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07 見えそうで見えないけど見られてた

 少し離れて待機していたラルフが心の中で小さく悲鳴を上げた。


 --この子がアーノルド殿下か?


 ラルフは、アーノルドの顔を知らないようだ。


(どういうことなの……? 彼は私が知っているアーノルドじゃないわ)


 過去のディアの婚約者は、金髪碧眼の王子様だった。目の前のアーノルドとは、顔も違うし声も違う。ただ、赤い髪のアーノルドはウソをついているようには見えない。


 この『アルディフィア戦記』の小説の世界では、魔法というものが存在しない。ただし、神々の加護を受けた者は、奇跡とも呼べるような不思議な力を操ることが出来るという設定だった。実際、ディア自身も神の加護を受けて、前世の記憶を思い出し、好意を持っている人の心を聞くことができている。なので、不思議なことが起こるのは、ほぼ全て神のしわざだ。


(ということは、アーノルドも神の加護を受けているの?)


 その時、ディアの頭の中で不思議な声がした。


 --時が戻っても、お前はまたこれが欲しいのか。


 ラルフでもアーノルドでもない、しわがれた男の声。


 突然、座っていたディアの足元で激しい風が巻き起こり、スカートがめくれ上がった。ディアはとっさにスカートを手で押さえた。足首に冷たいものが這うような感触がして見ると、ディアの足首を鋭く長い爪を持った異形の手がつかんでいる。


「きゃあ!?」


 悲鳴と共に風が収まりスカートがゆっくりと降りてきて、元の位置に戻った。アーノルドは目を大きく見開いていた。


 --ぱ


(ぱ?)


 アーノルドの黄色い瞳が気まずそうに横に動いた。


 --ディアのパンツが見えそうで、見えなかっ……いや! 見たいとか、そんなっ! そんなことは……でも、ディアの足は見えちゃった……。


 少しずつアーノルドの頬が赤く染まっていく。


 --ディアに謝る? いや、でもパンツは見てないし……。


 本を胸に抱えながら恥ずかしそうにするアーノルドに、ディアは『やめて、そんな純粋そうな顔して、パンツを連呼しないで!』と叫びたかったがそこはグッとこらえた。


 アーノルドは勢いよく立ち上がると、赤い顔のまま「ま、またね!」と言って走り去った。


(そこまで恥ずかしがられると、私まで恥ずかしくなってきた……)


 このままここに座り込んでいても仕方がないので、ディアが立ち上がるとラルフが近寄ってきた。


「クラウディア様、パーティ会場に戻りますか?」


 ディアが頷くと頭の中にラルフの声が聞こえてくる。


 --……白かぁ。


 ラルフにはバッチリと見えてしまっていたようで、ディアは恥ずかしさのあまり両手で自分の顔を覆った。


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