愛を込めて
昨年は、アルベルト皇子の立太子の礼で、中止になっていたシルフィード帝国の、帝国行事である軍事式典が近くに行われる。
2年ぶりとあって、かなり盛大な物になるらしい。
帝国行事なので
アルベルト皇太子殿下の姿を学園で見なくなった。
式典の準備に追われているのであろう……
皇子様の居ない学園は
太陽の無い学園になり、学園の皆が寂しい思いをしていた。
レティも寂しい思いをしていたが
彼女は、慣れようとしていた。
アルベルトの居ない毎日に………
4度目の人生は幸せ過ぎよね………
料理クラブが終わり、ドアを開けた。
そこには、居ない筈のアルベルトが居た。
何時もの様に、皇子様のベンチに腰掛け、レティを見ると破顔した。
胸がキュンとした………
「 レティ、お帰り 」
「 ……………… 」
「 レティ?、ただいまは? 」
「 ただいまです、殿下……今日もお休みでしたよね? 」
「 君に会いたくて……… 」
アルベルトが、慈しむようにレティを見つめる。
忙しい公務の間に、レティに会いに来たのだった。
ああ………
この人は何でこんなにも私を好きなんだろう?
そして、私も………
レティはアルベルトへの想いを飲み込んだ………
アルベルトが手をレティの方に差し出した。
レティもアルベルトに手を伸ばし、手を繋いだ。
大きな手、硬い掌は剣士の手。
レティはアルベルトの手を忘れない様に記憶した。
二人で歩き出す。
「 何か変わった事は無い? 」
「 あっ、生徒会長! スポーツ大会の事で……… 」
二人でいれば何時も楽しい。
しかし、そんな幸せなひとときはあっという間に終わる。
ラウルの待つ公爵家の馬車に着いた。
どうやら、ラウルは眠りこけている様だ。
「 誕生日のプレゼントを贈るからね、楽しみに待ってて 」
「 有り難うございます、楽しみに待ってます 」
二人で見つめ合い、微笑み合う……
会えないと切なくて
会えばもっと切なくなる
レティは、そんな想いをもて余していた。
********
レティの誕生日に
皇宮からの使者がやって来た。
「 アルベルト・フォン・ラ・シルフィード皇太子殿下からの贈り物です 」
そう告げ、プレゼントを公爵邸に運びこんだ。
これでもかと言う大粒のアイスブルーのネックレスと、アイスブルー色のドレスだった。
リティエラ・ラ・ウォリウォール嬢へ愛を込めて
16歳の誕生日おめでとう
アルベルト・フォン・ラ・シルフィード
バースディカードが添えられていた。
「 まあ………殿下ってば……情熱的ね 」
お母様は、殿下と同じ瞳の色のドレスまで贈られて大喜びだった。
男性が女性にドレスを贈るのは、婚約者か妻にだけだと言う我が国の風習がある。
まだ、婚約もしていないのに、アルベルトはレティにドレスを贈って来たのである。
───あの皇子やりやがったな………
レティが、デビュタントのファーストダンスを早い者勝ちとしたので、アルベルトはレティは自分の物だから手を出すな宣言をして来たのだった………
しかし、レティは、自分のブランド商品を立ち上げる宣伝の為に、自分のドレスをデザインしていて、もうそのドレスは出来上がり、レティの衣装部屋に保管されていた。
殿下からのプレゼントは、ネックレスだけだと予測をしていたのに………
こんな、全てをアイスブルー色で統一され尽くした衣装を私に着れと言う事?
アクセサリーも、ドレスも全く同じ色………
そんなの………
お洒落番長としての矜持が許さないわ!
殿下から頂いたドレスは着るしかない………
ならば……と、レティは手直しをする事にした。
デザイン画に、細かい指示を書いていく………
これを、仕立て屋に出せば、まだ間に合うわ………
殿下、手直しするのをお許し下さいね。
読んで頂き有り難うございます。




