表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/28

高校生活6日(お風呂と卓球、ただそれだけ)

「良いお湯だったね~」

「そうだねぇ……」

「フルーツ牛乳が美味しいね……」


 お風呂あがり。

 ホールの近くの休憩室で、瓶の牛乳を飲みながら三人でまったりとしている。


 瓶の牛乳ってやっぱり美味しいなぁ。

 懐かしいし、パック牛乳より口当たりが良い。


「そういえば、梅先生は?」

「あ、あそこ」


「あ゛あ゛あ゛~……あ゛~……」


 大きなマッサージチェアでくつろいでいた。

 いいなぁ、私も後でやろうかな?


「ゆうくんと浅井くんは?」

「二人はあっちね」


 見れば、ホールの一角がゲームセンターになっていて、浅井くんと田島くんは何かの対戦ゲーム? をして楽しんでいた。


 ああゆうの、近所のスーパーにあったわね。娘がじゃんけんのゲームに夢中になっていたのを思い出すわ。



「よ゛~し゛、そ゛ろ゛そ゛ろ゛始゛め゛る゛ぞ~」


 梅先生、声がぶれて聞き取りにくいです。


「……ふぅ、体がだいぶほぐれたな。よし、そろそろ始めるとするか!」

「何をですか?」

「フン、予定を教えただろ? ほら、これだ!」


 巻物の予定表、次は…………『温泉卓球』ね。





 ゲームセンターの向こう、ちょっと広い場所に卓球台が二つ置いてあった。


「では、対戦はクジだな。これを引け」


 爪楊枝が六本、それを一斉に取る。楊枝の先に色がついていて、同じ色の人が対戦ね。


 私は…………赤だ。


「ふふふ、明乃ちゃん。この私と当たるなんて運の尽きね!」

「お手柔らかにねー」


 茉央ちゃんとだわ。

 この結果は……火を見るより明らか。


 これはただただ、楽しむのに徹するのが良さそう。茉央ちゃん運動神経良いもの。


「ほぅ。私と智哉。篠崎と田島か……。ちなみに、優勝者はこの後の観光とランチで、みんなに奢ってもらう権利を得ることにしよう!」


「ヒャッフーッ!! 温泉地グルメ!!」

「よし! やるわよ!」





 ピピ~! 100円ショップのホイッスルの音が響く。


 卓球台が二台なので、二試合ずつ行った。


「フッ! いくぞ、智哉!!」

「ただじゃ負けないからな、変公!!」


 おぉ~、浅井くんも負けてないけど、梅先生がものすごい身のこなし…………デスクワークだけじゃないのね。



「じゃあ美穂、いくぞ~! それ~!」

「負けないよ~! えいっ!」

「はははっ。とりゃっ!」

「きゃっ! やったな~!」


 素直に必死な浅井くんの隣では、美穂ちゃんと田島くんが実に楽しそうにピンポン中。

 こちらは背景にお花畑が見えるくらい、ほのぼのとしていて微笑ましい。




 ピピ、ピピピ~ッ!!



「峯岸先生の勝利~!!」


「フッハハハ!! 見たか、智哉!!」

「くっそ……もうちょっとだったのに……」


『梅先生 対 浅井くん』

 こちらは、梅先生の勝利で終わる。



「ゆうく~ん、それ~!」(お花、点描)

「やったな~。はははっ」(白鳩、キラキラ)


『美穂ちゃん 対 田島くん』

 こちらは、まったく勝負つかず。

 さっきから点が交互に入り、しかもラリーが一度に百回くらい続くので終わる気配がない。



「まぁ、あいつらは忖度が入るだろうし、まだ勝負は付かんな。ほら、次は足立と明乃くんだろう、やってしまえ」


「明乃ちゃん! ともくんの仇を討つため、私はこんなところでは負けないよ!!」

「私もがんばります!」


 …………………………。


 結果。


「弥生さん、ごめんね。まーちゃんは何事も全力だから……」

「ううん、絶対負けるだろうなぁとは思っていたから……」


「足立、貴様の力はこんなものかぁぁぁっ!! フッハハハ!!」

「ともくんの仇ぃぃぃっ!!!!」


 目の前では、梅先生と茉央ちゃんの血で血を洗う死闘(※あくまでイメージです。)が繰り広げられている。


 つまり、全力の茉央ちゃんに私はあっさり負けたのです。


「うぉりゃあああああっ!!!!」

「どぉりゃあああああっ!!!!」


 ビシュッ!! ドシュッ!! スバンッ!!


 ピンポン玉が飛び交う度に、私と浅井くんの髪の毛が風でゆれている。


 あのスマッシュを打ち返すのは無理だわ……茉央ちゃん、世界を狙えるんじゃないかしら?



 ――――――数十分後。


「明乃ちゃん、生チョコ食べる? ゆうくんと浅井くんも」

「食べる。ありがとう」

「お、ありがとう」

「ありがとう。美味しい」



「うぉりゃあああああっ!!!!」

「どぉりゃあああああっ!!!!」


 ビシュッ!! ドシュッ!! スバンッ!!


 ラリーが続く続く…………目が回りそうね……。


 試合は一進一退、ほとんど点も変わらず互角の攻防が続いている。


 さすがに、美穂ちゃんと田島くんも勝負 (?)を終えて四人で座って、試合の行く末を見守っていた。とりあえず美穂ちゃんの勝ちみたいだけど、次の試合は辞退を申し出てきた。


 なので、これが梅先生と茉央ちゃんの事実上の決勝。


「二人とも、そろそろお昼になるんだけど……」

「もう一度温泉入るなら、もうやめないとお昼たべられませんよ?」

「先生、もう引き分けにしましょう」

「まーちゃん、温泉町で饅頭食べに行こう」


「ぬぅ……はぁはぁ……仕方なし。止めるか、足立……」

「はぁはぁ……引き分けね。でも、この決着は別の日に……」


 二人は渋々、ラケットを置いてその場にへたり込んだ。


 満身創痍だわ。現代の若者が無気力なんて、誰が言ったのかしら? ものすごく全力だったわね。素晴らしいわ。



「もう一度、ひとっ風呂浴びていくか!」

「「「はーい!」」」


 この後、再び温泉に浸かり、みんなで温泉町を堪能した。


「良いお湯だったね~」

「そうだねぇ……」

「コーヒー牛乳が美味しいね……」


「みんな! 出掛けるよー!」

「「「はーい!」」」


 その後、みんなで浴衣を着て町のお店を回った。


 ふふ、温泉地ってみんなで歩くだけで楽しい。


 こういう所は昔とそんなに変わらない……誠さんと行った新婚旅行を思い出して、ほんのり懐かしい気持ちになった。









 ※おまけ 現代の温泉?


「…………昔はこんなの無かったわね」

「私も初めて見たわ……」


「これも美味しいよ! 美穂も明乃ちゃんも食べてみなって!」

「まーちゃん……これ、そんなに食べられるもの……?」

「うわぁ……俺はもういいかも……口の中、甘いやら()()()()やらで……」


「おぉ、種類が多いな! これだけで昼飯になりそうだ」


【温泉まんじゅう&温泉玉子! 食べ放題!!】


 最近の温泉地は色々あるのね……。


 黒や白の他にも、ピンクや黄色もある。

 若い人の好きな、スイーツバイキングってこんな感じかしら?


 ここで残りの一生分の饅頭を食べることになりそうだわ。


 茉央ちゃんは満足そうにしているので、その姿はちょっと和んでしまう。


 サービスの緑茶を濃いめに入れている時、落語の『まんじゅうこわい』という噺が頭の中を反芻した。



後日。温泉町にて。


『まんじゅう食べ放題!最高記録は500個!』


店主「まさかここまでとは……売上が伸びないから、自棄になってやってみたんだが……」

店主・妻「若い人って柔軟よねぇ……」


この温泉町では『食べ放題のまんじゅう』が人気です。



椎丈「お! 咲間先生、ここ最近流行りのまんじゅう食べ放題ですよ!」

咲間「そ、そうですね……(もじもじ)」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >瓶の牛乳ってやっぱり美味しいなぁ。 >懐かしいし、パック牛乳より口当たりが良い。 わかる( ˘ω˘ ) >ああゆうの、近所のスーパーにあったわね。娘がじゃんけんのゲームに夢中になっていた…
[良い点] まったり回……かと思いきや! 咲間先生&椎丈先生、お幸せに! ……不倫じゃないのか?という疑問にはそっと目を閉じて。 (この作品はフィクションです)
[一言] まさかのあとがき!!( ´∀` ) まーちゃんと梅ちゃんのmovieな方のピンポンやら少林な蹴球な(?)戦いも凄かったけど最後の最後で( ´∀` )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ