高校生活6日(楽しい肝試し?)①
お読みいただき、ありがとうございます!
『肝試し編』開幕!
ガチのホラーにはならんと思う。
夕方、旅館の御夕飯はかなり豪華で、宴会場でみんなとワイワイと話しながら楽しく過ごした。
「茉央ちゃん、温泉まんじゅう食べた後で大丈夫?」
「うん、全然平気! 観光しているうちに消化しちゃたよ!」
「あの温泉まんじゅう美味しかったよね。帰りにおみやげで買っていこう」
確かにあれは美味しかったわ。孫たちに送っておこうかしら?
「諸君! 夕餉は楽しんだか!?」
食後にゆっくりしている中、梅先生が急に立ち上がる。
「この後はお楽しみの『肝試し大会』だ!」
「先生、肝試しってどこでやるんですか?」
「フッ! よくぞ聞いた。実はな……この旅館の裏にはさほど大きくない山があってな……」
聞くところのよると、この旅館の裏は支配人さんが所有の小さな山があるとのこと。
「その山の上に、小さな神社があるそうだ。そこまでは一本道で迷うことはほぼないので安全だ。問題は山頂の神社……」
ゴォ――――ン…………
「「「っ!?」」」
急にどこからか鐘の音が響く。
バチンッ!!
「「「きゃあああっ!!」」」
急に電気が消えて…………ボォ~と、梅先生の顔が光って浮かび上がる。
「その神社で……時々、人魂や幽霊が出るそうだ……」
ゴォ――――ン…………
「「「ぎゃああああああっ!!」」」
ぱちんっ! と、電気が点いた。
「おい、変公! 変な演出するな!」
浅井くんが電気のスイッチを点ける。
よく見たら、梅先生の近くから電気のスイッチの所まで『ピタ○ラスイッチ』のような、懐かしいカラクリが伸びていた。
いつの間に作ったのかしら? ドミノとか置いてあるわ……よく、誰にもバレずに設置できたわねぇ。ちょっと作動しているとこが見たかったわ。
『ゴォ――――ン…………ゴォ――――ン…………』
先生の携帯から鐘の音が。あんな着信音もあるのね。
「……と、まぁ、つかみはオッケーだな!」
梅先生、オッケーです。
「それでは全員、玄関へ行くぞ!」
やけに張り切った梅先生についていき、私たちは旅館の裏手側の山道入り口へ着いた。
「よし、男女に別れて『二グループ』にするぞ。智哉と田島、女子は三人!私は主催者だから参加はない!」
「いや、先生……そこは男女二人のグループで、先生も入れて『三グループ』じゃないか?」
「ともくんと一緒に行きたい! みんなで行こうよ!」
「肝試しは二、三人が基本だろう。本当なら一人ずつも楽しいが、それはさすがに危ないからな」
なるほど、安全第一ね。
でも……それなら女子だけも怖いのでは?
「二人以上なら、そこは男女混合の方が安全では?」
「甘いな、明乃くん。こいつらは組むのが決まっているから、二人なんかにさせたら朝まで帰ってこんぞ?」
「…………? 一本道ですよね? 迷ったりはないのでは……?」
「わざとコースアウトするのが出てくるからなぁ? なぁ、四人とも?」
「「「「……………………」」」」
……どうしたの? みんな、そっぽを向いたり、赤面したり、苦笑いしたり……そんなに肝試し苦手なのかしら?
色々と疑問もあるけど、とりあえず始めることにした。
ルールは簡単。
山頂にある祠に、梅先生が売店で買った『何か』があるそうなので、それを取ってこられるかというもの。
「私からのプレゼントだ。祠に判りやすくかごに入れて置いたから、各々持って来るがいい。それを商品とする!」
「珍しい……」
「峯岸先生、それって何ですか?」
「怪しい薬じゃないだろうな?」
「薬ではない。だが、秘密だ。ここでしか手に入らない『良いもの』だぞ!」
「お宝!?」
「もちろん、金一封相当の代物だ」
「よーし! 良いものなら、がんばろーね!」
「「「「おーっ!」」」」
みんな、俄然やる気が出てきたわ。
もしかしたら『お年玉』みたいなのとか? ふふ、それなら嬉しいわね。もう何十年ももらってないし。
子供の時は中身が重要だけど、歳を取ると中身が無くても可愛いポチ袋が嬉しいのよね。
誠さんが存命の時、孫たちにあげるために色々なポチ袋を集めていたのを思い出す。彼が亡くなった後も、それは捨てられずにコレクションのように仕舞っておいた。
帰ったら探してみようかな……。
「では最初は、智哉と田島! 行けっ!!」
「おう! 行こうぜ、智哉!」
「……何か、不安しかないんだけど」
懐中電灯を手に意気揚々と歩く田島くん。その側を不安げな表情で付いていく浅井くん。
「ともくん、頑張ってー!」
「ゆうくん、早く戻ってきてねー!」
二人はあっという間に、暗い山道の奥へ消えていく。
「さて……行ったか。よいしょっ……と」
先生が薬箱……に似せた箱を開くと、蓋の部分にモニターがあらわれる。
「……? 先生、これは?」
「あぁ、これは事前に山道のあちこちに置いておいた『見守りカメラ』だ。やはり生徒が心配だからな」
モニターには何個も区切られた、あちこちの場面が映し出される。
「えーと、なんでしょうか?」
「フフフ……もし、おかしな現象があった時に使えると思ってな。ある『映っちゃた系のホラービデオ』に、投稿して採用されると、賞金がもらえる……」
「賞金目当てかーい!!」
「まぁ、そう言うな足立。それにな、別に怪現象だけではないぞ。見てみろ、篠崎……」
「え…………?」
画面の一つ、浅井くんたちが映っている画像を大きくする。
~~画像~~
『うぉわっ!? 何でバナナの皮――――っ!?』
(勇斗に手を伸ばしながら転ぶ智哉)
『智哉!!』
(がしぃっ!!と力強く間一髪受け止める。完全に腕は肩から背中を抱き抱えている)
『大丈夫か?』
『わ、悪い……勇斗……』
(見つめ合う二人。顔の距離は僅か2cmほど)
※( )は脳内補正です。
~~~~~~
………………
何かしら……これはお風呂でも見たような…………
「エクストリームヘヴンフラーーーッシュ!!!!」
「美穂ちゃん!?」
「……あぁ、これは……そうなるね」
天に向かって叫ぶ美穂ちゃんは、とても恍惚とした表情で鼻血を滝のように流している。
足立さんが慣れた手つきでタオルを差し出した。
「ハイハイ、美穂。これで鼻押さえて」
「み、美穂ちゃん! 鼻血……鼻血が!!」
「ご……ごめん……毛細血管が瞬殺されたわ……フフフ……」
こんなに鼻血を流しているのに、美穂ちゃんはとても穏やかに笑っている。
若いのになんて満足しきった表情。長い人生でこんなに満ち足りることなんて何度もない。
凄い……悟りの域だわ。
「後日、風呂の映像とあわせて、編集したデータを送ってやろう……」
「あざま――――すっ!!!! コーチ!! 一生ついていきます!!!!」
「……やっぱり、録画してたのね」
「犯罪ではない、旅の記録だ。足立や明乃くんにも、旅の思い出として送ってやるからな」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「美穂とは別の編集にしてくださいね……」
ふふ、楽しみ………………ん?
ふと見た画面の端、私の“眼”は何かを映す。
「これ…………」
ザァ……と、血の気が引いていくのを感じた。
後日。坂城旅館 大広間。
椎丈「いやー、ここの料理旨いですねー」
咲間「そ、そうですね(もじもじ……)」
椎丈「どうしました?もしかして気分でも?(顔近付け)」
咲間「いや!何でも……何でもないです!!(赤面)」
椎丈「ふふ……もう、酔いましたか?」
咲間「…………そうですね、酔いました。あの……椎丈先生……」
椎丈「なんでしょう?」
咲間「あのっ……!!」
医院長「うぇぇぇ~~~いっ!!呑んでますか、皆さん!!!!」
一同「「「うぇぇぇ~~~い!!」」」
※本日、学会の旅行につき、全国から先生が集まっております。
椎丈「みんな、呑んでますね~。で?咲間先生、何ですか?」
咲間「な……何でもないです……お風呂行ってきます……」
椎丈「あ、私も行きます。ゆっくりしたいですし」
咲間「はい……(照れ)」
※続く。
続くんかい…………




