第二十八話 戦闘スタイル
俺—出雲かなたと桜は彗嗎さんに促され、またその場に座る。
「かなた、どんな戦闘スタイルか楽しみだね!」
「う、うん。そうだね。」
頭の中に守りたい桜よりも後にいる自分を想像してしまう。
やっぱり不安だ。
気を紛らわすために彗嗎さんの方を見る。
彗嗎さんは俺たちを座らせてすぐに『うーん…。』と唸りながら悩み始める。
それにしても悩み方が特徴的だな。
左手の人差し指指でデコの部分を何度も突きながら、右手の人差し指で空中に何か書いている。
そして、左右の人差し指が動きを止める。
「うん、やっぱりこれかな。かなたくんと桜さんは。」
彗嗎さんは解答を出したらしい。
俺や桜がどのような戦闘スタイルなのか楽しみだ。
「まずはレディーファーストで桜さんから。桜さんは中衛からの前衛の援護かな。前衛でもいけるけど、その場合だと君の才能を完全に活かせなくなるね。」
す、すごい…。先生に聞かされてたとはいえ、こんなに的確に助言できるなんて…。
次は俺の番か。楽しみでもあるしよく分からない不安が少しあるなこれ。
「さて、次はかなたくんだね。」
名前を呼ばれただけでドキッ⁉︎とする。
「君は前衛、中衛、後衛、全て対応できるね。でも、あえていうなら前衛かな。『才能がある』ってのもあるけど、君の心が『前に出ていたい』と言っているからね。」
そこまで読めるのか…。
俺の心は『前に出ていたい』と思っている。
大体察しはついていたけど、直接言われると恥ずかしいな。
図星をつかれた人ってこんな感じなのかな。
「僕がいったことは参考程度に考えてくれればいい。最終的に決めるのは君たちだからね。」
彗嗎さんは笑いながら言った。
桜は聞いた後はすぐに決められたようだな。
今なんて笑いながらガッツポーズしてるし。
俺は…まだ考えようかな。ぬらにも相談したいし、明日は日曜日で休みだし考える時間もあるしね。
俺がそんなことを考えていると彗嗎さんは胸ポケットからメガネを取り出し、素早く手で髪をボサボサにする。
「よし!これで紅蓮から頼まれたことはおしまい!次は僕の個人的な事する!」
彗嗎さんはさっきまでとはまるで別人のようになる。
アニメに出てくるThe研究者のような見た目。三日間ぐらい研究所にいましたって言われても信じる見た目だ。
「かなたくん、咲良さん!君たち本当にすごい明力の色をしているね!こんな色は初めてだよ!」
え?明力に色とかあるの?
しかも俺と桜、両方初めての色?
何を言っているかわからないな…。これも彗嗎さんの職業のおかげなのかな?
「あ、言ってなかったね。僕の職業は『見る』ことに特化していてね。相手の弱点を言い当てることも出来る。」
弱点を見れるなんて…、それ反則でしょ。
「そんなことより!君たちのことをもっと調べたい!特にかなたくん!君は本当にすごい!とりあえず二人ともこっちに来て!」
俺たちは言われるがまま彗嗎さんについて行く。
先生の方を見ると「あぁ、また始まった」って言いながら呆れてる。
「かなた、桜、二人とも頑張れよ。そいつは研究が終わるまで強制的に付き合わされるぞ。今日の夜までには終わるだろうから、家には連絡入れといてやる。」
「え?!先生それ本当ですか!」
「わかっていたなら、なんで止めてくれなかったんですか!」
俺と桜が口々にいっていると、彗嗎さんが服を引っ張る。
「さあ、研究の始まりだよ!君たちはまさに『未知』!知識の原石なのだから!」
この時の彗嗎さんの引っ張る力は、まるで車で引っ張られてるかのように錯覚する。
俺たちはその力に抗えるわけはなく…。
「さあ!真理を追求しよう!」
これ、本当に今日中に帰れるのか心配ならなってきた…。
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