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【WEB版】やり直し転生令嬢はざまぁしたいのに溺愛される【書籍化1巻完結&コミカライズ1~3巻完結】  作者: 来須みかん
【スピンオフ作品ベイル編のコミカライズ記念SS】

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【スピンオフ作品ベイル編のコミカライズ記念SS】お兄様の想い人

 ペイフォード公爵家の来客室で、クラウディアは小さなため息をついた。


「はぁ……」


 銀色の髪を自身の耳にかける仕草は優雅だが、エメラルドのような緑色の瞳は憂いに満ちている。お気に入りのハーブティーが目の前にあっても、口をつける気にはなれない。


「どうしたの? ディア」


 優しく声をかけられたクラウディアが顔を上げると、テーブルの向かいに座るアーノルドと目が合った。赤い髪はきれいに整えられていて、黄金を彷彿させるような瞳は不安そうだ。


「あっ、ごめんなさい。せっかくアーノルドが来てくれているのに」


 今日は、婚約者であるアーノルドがペイフォード公爵家まで出向いてくれていた。クラウディアにとって楽しい時間のはずなのに、集中できていない。


「僕でよかったら話を聞くよ」

「ありがとう。実は私のお兄様のことなんだけど……」


 クラウディアの兄ベイルは、自他ともに認めるシスコンだった。


「ディアのお兄さんかぁ……」と呟くアーノルドは、どこか遠くを見ている。ベイルの過保護っぷりには、彼も何か思うことがあるのかもしれない。


「そんなお兄様に、実は気になる女性ができて……」

「えっ⁉ ディア以外に?」


 コクリと頷くクラウディアに、アーノルドは驚きを隠せない。


「そ、それはどんな人なの? まさかお相手は、ディアに似ているとかじゃないよね?」


 どこか青ざめているアーノルドに、クラウディアは笑ってみせた。


「まさか。お兄様の私への好きは、恋愛の好きじゃないもの。あれは過剰な家族愛よ」

「ディアが言うならそうなんだろうね」


 アーノルドが向ける視線からは、クラウディアへの絶対的な信頼が見て取れる。


「じゃあ、ディアの悩みって?」


 普通の妹ならここで「お兄様が取られたみたいで寂しいの」というかもしれない。でも、クラウディアは違った。


「お兄様が相手の女性にご迷惑をかけていないか心配で心配で……」

「あー、そっちかぁ」


「しかも、お相手の方は、どうやらとても気遣いができて、あのお兄様相手でも楽しいお話ができるお優しい方らしいの。その方を逃したらお兄様は、もう生涯独り身(ひとりみ)が決定よ!」

「ディアのお兄さんは、女性に人気がありそうだけど?」


 アーノルドのいうとおり、ベイルの外見はとても整っている。輝く銀髪に、青い瞳は人目を引くし、なによりペイフォード公爵家の嫡男なので身分もまったく問題ない。問題ないはずなのに……。


「実は、これまでに何十人とお見合いをしてきたのだけど、すべて向こうからお断りされているの」

「そ、それは深刻だね」


 アーノルドは優しいからはっきりとは言わなかったが、公爵家の嫡男が令嬢たちからお断りされ続ける時点で大問題だ。クラウディアも、ため息くらいつきたくなってしまう。


「お兄様には幸せになってほしいわ」

「今でも十分幸せそうだけど?」


「それはそうだけど……。私はアーノルドに出会えて、本当に幸せなの。だから、できればお兄様の恋も叶ってほしいわ」

「ディア……」


 そう繰り返したアーノルドの頬は赤い。


「そうだね、幸せはひとつじゃないけど、お兄さんに気になる人がいるのなら僕たちも応援したいね」


 テーブルの上でアーノルドの手がクラウディアの手に重ねられた。剣をふるうその手は、出会ったころよりも大きくなっている。


(好きな人と手をつないだだけで、どうしてこんなにも心が温かくなるのかしら?)


 こんな不思議な気持ちを、これからベイルも味わっていくのかもしれない。

 クラウディアは、アーノルドに微笑みかけた。


「ありがとう、元気が出たわ。相手の方に無理強いする気はないけど、少しでもお兄様の良いところを知ってもらえるように頑張るわ」


 笑顔を浮かべたクラウディアにつられるようにアーノルドも微笑む。


「お兄さんの想い人、どんな方だろう?」

「今から会うのが楽しみね」


 二人はまだ見ぬ令嬢に思いを馳せるのだった。


 おわり




【宣伝/コミカライズ、新連載の予告です】


この作品のスピンオフ、シスコン兄の恋愛模様がマンガになります!


〇白良木羅々先生によるコミカライズ

『地味令嬢が氷の騎士様に溺愛される方法〜私の推しはあなたの妹です〜』


上記作品が、【9/4からコミックシーモア様】で先行配信スタートします!!!


明るく楽しい作品となっていますので、どうぞよろしくお願いいたします♪

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