修羅場
アルベルトは
レティが王女を戒める時に言った言葉が突き刺さっていた。
「 仮にもこの国の皇太子妃になりたいと考えてるのなら、国民に好かれる人でいなさいよ! 」
まさかレティが、こんな風に思ってるとは思わなかったのだ。
レティ………
俺を手放しちゃ駄目だ……
俺から離れようとしないで……
今日はレティの料理クラブの日。
アルベルトはそんな不安な想いを抱え
何時もの様にベンチに座り、レティを待っていた。
「 アルベルト様、隣に座っても宜しくて? 」
「 !? ………何故……ここに? 」
「 アルベルト様をお迎えに上がりましたのよ、今からお食事に行きませんこと? 」
「 ………… 」
突然の王女の登場に動揺して、アルベルトは言葉を失ってしまった……
その隙に王女はアルベルトの横に座った。
すると………
ガチャリとドアの開く音がした。
ハッとしてドアの方を向くと、レティが出てきた。
「 また貴女なの? ……アルベルト様とワタクシの邪魔をしないと言ったのはお忘れになったの? 」
立ち上がろうとするアルベルトの腕に手を回し、自分の方に引いた。
何故、ここに王女が居るんだろう?
殿下は何で王女を連れてきたの?
ここを大切な場所だと思っていたのは私だけだったのね。
「 レティ、違うんだ 」
アルベルトが王女の手を振り払い立ち上がる。
レティは耳をふさいで駆け出した。
アルベルトが追い掛けて行き、レティの腕を掴んだ。
「 話を聞いてくれ! 」
「 アルベルト様!私をほおっておく気なの? 」
王女がアルベルトの声を遮る様に甲高い声を出す。
今まで、ずっとワタクシを庇い、ワタクシの側にいてくれたのに……
二人に追い付いた王女が、アルベルトの腕に手を回して強く引いた。
それを見たレティは
アルベルトの手を振り切り、駆け出した。
「 離せ! 」
「 離さないわ! 取り乱すなんて、アルベルト様らしくありませんわ 」
王女がアルベルトを引き止めようとする。
俺らしくない?
笑わせんな!
俺は……
レティがいないと人形なんだよ。
皇子様と言う人形………
レティが居るから俺らしくいられるんだ。
王女を振り切り
レティを追い駆けるアルベルト。
レティの腕を掴んだ。
振り向き様にレティは叫んだ。
「 どうして、ここに王女様を? 」
「 だから、誤解だ! 」
「 いくら一緒にいたくても、ここに連れて来るなんて…… 」
「 それなら、君だってグレイと一緒にいたじゃないか!」
「 はっ!? グレイ!?……グレイは……っウ………」
アルベルトはレティの口を塞いだ。
レティの口からグレイの話は聞きたく無かったのだ。
レティの腕を引き寄せ、片手をレティの頭の後ろへやり、強引にレティにキスをした。
目を見開いて、驚くレティ。
「 止め………」
「 ………てよ!」
レティがアルベルトを突き飛ばした。
口に手を当てながら、怒りと羞恥で赤くなり、顔が歪み、泣きそうな顔をしていた。
レティは、再び走り出し、馬車に駆け込んだ。
「 早く出して 」
動き出した馬車の窓から、手で顔を覆い泣いているレティが見えた………
ああ………
俺は何をしてるんだ。
つまらない嫉妬をレティにぶつけてしまった……
アルベルトの力を込めた握り拳が震えた。




