第十三話 歩み始めたもの
桜の意思を聞いて、理事長は陰陽師になるための説明をしてくれた。
「陰陽師になるために絶対必要なものがある。それは明力と呼ばれるものだ。」
そういうと理事長は胸のポケットから紙の札を取り出した。その札には五芒星が書かれており、その中心に神速と書かれていた。
「今から明力の使い方の一つ見せるね。」
理事長は札を左手の人差し指と中指に挟み、徐に詠唱を始めた。
『瞬速豪脚 救急如律令』
詠唱を終えると札の字が空中に浮き上がり、札がなくなる。字の中に理事長は足を通す。
そして札の字は足に纏わり付き、一つの光の線となり足の上に浮かんだ。
「これが明力の使い方の基本、札呪装だ。君たちにはまず、これの基礎である明力操作を覚えてもらう。」
そういって理事長は札呪装を解除し、霧雨の水晶のあった棚からビー玉のようなものを二つとり、俺と桜に一つずつ渡した。
「今日寝るとき、そのビー玉を握って寝てくれ。そうして寝ると、明力が寝てる間に感知できる。そうすれば、起きてる時にも感知できるようになるから。」
そのビー玉からはぬらに近い何かを感じる。でも少しだけ、安心できる感じがする。
「さて、明日から君たちはここに登校してくる。そしてそれに伴い、本格的な陰陽師としての知識や戦い方をたたき込んでいく。時間は朝の9時にここに来てくれ。」
理事長は霧雨の水晶に向き直る。
「ぬらりひょんさん、貴方がかけた術式はあと何日待ちますか?」
理事長はぬらりひょんが俺たちに明力を安定させるための術式がかけられていることを知っているかのように質問する。
「明日まではもつ。でも絶対とは言えないがな。」
「わかりました。かなたくん、桜さん、今日は時間をかけられないので帰ってもらうね。明日からは本当にきつい生活が待ってるけど、そんな事で君たちの意思は変えられないことはわかってる。
だから、陰陽師になるまではできるだけの助力はしよう。明日から君たちはここの学生兼見習い陰陽師だ。」
理事長はかなたたちを見つめる。俺たちもそれに応じる。
理事長は二人の強い意思を確認して、白銀さんを呼び俺たちを親のもとへ返した。
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「この匂いは共鳴師の匂いだ。シッシッシッ、こいつは俺の獲物だ。誰にも渡さない。」
その声が響いたのは、鬼界の深層。陰陽師の死骸の山の頂上にいる人型の化物からだった。
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