エイダとラルフの恋愛(06奇跡を永遠に)
【ラルフ視点】
馬車内で予想外のことが起こり、エイダとお試しで付き合えることになった。街に着いたら、エイダとの距離がぐっと縮まり、いつの間にか手をつないで街を歩いている。
「ラルフさん、これ食べましょうよ!」
エイダはニコニコ笑いながら、ラルフの手を引く。
(幸せすぎる……え? 俺、今日、死ぬの?)
あまりに都合の良い展開に、己の死期を感じていると、エイダが「つまらないですか?」と不安そうな顔をした。
「ごめんなさい。私、お父様以外の男の人とお出かけしたことがなくて……」
「あ、俺も妹以外の女性と出かけたことないです。あと、つまらなくないです! その、すごく楽しいです!」
そう伝えるとエイダは、安心したように笑ってくれた。
(かわ、可愛いっ!?)
妹と出かけると『あれ買って。これ買って』と散々いろいろ買わされた挙句、ラルフが荷物を全部持っているのに、なぜか妹が『あーあ、疲れたぁ』と不機嫌そうな顔をする。
そんな妹とは違い、エイダはニコニコしながら「はい、これラルフさんの分」と言いながら、露店で買った焼き鳥を一本ラルフにくれた。
「あ、俺が払います!」
そう言うとエイダは「えっ? いいですよ。私が食べたかったので」と言い、お金を受け取ってくれない。
(エイダさん、しっかりしている! ものすごくしっかりしている! 好きっ!!!)
エイダにならいくらでもおごりたいのに、おごらせてくれないので逆にモヤモヤしてしまう。
(今日、付き合えたばっかりだけど、俺はエイダさんと結婚したいっ!)
もうエイダ以外考えられない。
**
(って、あのとき思ったんだよなぁ……)
ラルフは、王宮騎士のみが身につけることが許された白銀の鎧に身を包みながら、昔を思い出していた。
エイダとお試しで付き合うようになってから、『お試し』が取れるようにラルフは必死に頑張った。そのかいあって、エイダと本当の恋人になれたが、愛するエイダには、王妃になったクラウディアの侍女になるために、ペイフォード公爵家の分家と養子縁組をするという話が持ち上がった。
(あの時、エイダは俺のために、クラウディア様の侍女になることを、あきらめようとしてくれていたけど……)
エイダには好きなことをしてもらいたいし、いつでも幸せそうに笑っていて欲しかった。だから、侍女になるように強く勧めた。その結果、今のエイダは公爵家から輩出した侍女としてクラウディアに仕えている。
そのせいで、これまで以上の身分差になってしまったが、どうしてもエイダを諦めきれず、ラルフはすぐにエイダの後を追って王宮騎士団の試験を受けた。
奇跡的に試験に合格すると、クラウディアの兄ベイルが推薦してくれたおかげで、クラウディアの専属護衛騎士に抜擢された。
王妃になったクラウディアの側には、侍女になったエイダがつき従っている。その二人を命懸けで守るのが今のラルフの仕事だ。
同じ職場なので、仕事中にもエイダと顔を合わせることができるのが嬉しい。今もすれ違ったエイダと視線が合った。ニコッと微笑みかけてくれたエイダに、ラルフは微笑みを返す。
(今日こそ、エイダに求婚するぞ!)
あの日、奇跡が起こってエイダと付き合えるようになった。この奇跡を一生のものにするために、ラルフは決心した。
その日の夜、ラルフはエイダを王宮内の庭園に呼び出した。
(エイダ、俺と結婚してくれ! いや、俺と結婚してください! 一生幸せにします! ……よし、これで行こう!)
「ラルフ、どうしたの?」
「わぁ!?」
月明かりに照らされたエイダはとても美しかった。出会ったころの無邪気さやあどけなさは、時と共に洗練された上品さに変わっていったが、エイダの笑顔はあの頃と何一つ変わらない。
(可愛い……)
エイダをじっと見つめると、エイダは「何かあったの?」と不安そうな顔をする。
「エイダ、俺と結婚しぇ、してください!」
(噛んだっっ!!!)
大事なところで噛んでしまい絶望したが、エイダは嬉しそうに自身の胸の前で両手を合わせた。
「ちょうど良かったわ!」
「え?」
「私も、もうそろそろラルフの奥さんになりたいなって思っていたの」
そう言うと、エイダは可愛らしい笑みを浮かべてくれた。
【リクエスト番外編②】END




