表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/73

11 神話のお話

 ディアが熱を出して寝込んでから、父のディアを讃える脳内ポエムと、兄の過保護がさらにひどくなった。


(熱が下がってから一週間。もう元気なのに部屋から出してもらえない……)


 仕方がないので、ディアは父に「本が読みたい」とおねだりした。今までのような子ども向けの本ではなく、この世界の神話や神様についての本が読みたかった。


(アーノルドに付きまとっている、危ない神様について調べなきゃ)


 父はすぐに取り寄せてくれた。大量の本がディアの部屋に運び込まれている最中、父の脳内ポエムは絶好調だった。


 --ああ、ディアは妖精のように愛らしいだけでなく、こんなに難しい書物が読みたいだなんて。美貌と知力を兼ね備えた君のその姿は、女神アルディフィアより神々しい。


「お父様」


 声をかけると父が無表情にディアを見た。ただ、普段より少しだけ眉毛が下がっている。


(お父様って、よく見ると嬉しいときに、少しだけ眉毛が下がるのよね)


 一見、冷徹に見える父もよく観察すると、感情の動きが見えるようになってきた。


「ありがとうございます。お父様、大好き」


 ディアがぎゅっと父の腕に抱きつくと、父の冷たい瞳はそのままで、眉毛がさらに少し下がった。父が部屋から去ったあと、山と積み上げられた本を一冊手に取り、パラパラめくってサッと目を通す。14歳のディアには難しすぎる本だったが、前世の本好き社会人からすれば理解ができる内容だった。


(まぁね、前世の記憶から、だいたいアーノルドに憑いている危ない神様の正体は予想ができてるんだけど……)


 アーノルドの側にいるのは、おそらくアーノルドの母の故郷で祭られている異教徒の神だ。そして、その神のことを天界では『古代の邪悪な神』と呼んでいたような気がする。


(『古代』ということは、天界の神々がこの土地に来る前から、この土地にいた原始の神ってことでしょ?)


 元からその土地にいた神に戦を仕掛け、その土地から追い出してしまうという話は、実は神話では良くある。そして、戦に負けて追い出された神々は、後に邪悪なものとして語られることが多い。


 ディアの予想通り、この世界の神話の中に、『巨大な力で人々を苦しめる邪神を南に追いやり、新たな神々によってその土地に平和が訪れた』と書かれていた。


(ここまでは私の予想通りね)


 あとは、その古代の神が、元はどんな名前でなんの神だったのかを知りたかったが、どの本にもそれは載っていなかった。


(この国の本ではダメね。たぶん、南部地域まで行かないと分からないかも……)


 部屋から出してもらえないディアが、本を探しに南部地域まで行くのは不可能だった。


(うーん、アーノルドなら、何か知っているかな?)


 ディアは分厚い本を閉じると、アーノルドに会う方法を考え始めた。目を閉じて、小説の『アルディフィア戦記』の内容を思い出す。小説では、王になってからのアーノルドしか出てこないので、子どものアーノルドがどこにいるのかは分からない。ただ、狂王アーノルドは、なぜか神殿にいるシーンが多かった。神殿の美しいステンドグラスを背景に、その場にふさわしくない血生臭い会話を良くしていたので、ディアの印象にも残っている。


(神殿か……。神殿ならお願いしたら、連れて行ってもらえるかも?)


 ディアは部屋にお茶を運んできてくれたエイダに「ベイルお兄様に会いたいの。お兄様がお暇なときに、私の部屋に来てくれるようにお伝えして」とお願いした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ