①ディアにデロデロに甘やかされるときのアーノルドの心の声
※WEB版の番外編になります。
※リクエストの募集は終了いたしました^^
【アーノルド視点】
ディアの柔らかい手のひらが、アーノルドの頭をゆっくりとなでた。
アーノルドは、優しい微笑みを浮かべるディアの顔をみつめながら『誰かに頭をなでてもらうってこういう感じなんだ』と思った。
(嬉しいけど少し恥ずかしいような不思議な気分だ。それにすごく気持ちいい……)
あまりに心地好くてアーノルドは目をつぶり、ディアの温かい手に身を任せた。
以前、ディアに「王宮で頑張っているアーノルドを、私がデロッデロに甘やかしてあげるね!」と言われてから、その言葉の通りアーノルドはディアに甘やかされまくっている。
ディアは、会うたびに「アーノルド、大好き愛してる! いつも頑張っていてえらいね」と褒めてくれる。
そして、今日もディアは「アーノルド、ダンスがすごく上手くなったね」と褒めてくれた。
ディアの手のひらがアーノルドの頭から離れてしまった。アーノルドが、目を開くとエメラルドのように美しい瞳がこちらを見つめている。
「ごめんね、つい頭をなでちゃった。嫌だった?」
(ディアがすることで、嫌なことなんて一つもないのに)
それなのに、ディアはいつもアーノルドの気持ちを聞いてくれる。
「嫌じゃないよ。ただ……」
「ただ?」
「初めて人に頭をなでられて、ちょっとだけビックリしてしまって。その、すごく嬉しかった……」
ディアは「アーノルド……」と呟いたあとに、アーノルドの手を両手で包み込むと「これからは、私がいっぱいなでるからね!」と言ってくれた。
ディアと出会ってからは、『僕だけこんなに幸せで良いのかな?』と思ってしまうくらいに世界が優しく輝いて見える。
今だってディアは王妃教育の合間をぬって、アーノルドの自室に遊びに来てくれていた。
(ディアと二人きりって、本当にドキドキする……)
二人きりといっても自室の扉の前には、何かあればすぐ駆けつけられるように、護衛騎士やメイドたちが控えている。監視されているようで窮屈に感じるが、責任ある立場になってしまったので、それは仕方がないと受け入れている。
アーノルドが、自身の心臓の音がうるさすぎてディアに聞こえてしまうのではないかと不安になっていると、ディアは「アーノルド、その服苦しくないの?」と言いながら少しだけ首をかしげた。
そのしぐさがとても可愛くてみとれてしまっているうちに、ディアがアーノルドの上着に手をかける。急にディアにふれられてアーノルドの心臓が大きく跳ねた。
「ボタン、外すね」
首までつまった服を着ていると、ディアは「私と二人でいるときくらい、楽にしてね」と言いながら、いつもこうしてボタンを外してくれる。
ディアの白い指がアーノルドの服のボタンを外していく様子をみていると、ついいけない想像をしてしまい顔が赤くなってしまう。
ディアから意識をそらすためにアーノルドは目をつぶった。そうすると、今度はすぐ側のディアから甘い香りが漂っていることに気がついてしまいさらに鼓動が速くなる。
(実はこれをしてほしくて、ディアが王城に来るときだけ、わざと窮屈そうな服を着ているなんて……。絶対にディアには言えない!)
ディアに世話を焼いてもらえるのが嬉しくて仕方がない。
アーノルドの上着のボタンを外したディアは「これで良し」と満足そうだ。
「あれ? アーノルド髪が少し乱れているよ」
「えっと、そうかな?」
ディアに鏡の前に座るようにうながされた。言われるままに座ったアーノルドが、鏡越しにディアを見ると、ディアは引き出しからブラシを取りだしている。
「アーノルドの髪って、フワフワサラサラですごく手ざわりがいいのよねぇ」
髪の毛をブラシでとかれると、頭をなでられるときとはまた違った気持ち良さでうっとりとしてしまう。
「アーノルドみたいにやわらかい髪の毛って、たしか『猫っ毛』っていうよね?」
「……猫?」
鏡越しにディアをみると、ディアは「うん、猫っ毛って言わない?」と聞いてきた。
(はっ!? もしかして……ディアって僕のこと、ペットの猫か何かだと思っているんじゃ……?)
そう考えてみると、思い当たることがたくさんある。頭をなでたり、髪をブラッシングしたり、会うたびに褒めてくれるのも猫だと思うと納得できる。
(えっ、どうしよう……。僕は猫じゃ嫌だ)
ディアにお世話をしてもらうのも、甘やかされるのも嬉しすぎて幸せだった。
(でも、僕は猫じゃなくて、ちゃんと男としてディアに好きになってもらいたい!)
大好きなディアを守れる強くてカッコいい男は、きっとディアに甘やかされて喜んだりはしない。
(そうだよ! 逆に僕がディアを甘やかして、うっとりさせるくらいの男にならないと!)
覚悟を決めたアーノルドは、ディアを振り返った。
「ディア! これからは僕が……」
ディアの右手に耳かきを見つけて、アーノルドは静かに口を閉じた。
「アーノルド、今日は耳掃除の日だよ」
「……あ、う……」
ディアはソファーに座ると自分の膝を軽く叩いた。耳掃除の日はディアに膝枕をしてもらいながら、耳掃除をしてもらえるという最高に幸せな日だ。
まるで昆虫が甘い蜜に誘われるように、アーノルドは、フラフラとソファーに近づいた。
(はっ!? だ、ダメダメ、ディアに甘やかされるんじゃなくて、僕がディアを……)
アーノルドが心の中で葛藤していると、ディアに「耳掃除、いや?」と少し悲しそうに聞かれて「嫌じゃないよ!?」と間髪を容れずに返事をしてしまう。
アーノルドは、慌ててディアの隣に移動し、ディアの膝に頭をのせた。
(……う、くっ……。や、やわらか……。それにディアのすごく良い香りが……)
頭の芯がクラクラしてしまう。
ディアに丁寧に耳掃除をされると、もう全てがどうでもよくなってきた。
ディアに「ねぇねぇ、気持ち良い?」と聞かれて、うっとりしながら小さくうなずくと「あ、動いたら危ないよ」と頬に手を添えられる。
(も……僕は、猫で良い。一生、ディアのペットでいいです……)
こんな幸せな日々が続くなら、猫でもペットでもなんでも良いと思ってしまった。
いつの間に耳掃除が終わったのか、ディアがアーノルドの顔を覗き込んでいた。夢見心地から急に現実に戻ってきたが、目の前に広がる現実も幸せすぎて何がなんだかもう分からない。
ディアは膝枕をしたまま、アーノルドの二の腕辺りをさわった。
「ディア? えっと?」
アーノルドが戸惑いながらディアを見上げると、ディアは眩しいほどの笑みを浮かべる。
「アーノルド、またたくましくなってきたね! 前から素敵だったのに、さらにどんどんカッコよくなるからドキドキしちゃうな」
恥ずかしそうに頬を染めながらディアはそんなことを言ってくれる。膝枕から起き上がったアーノルドは、ディアの手にそっとふれた。
「それは僕のセリフだよ。ディアは、会うたびに綺麗になっていくから、僕の心臓がもたないよ」
ディアは赤い顔のまま嬉しそうに微笑んでくれた。その可愛らしい笑顔を見ながら、アーノルドは、『良かった……ペットの猫じゃなかった!!!』と、密かに喜びをかみしめた。
【リクエスト番外編①】END




