格好いいのはどっち?
皇太子殿下と騎士(予定)エドガーの模範試合。
私の脳内は、皇子様神輿と騎士神輿が担ぎ上げられ、太鼓の音に加えて、ピーヒャラピーヒャラと横笛まで鳴り響き、
ワッショイワッショイと、クライマックスに向けて最高潮に盛り上がっていた。
「 エドガーは、踏み込みが甘いんだよ 」
懐かしい声の主はグレイだった。
私の3度目の人生の剣の師匠だ。
そして、皇宮騎士団では弓騎兵の班長だった人だ。
うそ……………
3度目の人生での騎士クラブ所属中に、グレイ班長が来たことは一度も無かったのだった。
グレイ班長と初めて会ったのは、学園を卒業してから入る、1年間の騎士養成所だった筈…………
私は首をブルンブルン振った。
私は過去を生きてるわけじゃないんだわ………
違って当たり前よ。
そう思うが………
どうしても、過去なんだか未来なんだか分からない物に縛られていた。
「 エドガー、久し振りに手合わせをしよう 」
エドガーとグレイは従兄弟同士である。
グレイは殿下に挨拶をし、殿下と手合わせをしたばかりのエドガーの回復を待っていた。
あれ?
クラウド様がいる。
殿下とグレイ班長とお話をしている。
クラウドは殿下の側近で、元皇宮騎士団の団員だった。
クラウド様は私を見ると、驚きながらニコリと笑い、頭を下げた。
私も慌ててペコリと頭を下げる。
そうよね、驚くわよね。
こんな所にいるんだから………
私は騎士クラブの赤のチュニックの練習着を着ていた。
ブカブカなので手直しをしたかったが、騎士クラブの者は全て持ち出し禁止だったから、格好悪いながらもブカブカのチュニックを着ていた。
因みに、洗濯は各自で洗い、騎士クラブにある洗濯場で干す事になっている。
「 さあ、始めよう、エドガー、かかってきなさい 」
グレイ班長の低い声が響く。
エドガーは嬉しそうだ。
うわ~うわ~うわ~っ!!!
なんてこった…………
グレイ班長の剣術が見れる…………
私の脳内は、グレイ神輿が担ぎ上げられた。
同時に花火も打ち上げられた。
グレイとエドガーの二人の視線が合う。
長い間合いが続く。
エドガーが打って出た。
グレイは、軽くかわし
「 踏み込みが甘い、恐れずにもう一歩前に…… 」
エドガーが前に出て打ち込む。
グレイの木剣と合わさり、カツンと音が響いた。
「 そうだ、今の踏み込みだ 」
ああ…………
私も、私も、こんな風にグレイ班長に鍛えられたわ。
試合と言うよりも、練習みたいだった。
グレイ班長はエドガーの弱点を的確に言い当て、修正させる戦いをした。
後半、エドガーの動きが極端に良くなった。
「 よし、良いぞ、エドガー 」
しかし、エドガーが渾身の一撃を打ち込んだ瞬間、下方から木剣が払われ、木剣が飛ばされた。
何と………木剣は私目掛けて飛んで来た。
「 危ない!! 」
あちこちから悲鳴が上がった。
私にあたる寸前に、黄色い稲妻が木剣を弾き飛ばした。
木剣は高く中に舞い、カランと音を立て地面に落ちた。
木剣は焦げていた。
殿下が魔力を放ったのだった。
「 レティ、怪我は無い?」
殿下は私の方に走りながら、指を鳴らし魔力を放ったのだ。
私は、ヘナヘナと座り込んだ。
とたんに場内は大騒ぎとなった。
「 皇太子殿下が魔力を……… 」
殿下は、私に魔力が当たらなかったのかと、オロオロしている。
「 レティ、当たらなかった? 」
私はコクコクと頭を上下に振った。
「 初めて拝見しましたが………殿下、これは凄いですねぇ 」
クラウドが近寄りながら言う。
「 令嬢、申し訳ない 」
と、グレイが駆け寄ってきた。
「 レティ、大丈夫か? 」
エドガーも駆けて来た。
「 私は大丈夫ですが、殿下、良いのですか? 皆に知られてしまいましたね 」
「 うん、別に隠してたわけじゃ無いし……レティの為に使えたから………間に合って良かった 」
殿下は私の手を取り、立ち上がらせながら言った。
確かに……
殿下の魔力で、木剣を弾き飛ばさなければ、私は大怪我をしていただろう。
クラウドが騎士クラブの生徒達に、皇太子殿下の魔力が最近開花した事を説明をして、その場を収めた。
近々正式に発表されるだろう。
こう言う事はきちんと説明しないと、後から変な噂が噂を呼び、大変な事になるからだ。
公爵家の馬車に送って貰う道すがら
殿下がポツリと聞いて来た。
「 グレイ…………は格好いいだろ? 」
「 …………?? はい、格好いいですね 」
でも…………
「 殿下の方が格好いいです 」
私は百発百中の、殿下の雷落としが気に入っていたのだ。
フッフッフッ……
これで、ガーゴイルをやっつけられるのだから!!
「 そう? 格好よかった? 」
ウンウンと言いながら、有り難うございました。
……とお礼を言いながら殿下を見上げたら
殿下は嬉しそうに満面の笑顔を浮かべた。
感想、レビュー、ブクマ、評価、励みになります。
お待ちしております。
読んで頂き有り難うございます。




