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異世界貴族の暗躍無双~生まれ変わった史上最強の暗殺者、スローライフを諦める~  作者: 俺2号/結城 涼
一章―帝都の騒動―

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権力者との再会。

今日も夜にもう一度更新します。



 人気のない裏路地から水道橋に近づいた。

 水が出る口が多々作られていて、俺が知る水道橋と仕組みが違うらしい。

 例えるならば公園にあるような蛇口のように、自由に水を汲めるようになっていた。



「よし」



 登るか。

 俺は石の隙間に指先を差し込む。今の身体と身体強化の影響のおかげか、何の苦労もなくすいすいと進めた。

 それからあっという間に頂上へ到着し、水が流れる内側へと入り込む。



 やっぱり冷たい。

 馬鹿みたいに冷たかった。

 履いていたスラックスは濡れて身体に引っ付くし、革靴の中なんて足先がかじかんで仕方ない。

 こういう時に限って雪の勢いが増し、空が俺を嘲笑しているようだった。



 灰色の空を眺めること十数秒。

 俺は勢いよく足を動かす。

 水を蹴って、白い息を吐きながら前に進んだ。



 前世は恵まれていたんだな、と再確認した。

 最新技術で作られた防寒具など、かなり助けられていたのが分かる。



「あー寒っ……どれだー……ローゼンタール公爵邸ー……」



 近づきつつある貴族街の中、ひときわ目立つのがローゼンタール公爵邸らしい。

 と言ってもさっきは分からなかったが、どの屋敷もハミルトン邸の数倍はあった。



 ふむ、帝都貴族というのは立派なもんだな。

 だが僻地具合なら負けてないぞ。

 無駄に対抗してみてすぐのことだ。



 あれかな? 視線の先にあるひときわ大きく、白壁の美しい屋敷。



 よく整えられた底辺は広くて、ハミルトン邸がいくつ入るか分からない。

 俺は白壁の屋敷に向けて足を進めたが、残念なことにまだまだ距離があった。

 体力はまだまだ余裕でも、寒さで気が滅入る一方だ。



 白壁の屋敷の近くまでは十数分を要した。

 幸いなことに、この辺りは見回りの騎士がいない様子。



「っと」



 俺は水道橋から飛び降り――はせず、更に進む。

 思い出したように、一つの懸念が脳裏をかすめたからだ。

 仮に俺がここでローゼンタール公爵邸の前で降りたとしても、果たして、俺の話を聞いてくれるだろうか? と。



 遠目でもわかるが、屋敷の前には二人の門番が立ちはだかっている。

 そこに、服が汚れた俺が唐突に現れたとしよう。

 ラドラム様に会わせてくださいって言っても、普通の価値観なら拒否するか、同時に俺を騎士に突き出すのが当然の反応だ。

 そうなるとここまでの苦労も水の泡。



 どうしたもんか、考えたところでラドラムの言葉が思い出させる。

『――何か困ったことがあったら、いつでも僕を頼るといい。僕の屋敷の僕の部屋まで来てくれたら、君の頼みならいくらでも聞いてあげよう』だったか。

 間に受けるのは馬鹿だ。それに、今、ラドラムが屋敷に居るかなんてわからない。

 仕事中かもしれないわけだし。



 でも。



「……あいつは嘘をつくような性格じゃない、と思う」



 願いでもある。

 しかし、ラドラムと言う男は真正面からやってきて、素直に俺の言葉に耳を傾けてくれるか分からない。

 いっそのこと忍び込んだ方が……ってことだ。



 だから俺は決意した。

 ラドラムの言葉に乗ることにしたんだ。



 懸念はどこがラドラムの部屋なのか。

 中々面倒な任務だなと、俺が頬を掻いたところで気が付いた。

 屋敷の正面、一際大きな窓ガラスが張られた部屋。カーテンを開けて陽の光を浴び、満足げに笑みを浮かべたラドラムの姿があったのだ。



 もしかして俺は遊ばれている?

 パーティのときの提案といい、彼はこうなることを予測していたのか?

 彼の思惑に乗せられている気がする。



 とはいえ、だ。



「実質的に選択肢はない。俺はあの男の助力を得る必要がある……」



 父上のために力を貸してくれる貴族なんて、ラドラムぐらいしか居ないんだ。

 俺に知り合いがいないのもそうだけど、彼ぐらいの権力が無ければ、父上に掛けられた疑惑を晴らすことは難しいはず。



 すぅ――大きく息を吸って辺りを見渡す。

 少し先、水道橋の柱がちょうどいいことに、ローゼンタール公爵邸の近くに下りている。

 あそこにあるのは恐らく、ラドラムの屋敷に水場を近づけるためだろう。



 数分かけて近づいてみたものの、誰か下に居る気配はない。

 給仕も、そして騎士も誰一人としてだ。



 こんなとこを警備するはずがないか、と思いつつ、平民街と水道橋が繋がってることを考えれば、侵入することを考えていないとも考えられない。

 が、何にせよ俺は侵入するだけだ。

 前世でも、罠に嵌められたことはいくらでもあるし、それをクリアしたことも山ほどある。



「最期はその罠で殺されたわけだけど……っと」



 降りたところはローゼンタール公爵邸と本当に近い。

 目と鼻の先、数歩も進めば屋敷の鉄柵に手が届くぐらいだ。

 そしてそのさらに奥には、屋敷の中へつづく裏口がある。

 しかし、ここにも見張りは居ない。なんでだ?



 疑問符を浮かべたのと同時に、俺は無警戒に身体を乗り出した。

 確信したんだ。

 コレは俺が忍び込みやすいようにと、わざわざ警戒レベルを下げているのだと。



 ――舐められたもんだ。

 とは言え今は都合がいい。

 誘ってるのなら乗ってやるさ。



 俺は鉄柵を軽々と超えて、屋敷の敷地内に足を踏み入れる。



 誰も俺を咎めに来ることもなく、あっさりと裏口の扉に手を掛けた。

 当然のように鍵がかかっていない。



 特別な感情を抱くこともなく中に入ると、そこに広がっていたのは屋敷の廊下。

 分厚い絨毯が敷かれ、橙色の灯りが全体を照らす、シンプルながら品の良い空間が広がっていた。



 左を見ると二階へつづく階段。



 もう何も警戒することなく、少し早歩きで廊下を歩く。

 階段を上り、方角を確認する。

 さっき確認した、ラドラムが居た部屋の付近に進んでいき、それらしく扉を視界に納める。



 扉の前に向かうも、やはり見張りは一人もいない。

 ため息をついた俺が手を伸ばし、扉をノックしようと試みた刹那。




『――そろそろ来ると思ってたんだ』




 ギィィイイ……鈍く軋んだ分厚い扉が開かれていく。

 中にはガラスの前に立っていたラドラムと、扉の横に居た一人の老紳士。おそらくこの老紳士が扉を開け、俺を中に入れと促したんだ。

 俺はラドラムの言葉に応えるように、静かに中へ進んでいく。



「どうやってここまで来るかなって思ってたんだ。でも、その恰好を見れば答えが分かるね」


「……お戯れを。水道橋の柱近くには誰も居ませんでしたよ。普段はあそこにも見張りが居るはずです。間違いありませんか?」


「うんうん。大正解だね」


「後はもう一つだけ。屋敷の中の警備も手薄でしたが、これも俺が来やすいようにですね」


「それも大正解だ。僕が気になっていたのは、どうやって屋敷の近くまで来るか――だったからね」



 するとラドラムは上機嫌に笑い、手を叩いて満足げに言う。



「爺や、爺や! グレン君は僕のお客さんだ! でも先に湯浴みをさせてあげたいんだ」


「承知いたしました」



 答えたのは扉の傍に居た老紳士。



「法務大臣閣下! そこまでお世話になるのは……ッ」


「なに、気にしなくていいんだ。アルバート殿の件でここに来たんだろう? 昨夜の件は僕も耳に入れてたからね。でもその話はきっと長くなるし、先に身体を綺麗にしてきた方が気持ちがいいよ」



 やはりラドラムは楽し気だ。

 これから俺が何を言うのか楽しみにしているようで、俺が何を差し出して助力を得ようとしているのか、それを聞き出そうと気分が高揚しているのが分かる。



「ああ、でも気にすることは無いんだ! 僕とグレン君の仲だからね!」


「で、ですから……俺と法務大臣閣下は」



 俺の返事を聞いてラドラムは指を一本立てる。



「何度も言ったかもしれないけど、僕のことはラドラムで構わないよ」



 なるほど、交渉は既にはじまっていたんだったな。

 俺は仕方なく頷き返し、ついに彼の要望に答えてしまう。

 彼の気分を害することは避けたい。



「――――お心遣いに感謝いたします。ラドラム様」



 すると、ラドラムは昨日今日で一番の笑みを浮かべたのだった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法がイメージ次第でどうにでもできるならこの段階でかなり時間と労力の無駄遣いだけどな(笑)
2022/01/27 18:19 退会済み
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