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陰陽百鬼  作者: Moi
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第六十三話 必殺技ってテンション上がるよね⁉︎

 そして2日後の夜8時半。いつもなら訓練をしている時間帯だ。

 でも、蒼からの申し出によって任務の前夜はしっかりと体を休めることになった。

 うーん、なんだかこんな時間にベッドの上にいるなんて久しぶりだな。

 それにしても、やっぱり固有陰陽術式は習得に時間がかかるんだな。

 この二日間、変わりがわりに桃さんについて固有陰陽術式の開発を手伝ってはみた。だが、結局完成にまでは至らなかった。

 コンセプトはしっかりしてはいるんだけどなぁー。やっぱり、想像力なのかな?

 そんなことを思いつつ、俺はまぶたを閉じる。

 そして、次にまぶたを開けば—

 「俺がいるってわけだな。」

 「だから、人の心を読まないでよ。ぬら。」

 意識はしっかりしているから、夢の中とは思えないな。だが実際、朝になって目を覚ますと体はしっかりと休めているのだから不思議だ。そこに頭の疲れまでないのだから、もう怖いまである。

 「さて、いよいよ明日が任務なわけだが…。何か不安なことがあったりしないか?」

 「なんでそんなカウンセラーみないな聞き方なんだよ。でも、そうだね、やっぱりその時に何も起こらないことかな。」

 実際、半年間何もなかったとはいえ、今までに何度も巻き込まれているし。

 数日前に猫に鬼界に連れて行かれたし、その犯人もわかっていない。

 「なるほどな。お前、巻き込まれやすい体質だったもんな。うつつでちょっかいを出してくるバカはいないと思うが、用心しておいて損はない。」

 巻き込まれやすい体質ってなんだよ。でも否定できないのも事実だしなぁ。

 何かの因果が働いているって言ってくれるほうが信じれるような気がする。

 「さて、今回の任務についてどう言ったものか聞いているのか?俺は全く聞いてないんだが。」

 「あー、確か地域信仰の祠の調査だって。なんでも、結界がほころびかけているらしい。」

 もともと、信仰の対象となっていた湖に祠を建てた。そこに陰陽師が悪さをした妖怪を封印した。

 その封印は地域の信仰を糧に持続するようになっているらしい。

 だが、地域の過疎化が進み信仰が激減したことにより、綻びが生じたらしい。

 今回の任務は封印の自動化と綻びによる周辺に異変がないかの調査。

 「地域信仰は想像以上に厄介だぞ。お前たちに任せるぐらいだから、そこまで切迫していないだろうが、人の想いというのは形になると手がつけられなくなる。」

 ぬらがこんなこと言うなんて珍しい。昔何かあったのかな?

 「多分、なんとかなると思うよ。任務については詳しく聞いているけど、まずい要素がなかったから。」

 「それならいいが。一応、俺にすぐに連絡できるようにだけはしておけよ。今までのお前を見ていると巻き込まれてもおかしくない。猫のこともある。警戒だけは怠るなよ。」

 「言われるまでもないよ。これ以上、桜が危険な目に遭うのは嫌だからね。」

 「……そうか。なら今日も組み手をしていくか?なんと、今回は殺意増し増しだぞ。」

 「いや怖いって。でも、組み手はお願いするよ。訓練が短くてエネルギーは余っていたからさ。」

 俺たちはいつも通り、距離を取り合い準備を始める。

 今回は殺意増し増しらしいから、本気で準備をしないといけないな。ぬらの場合、死の圧すらブラフに使ってくるからしっかりと判断しないと。

 ぬらが手を振ってる。準備できたみたいだね。

 ふーーー。集中していこう。

 そして、俺とぬらは一気に距離を詰め合う。

 ぬらの殴りや蹴りは、一撃でももらったら即終わり。この前なんて意識が飛んだ。

 だから、ぬらの攻撃は避けるか捌く。そして隙ができたら攻撃を混ぜる。

 やっぱり、こっちの攻撃が掠りもしない。ぬらの攻撃はギリギリ見えているけど、いつ当たってもおかしくない。

 「うん。ここまでできればいいだろう。かなた一旦止まってくれ。」

 「え?あ、うん。」

 ぬらが組み手の途中で止めるなんて珍しい。どうしたんだろう?

 「もうそろそろ組み手以外のこともしようと思ってな。及第点ではあるが、そこまでできれば、ある程度の人間相手なら勝てるだろ。」

 「それがね、蒼や茜さんには勝ててないんだよ。あの二人、化け物だよ。」

 「あの二人、只者じゃないから気にしなくていい。例外は常にあるものだ。そんなことより、次の段階の訓練に移るぞ。お前、近距離以外の戦い方について考えていただろう?」

 あ、忘れていた。術式自体が籠手ガントレットだからって考えてたような…。

 その話を持ってくるってことは、何か違う戦い方を教えてくれるのかな?

 「この前、俺が使えと言った技覚えているか?」

 「ああ。えっと確か『黒炎の華』だったよね。でも、それがどうしたの?」

 「あの技はな、俺の必殺技を極小化したものなんだよ。それをお前に教えようと思ってな。」

 ひ、必殺技⁉︎何それ、とてつもなくテンションあがるんですけど!

 必殺技ってやっぱり、「ゴムゴムのー」とか「かーめーはーめー」とか「月牙○衝」とかだよね!

 男の子が一度は夢見るあれだよね⁉︎

 「なにそれ、早く知りたい!教えて教えて!」

 「まぁ、そうがっつくな。これは、お前が俺に可能性を見せてくれたからこそ教える。それに教えるとはいえ習得できるかは別だぞ。」

 えー、なんだ。完璧に習得できますよってことじゃないんだ。まぁ、でも、ぬらのことだし何か考えはあるんだろう。

 「それじゃまず、『黒炎の華』についての話からだ。」

 「簡単によろしくお願いします。」

 「わかってるよ。まずは——」

 そこからはぬらの説明が始まった。

 『黒炎の華』についてだ。

 この前にも説明があった通り、相手の力を吸収して炎を大きくするという解釈であってはいた。

 だが、少し違うのは炎の領域・・の拡大だ。

 ぬらは炎という極小の領域を相手に与え、それを拡大することで相手を炎に突いでいた。

 領域というのはいわゆる自分の世界の生成だとぬらはいっていた。

 領域内に相手を引き込めばほぼ100%で勝てるらしい。

 「それって、俺の術式の氷結領域アイスワールドと何が違うの?」

 「氷結領域はうつつと乖離している訳じゃないだろう?俺のいう領域は完璧な密封された世界。しかも、そこの世界は領域生成者が許可しない限り出入りすらできない。」

 「それって呪術○戦でみたことあるような気がするんだけど。」

 「それがな、領域は完全な世界の生成。あの漫画と違って必中になったり、デバフをかけれる訳じゃない。」

 「それって何が強いの?」

 「だから言ったろう、完全な世界の生成。つまりその世界は生成者の思いのまま。相手を自分の土俵に強制的にあげることできる。それだけじゃない、相手に世界そのものをぶつけることができる。」

 え、どういうこと?世界を丸々ぶつけるって想像もできないんですけど?

 「見せてやりたいが、今の俺には使えん。だがお前は一度経験しているはずだぞ。ほら、晴明のやつがお前に過去の世界を見せただろう?」

 「え、あれが?あれって過去の映像じゃなかったの?」

 「魔法陣があっただろう?そこに晴明が作った過去とよく似た世界の情報が刻まれていたんだよ。それを脳に流すことやって世界を体験したってことさ。」

 なに、それ。あれが世界の生成?いや、領域か。あれが攻撃にも使えるってこと?

 領域を見ただけでも精神的に辛かったのに、これを攻撃に活かせるって相当殺意が高い。

 「なんとなく領域についてはわかったけど、それって俺にも使えるものなの?妖怪特有の技とかではなく?」

 「俺の職業は『氷結師』だし、凍らせることはできる。でも、世界の生成なんてこと絶対にできない。」

 「可能性を見たっていったろ。お前の技に氷結領域アイスワールドがあるだろう?あれが領域の初歩の初歩の段階のものなんだよ。」

 え、あれが?

 でも、一定の凍った地面を張り巡らせて自動で攻撃する技だよ。なんで自動で攻撃するのかはわからないけど。

 「普通、自動で攻撃するなんてことありえない。さらにいうと陰陽師が自分の領域を広げること自体できない。」

 「ならなんで、俺にはできるんだよ?普通じゃありませんってこと?」

 「お前が普通じゃないかは置いておいて、お前の身体の冷気に対する適性はかなり高いぞ。」

 冷気に対する適性?何それ?

 というか、俺が普通じゃないかは置いておかないで!

 「なんで、そんなことがわかるんだよ?」

 「いや、昔の俺の側近にお前と同じ感じのやつがいてな。そいつはとてつもなく冷気に強かったんだよ。」

 「あー、なるほどってならないよ。そんな曖昧でいいの?」

 「実際、職業も『氷結師』だし合ってると思うぞ。」

 うーん、まぁぬらが言うなら合っていそうだなぁ。

 冷気に対する適性か…、考えても仕方がないけど少し気になっちゃうよね。

 「それで、どうする?次のステップに行くか?」

 「聞くまでもないよ。桜を守る力が手に入る可能性があるなら挑戦する価値はある。」 

 「なら、しっかりとついてこいよ。」 

 そこからは組み手とは一味も二味も違う訓練が始まった。

 領域、絶対にモノにして見せる。

 

 

 

誤字脱字などありました、連絡していただけると嬉しいです!

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