第十九話 商店街探索
桜と別れ、家に着いた俺—出雲かなたは夜まで時間があるので近所の商店街に足を向けた。
今回は明力操作をせずに自分の足でゆっくり向かっていた。
桜の木が連なる川沿いを歩きながら商店街に向かう。
春だけあって、桜が満開だった。うん、すごい綺麗だ。
俺はそのまま桜の花道を通り商店街に着いた。
そこは多くの人たちで賑わっており、肉屋に魚屋、豆腐屋に喫茶店など多くの店が並んでいた。
さて、一通り回ってみるか。
俺は商店街の探索を始めた。
一通り回り終わり、初めに見かけた肉屋に寄っていた。ここのコロッケの匂いがとても良く、きてすぐに気になっていたからだ。
「コロッケを一つください。」
「はーい、60円になりまーす。」
出てきたのは中学生くらいの女の子だった。この店の子かな?
「私の店は揚げたてを売るようにしてるから、少しだけ待っててください。」
俺は60円を払い、コロッケが揚がるのを待っていた。
「きゃー‼︎ひったくりよー!誰かそいつを捕まえてー!」
後ろから大きな声がし、振り返ると倒れ込んでいる女性が目に入った。
俺の身体は自然と動いていた。
距離はそう遠くはないか…。明力を意識して、操作し身体能力を上げる。
そして一気に踏み込む!
俺はあっという間にひったくり犯に追いつき、足を引っ掛け倒れ込んだところを押さえ込んだ。
沈黙が少しの間続いた。そして、
「うおぉぉぉぉ!」「すげー!なんだ今の動き、まるで見えなかった!」
後ろからは大喝采。
その後ひったくり犯を警察に引き渡し、ひったくりの被害者は何も取られずに済んだ。本当によかった…。
被害者の女性はすごく頭を下げていたけど、そこまで感謝されることはしていないしな…。
俺はこういうの慣れてないから、とりあえず上手く誤魔化しそこから逃げた。
俺はその帰りにコロッケを取りに肉屋に寄って行った。
「お兄さん、すっごいね!あんな動きアニメでしか見たことないよ!」
そんなにすごいのか…、明力操作。
次からは人がいないことを確認してから使おう…。
「そんなことないよ。俺に出来ることをしたまででだから。」
「それでもすごいよ!あ、コロッケ準備するからちょっと待ってて!」
そういうと女の子は奥に入っていった。
それから数分、紙袋を持った女の子が出てきた。
「はいこれ!コロッケ5個ね!」
「俺は一個しか頼んでないよ!」
「これはこの店からのプレゼントってことで受け取って。これからこの商店街の有名人になる人にはご贔屓にして欲しいってのと、商店街の治安を守ってくれたことのお礼も兼ねてね。」
そういって女の子は紙袋を渡してきた。
なら、お言葉に甘えていただこう。
「ありがとう、美味しくいただくよ。」
「私は村松楓!これからもこの商店街をよろしくね、お兄さん!」
「お兄さんはやめてくれないか?俺は出雲かなた。かなたでいいよ。よろしく、楓さん。」
こうして、俺の初めての商店街探索が幕を閉じた。
「今日は異様に疲れたな。やっぱり明力操作は人前でやらないようにしなきゃな。」
俺はベッドの上でだらけながら今日のことを思い返していた。
あの後家に帰り、夕食のおかずとしてコロッケを食べた。
60円とは思えない美味しさだったな。これは学校帰りに寄って帰るのもいいかもな。
それにしても、あの商店街は大きかったな。まだまだ探索しきれてないからな、次行くときは桜も誘っていこうかな。
とりあえず、今日は寝よう。ぬらに聞きたいことがあるしな。
俺は横になってすぐに意識を落とすのだった。
誤字脱字等が有れば報告していただけると助かります。