閑話━あの、令嬢の話
小話その1です
 
アルベルト皇太子殿下とのデートが決まりましたわ。
 
両親、一族が大喜び。
「 殿下は、うちの娘の美貌にメロメロかもしれないね 」
 
何処の親も親バカである。
 
ワタクシは、皇后陛下主催の夕食会で、皇子様に見初められたのかしら………
それとも、隣のクラスのワタクシに想いを寄せていたのかしら………
そりゃあ
ワタクシの美貌と、この肉体美なら、皇子様が恋に落ちても仕方ないかもね…………
「 オーホホホ」
 
皇子様が馬車から下りてくるわ……
ああ、笑顔が眩しい………
なんて素敵な皇子様なの………
「 殿下、この度はお誘い頂きまして有り難うございます 」
 
殿下はニコリと笑って
「 ご令嬢、お手をどうぞ 」
と、手を差し出してくれた。
キャア~………ドキドキドキドキ………
でも………殿下が手袋をしてるのが残念だわ………
  
  
手を取り合い、劇場までの階段を上る。
ああ……大勢の護衛達に囲まれて………
今、ワタクシはお姫様…………
ふと、横の殿下を見ると、何だか様子がおかしい………
 
ホールに着くと、支配人やスタッフ達がニコニコと出迎えてくれた。
殿下はワタクシの手を離し、支配人からの挨拶を受ける。
そして、案内のスタッフに続き、そのまま二階へ上がりだした。
あら? エスコートはここまでなの?
そうね、大勢の前だから照れちゃったのかしら………
カーテンを開けると、そこはロイヤル席。
まあ、カップルシート………
ドキドキドキドキ………
でも、殿下はその後ろを通りすぎ、
「 どうぞお座り下さい 」
………と、一人掛けの椅子にワタクシを座らせ、殿下も横の椅子に座った。
そうよね、初デートでいきなりカップル席は無いわよね。
でも次は、カップルシートに座りたいわ………
 
そうして、ワタクシと殿下のデートはあっけなく終わった。
オペラは凄く面白かったけれども………
前に他の殿方とデートした時の方が楽しかったわ………
皇太子殿下って案外つまんない。
 
でも、
ワタクシに恥をかかせたあの令嬢には自慢したい。
最近殿下と仲良くしてるみたいですものね………
だけど………
彼女は悪役令嬢で人気者になった。
悪役令嬢は、彼女の様な、大きなまあるい目の可愛らしい顔じゃ駄目なのよ。
 
ワタクシの様なつり上がったきつい目、ツンと高い鼻、豊富な胸の持ち主こそが相応しいのよ。
あんな、スレンダーな身体じゃ………フッ、まだまだね。
ワタクシは悪役令嬢に憧れた。
庶民の店にこっそり行って、豪華な扇子を買った。
家で練習をしたが、大勢の前で「オーホホホ」は出来なかった。
ワタクシはリティエラ様に憧れた。
あの度胸は並大抵の者ではない。
学園祭では、悪役令嬢喫茶をすると言うリティエラ様のクラスを覗きに行った………
大勢の男達に土下座をさせ、横では鞭でバシバシやっていた。
「 オーホホホ、ワタクシの前に、ひれ伏しなさい 」
髪は縦ロール、扇子で口を隠し、腰に手をやり仁王立ちで立つ彼女がいた。
ああ…………
これぞワタクシの求めていたもの…………
彼女のクラスは、来年も悪役令嬢喫茶をやると言っていた。
 
来年は、是非ともワタクシも参加出来る様にお願いしたい。
 
 
この令嬢は
誰もが恋するアルベルト皇太子殿下には、差ほど興味は無かった。
格好いいけど、タイプじゃない………
十人十色である。
 
今や、リティエラ・ラ・ウォリウォール公爵令嬢を崇拝していたのである。
 
 
アルベルト殿下が、オペラデートの話を思い出したので、
そう言えば………
……と、レティにやっつけられた彼女を思い出しました。
この令嬢、名前はあったのかと過去の話を探しましたが、何処にも名前は出て無かったので、敢えて書かない事にしました。
でも、私のマル秘メモ帳にはちゃんと名前があったんですよね。
次に登場するかは分かりませんが………
 
読んで頂き有り難うございます。
 




