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4度めの人生は 皇太子殿下をお慕いするのを止めようと思います  作者: 桜井 更紗
第2章

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赤のローブの爺達、異国の地へ




ある春の暖かい日に、レティは港に居た。



虎の穴の赤のローブの爺達10人が、異国の地に旅立つので、見送りに来ていた。



あの、エロい事しか言わない爺達は

実は、先のシルフィード帝国の重鎮達であった。

先帝と、現帝の2代に渡って教育係を勤めた輩もいるのだ。



それもそうだろう、皇立特別総合研究所の研究員なのだから………

レティが、『虎の穴』なんて言う軽い名前を付けてしまったが為に、随分と軽く感じる場所になってしまったが、虎の穴は、国の将来を担う重要な機関なのである。



皇宮では、皇帝陛下から任命され、正式なシルフィード帝国の特使としての任命式を得て、異国へ旅立つのである。



皇太子殿下が公務として正装をし、正式に港まで見送りに来た程である。




「 あっ、殿下がいる………」

船の甲板で、出立の式典をしている……

ルーピン所長が居て、船長らしき人も居る。

殿下の公務なので、クラウドも来ていた。



正装をした殿下は………もう、言葉が出てこないわ……

あれは、誰もが惚れるわよ………格好良すぎる……

………と、レティは皇太子殿下に見惚れていた。



港街は、出立する爺達では無く、一目、皇太子殿下を見ようとごった返していた。

キャアキャアと黄色い声が飛び交う。



すると

殿下がレティに、おいでおいでと手招きをした。


えっ?!私?

公務中でしょ?



周りは騒然となっていた。

皇太子殿下は誰を手招きしたのかと、ざわざわと探している……



これは………不味い事になった………



直ぐに、見知った殿下の護衛騎士がやって来た。

「 殿下がお呼びです 」

ニコニコ顔で、レティの手を取った。



皆からの視線が痛い。



お供をしてくれた、侍女のマーサに、ちょっと待っててと言って、顔を隠す様にしてタラップを上る。



「 足元にお気をつけ下さい 」

タラップは不安定で、ゆらゆらしていた。



「 キャァ!」

よろけそうになると、アルベルトが来ていてレティを抱き抱えた。



勿論、民衆は黄色い歓声で騒然となっていた。



いや、殿下、ご無体な………

私………もう、街を歩けないかも知れない………

慌てて、赤のローブの爺達の中に隠れた。



「 こんな群衆の前で………」

「 殿下、ご自重を……… 」

「 全く、何処でも発情しなさる………」



「 してないから! レティ、こっちにおいで!」


横にいたクラウドが、クックッと口を押さえて笑いを堪えていた。


レティは、アルベルトの影に隠れる様に立った。



「 爺ちゃん達、気をつけて行って来てね 」

レティが、リボンをした包みを1人ずつ手渡す。

レティが手作りしたクッキーだ。

渡せる機会があればと用意して来たのだった。



渡せて良かった………



すると、赤のローブの爺達が、レティをハグした。

いや、しようとしたら、アルベルトに阻まれた。



殿下と爺達が睨み合う。

「 殿下、オスの嫉妬はみっともないですぞ…… 」

「 全く、なんと、お心の狭い……… 」

「 妃様は、苦労しますぞ………」


「 何とでも言え! レティには触らせない 」


クラウドは、肩を震わせ笑っている。



レティは、アルベルトに抱え込まれたまま、赤いローブの爺達に言った。


「 爺ちゃん達、あのノートを宜しくね 」

「 何のノートだ? 」

殿下が訝しげに聞く………


「 秘密よ……… 」

「 そうじゃ、秘密じゃ! ワシらと妃様の秘密じゃ! 」

爺達は勝ち誇った様に言った。



「 行こう、レティ 」

ムッとしたアルベルトがレティの手を取った。


船がもうすぐ出港すると、船員が殿下に伝えに来ていたのだ。


「 いえ、殿下、ここは別々で……」

殿下と手を繋いで船から下りるなんてとんでもない………

ましてや、公務中でしょ?

そう言うと………

殿下はまたもやムッとしていたが

ここは仕方ない。

私はただの一般人なのだ。



私は、ルーピン所長や関係者達に紛れて、こっそりとタラップを下りた。

ルーピン所長は私の手を取った。


「 ルーピン所長、手袋を有り難うございました 」

「 使い心地はどうだい? 」

「 剣を振っても、豆が出来ませんのよ 」

「 驚いたよ、君が騎士クラブに入っているとは………」

私は、ウフフ……と、笑った。



タラップから下りて、護衛騎士達が人垣の整理をしてるのを見ていた。


「 そう言えば、私が学園に在籍していた頃は、あいつ……クラウドが騎士クラブの部長だったよ 」


驚いた………

聞くと、クラウド様とルーピン所長は同い年で、同じクラスだったらしい………

「 私達は仲が悪かったけどね 」


いや、それよりも、貴方………かなり老けてますよ。

クラウド様は、もっと若々しいです。



そして、今は消防団で火消しの仕事をしてるらしい。

だから、最近は虎の穴で見掛けなかったのね………


「 素晴らしいです 」

私は思わず、ルーピン所長の手を取った。

ちょっと赤くなったルーピン所長に

稲妻が飛んできた………


「い………!!」

尻を押さえるルーピン所長。


殿下だった。


殿下を睨むと、甲板の上でニヤリと悪い顔をしていた。

ギャラリーがザワザワしていた。




クラウドは可笑しくて仕方無かった………

殿下が、こんなに面白いやり取りをしてるのが、新鮮だった。


リティエラ嬢との、関係も良好の様だ………

これは、皇后陛下がお喜びになるぞ!と心が踊った。


クラウドは、殿下と公爵令嬢の会瀬を、両陛下に報告をしているのである。





その後、人垣が整備された空間に、皇太子殿下がタラップを下りてきた。



キャア~と黄色い歓声が皇太子殿下に投げ掛けられた。



ううっ………一緒に下りなくて良かった~

………と、胸を撫で下ろした。




タラップが外され、出港の汽笛が鳴った。




船上を見ると、手すりに居る1人の人に目が釘付けになった。




うそっ…………





記憶が甦る……

11年前の、私の1度目の人生の時の記憶だ。



私に、何かを渡した人だ………



待って、待って!!

私は、護衛騎士が止めるのを振り切り、前に走り出た………



「 待って!! 貴方は誰なの? 」



その人は、私の方を見ていた。

異国の人みたいだった。

赤毛に金色の目が、やけに印象に残った。


覚えたての共通語で叫んでみた………

だけど……



もう、声は届かなかった。

船はどんどん小さくなって行った。









続きます


読んで頂き有り難うございます

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