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天才と凡人

う そ つ き

作者: 架け橋 なな

 僕は嘘をついた。親友である君に。



 僕と同じ分野で、君は活動を始めた。


 長年、僕はそこで懸命に戦っていた。経験値はそれなりにあると自負している。



 君がここにやってきて、僕は嬉しかった。


 負けるなよ、なんて言って、先輩風を吹かせてた。



──最初だけは。



 君はどんどん僕を追い越して、瞬く間に高みを駆け上がっていった。


 その瞬間、何かが変わってしまったんだ。



 僕がこれまで丁寧に積み上げてきたもの。


 それが、音を立てて、足元から崩れていく感覚がした。



 嫉妬。恐怖。憧憬。劣情。焦燥。絶望。



 苛烈な想いが胸をえぐり、悲鳴を上げそうなくらいの痛みが襲ってくる。



 敵わない、と一人震えた。



 圧倒的な才能を見せつけられ、僕はただその現実に膝をついたのだ。



 君は評価されたと僕に知らせ、無邪気に笑っている。


 僕に生まれたおぞましい激情など、知るよしもない。



 もし君が、この醜い部分を知れば、どう思うだろう?


 優しい君は、傷付くだろうか。


 それとも、こんな僕を、腹の底から軽蔑するだろうか。



「良かったな。この調子で頑張れよ」



 虚構の笑顔で、罪悪感と劣等感をひた隠す。



 今日も僕は君に嘘をつく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは、悔悟や自嘲という負の感情をようやく吐き出すに至った、主人公の再出発点を描いている、読後にまずそう感じました。 [気になる点] 「劣情」という一語が気になって、もしかして相手は女性と…
2019/06/19 22:47 退会済み
管理
[一言] 読みました! 場面を特定しないことで、思わず共感する内容でした。 きっと、天才でもなければ一度は通る道なんですよね。 負けをあっさり認めることは、大人になって随分たっても中々難しいです。 そ…
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