女神のお話(03女神の見る夢)
※アルディフィア視点なので、原始の神々との善悪が逆転しています。
※あと、神様の数え方って一柱、二柱なんですって。勉強不足ですみません、 ありがとうございます!!
気がつけばアルディフィアは、見知らぬ空間に漂っていた。側で眠っていたソウレの姿はどこにもない。
「ここは……?」
白い空間からまた別の次元に飛ばされてしまったのだろうか? そんなことを考えていると、急に目の前にどこかで見たことがある景色が広がった。
人の子が住まう大陸とは、明らかに風景が違う。
「こ、ここは……私が生まれた場所」
過去に植え付けらえた恐怖が蘇り、アルディフィアの身体は小刻みに震えた。
アルディフィアが生まれた場所は、巨大な神の屍が大陸になっていた。屍になってもその力は強大で、大陸のあちらこちらから自然に小さな神々が湧くように生み出されていた。
屍から生み出された神々の中で、特に力の強い三柱の中の一柱が、ある日、こんなことを言い出した。
「増えすぎたな。少し間引くか」
その言葉に他の二柱は、何も意見を言わなかったため、その日から力の強い神が力の弱い神を狩り始めた。
生まれたばかりの力のない神々が、塵芥のように殺されていく。アルディフィアも狩られる側の神だった。毎日、強い神々から逃げ隠れ、震えながら過ごしていた。
力の弱い神々は、その大陸から逃げ出すしか生きる道は残されなかった。命からがら逃げのびた先で、人の子と共存する神々が住まう別の大陸を発見した。
しかし、『共存』とは名ばかりで、巨大な力を持った神々に人の子は翻弄され虐げられていた。
アルディフィア達は、哀れな人の子たちに自分たちの姿を重ねた。そして、長き戦いののち、人の子を苦しめる邪悪な神々をその大陸から追い出すことに成功した。
その戦い際に、たくさんの同胞が争いのない平和な楽園を手に入れることを願い、己の命をかけて時を巻き戻し消滅した。
生き残ったアルディフィア達は、これからは決して争わず、そして、人の子を虐げず共存していこうと誓い、ようやく真の楽園を手に入れた。
それなのに、今、アルディフィアの目の前には、あの恐ろしい始まりの大地が広がっている。
「どう、して……?」
死にもの狂いで逃げ出したはずなのに。
「い、いや……怖い! 狩られたくない!」
――ぃ。
――おいっ!
「おいっ! フィア、起きろ!」
アルディフィアの目の前に、急にソウレが現れた。何が起こったのか分からない。
ソウレに「うなされていたぞ、大丈夫か?」と言われて、ようやくアルディフィアは、自分が眠り悪夢を見ていたのだと気がついた。
【別に読まなくても良い設定】
実際のところ原始の神々は、人の定めには極力関わらないようにしていた『人を見守る神々』でした。
人に崇め奉られていましたが、人の世に介入することがほとんどなく、ときおり、フラリとお祭りに現れて一緒にお酒を飲んだり、自分を信仰する信者たちに少しだけ神託や加護を授けたりするくらいの存在で、自然災害や流行り病などから多くの人を助けたり、人々を直接導くようなことをしたりはしませんでした。
なので原始の神は、人を苦しめることはなかったのですが、人を積極的に助けることもしなかったので、助けてもらえない人々を哀れに思ったアルディフィア達は、原始の神を邪神として大陸から追い出しました。




