんな垂れ幕………お嬢様はお辛いだろうに……
侍女のマーサと御者のカイルに見送られ
トランク1つで船に乗ったレティの髪は、肩までの短い髪になっていた。
昨夜、マーサに髪を切って貰ったのだった。
「 お嬢様、本当に宜しいのですか? こんなにお綺麗なお髪なのに………」
「 良いのよ、明日からは身の回りの事を自分でしないといけないんだから……長い髪は邪魔よ 」
学園の教育の一貫としての留学なので、侍女を連れて行く事は出来なかった。
しかしマーサは、皇太子殿下との想いを断ち切る為だと思い、泣きながらレティの髪を切ったのだった。
「 どう? 似合う? 」
クルリと回ってドレスを翻し、可愛らしく笑ったレティを見て……
マーサはまた泣くのであった……
「 ええ、ええ、お似合いでございますとも……お嬢様は世界一お綺麗でございます 」
翌朝、見送りに出た父母とラウルや使用人達は、レティの髪を切った姿に驚いたが……
誰もが口を開く事が出来なかった……
ラウルが優しくレティの頭を撫でた。
「 行ってきます 」
そう言ってレティは公爵邸を後にした。
船に乗る前に、留学する生徒達と合流した。
皆が仲の良い語学クラブの部員で、男子生徒は5人で、女生徒は入部当時から一緒だったリンダと、途中から入部した(アルベルトが先生をした後に入部したが、退部しないでそのまま居る)メリッサの3人だった。
皆は、学園での色々や、皇太子殿下と王女の婚約の噂は勿論知っていたが、髪を切ったレティを見て……
何も言わないでいてくれたし、何も聞かないでいてくれた。
有難いと、レティは、優しき友人達に心の中で感謝をした。
「 リティエラ様、その髪型よくお似合いですわ 」
「 有り難う 」
さりげなく髪型の事を言ってくれた事も嬉しかった。
レティは、送って来てくれたマーサとカイルに手を降りながら、大きく深呼吸をし、新たなる第一歩に胸を踊らせていた。
しかし……
1人で甲板にいると、1度目の人生で死んだ時の記憶が鮮明に思い出された。
怖い………
違う、まだよ、今は20歳じゃない。
落ち着いて………
船だってこの船では無いわ!
記憶をもう一度辿ってみる。
私は1度目の人生は、船から突き落とされて溺れ死んでいる。
そして、私の乗っていた船はその後に爆発して多くの人が亡くなったと言う事を、2度目と3度目の人生でニュースで知った。
でも、11年前の事なので、記憶が曖昧で日にちの特定は、今は出来ないでいる。
2度目の人生は流行り病で命を落とした。
その後に大流行して、多くの人が亡くなった事を3度目の人生で知った。
3度目の人生では騎士団に入隊したが、騎士団でも多くの騎士達が、流行り病で亡くなったのだ。
だけど、多くの人が亡くなったが、何とか回避出来て流行り病は終息しているのだ。
そして……
3度目の人生は、魔獣ガーゴイルの襲撃で死んだ。
ただ、その後、ガーゴイルに勝利出来たのかどうかは分からない。
先ずは
私が船に乗らなければ死ぬ事は無いだろう。
だけど、多くの人が船の爆発で命を落とすのだ。
スルーは出来ない!
それに、私が海に突き落とされる事になった原因を知りたい。
私は、何を渡されたのか………
船は何で爆発したのか………
私の記憶から、渡した人は、騎士クラブの部員であるノア君の叔父さんの『 ジャック・ハルビン』だと言う事は分かった。
これからだ!
1つ1つ謎を解明できたら、船の爆発は回避出来るに違いない。
でも………
怖いのは、5度目の人生があるかどうかなのよね。
4度目の人生も何で死ぬかは分からないのだから………
はぁ……
4度目の人生は、友達を作り、普通の彼氏を作ったりして学園生活を楽しもうと思っていたのに………
いつの間にかとんでも無いものを背負っちゃってるわ。
だけど……
料理クラブや語学クラブ、騎士クラブに虎の穴………
自分のブランドのお店を持ち、もうすぐ医師の試験も受けるつもりだ。
これは3度の人生の経験があったからだ。
私がループしてる意味……
4度目の人生でそれを知ることが出来るのだろうか。
そして、4度目の人生は我が国の皇太子殿下と知り合っているのだ。
皇太子妃にはなれなかったけれども、殿下は親しいお友達として利用させて貰うわ………
あの権力者を利用しない手はないのだ!
「 レティ、また悪い事を考えているな 」
あっ………
殿下の声が聞こえた様な気がした。
振り返ると……
ザワザワとした雑踏の中で、甲板の上で海を見てる人々が沢山いた。
「 馬鹿ね……いる筈無いのに………」
レティは、トランクをカラカラと引っ張りながら、皆がいる客室に向かった。




