34 クラウディア=ペイフォードの生涯
美しく凛々しい王子様との結婚式という、誰もが羨むこの場で、一番幸せな花嫁は満面の笑みで微笑んでいた。目の前に広がる神殿の荘厳な階段を上りきると、そこには愛おしい人が待っている。
なぜなら、階段を上った先には、この国の王位継承者、アーノルド=ウィルステンホルムが待っているからだ。そこに行けば、アーノルドとディアは結婚することができる。
階段の両脇には、花嫁を祝福するために、花かごを持った未婚の女性達が並んでいた。その中には、エイダや公爵家のメイド達の姿もあった。彼女たちは白い花嫁ドレスに身を包んだディアを見つめ、「お綺麗です」「お幸せに」と涙ぐみながら微笑んでいる。
(ようやく、アーノルドと結婚できるのね……)
14歳で婚約してから、2年の月日が経っていた。16歳になったディアは、また花嫁衣装に身を包んでいた。しかし、過去のディアとはまったく違って、ディアの心はアーノルドへの愛で満ちている。
階段の途中で転んでしまわないように、ドレスもベールも短めに作ってもらった。階段を上り切った先で、純白の衣装に身を包んだアーノルドが微笑んでいる。
神官が夫婦の誓いの言葉を述べた。「誓います」とそれぞれに応えると、視線を交わし微笑み合う。
アーノルドが小さく呟いた。
「これでずっと一緒だね」
「うん、ずっと一緒ね」
アーノルドが顔を近づけ、誓いのキスをする。アーノルドからキスされたのは、これが初めてのことかもしれない。
(いつも私からしてたから、少し新鮮な気分……)
こうして、公爵家の令嬢として生まれたクラウディア=ペイフォードは、16歳でアーノルドと結婚し、アーノルドが王位を継いだ後は、王妃として常に彼を支え続けた。
ディアはいつもアーノルドに「私は幸せよ」と囁き、周囲からもとても愛され、生涯笑みを絶やすことはなかったという。
おわり
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
この次は、あとがきなので、読みたい方だけどうぞ。
あろがきの次は、『リクエスト番外編』や『コミカライズ記念SS』になります^^




