表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界貴族の暗躍無双~生まれ変わった史上最強の暗殺者、スローライフを諦める~  作者: 俺2号/結城 涼
二章―港町フォリナーは眠らない―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/139

占い師。



大変お待たせしてしまい申し訳ありません。

少しずつですが、更新していければと思います……。

取り急ぎ出来上がっている分で更新していければと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

 場所は変わって、屋敷に設けられた父上の私室。

 部屋の片隅に用意された机の前で、今日までの執務の記録を確認しつつ父上が口を開く。

 今日も今日とて鎧姿なのが父上らしい。



「あの姫君に気に入られるとはな」


「姫君、ですか」


「良く誤解されているが、姫という言葉は決して皇族にのみ使われるものではない。高位貴族の令嬢、それも彼女ほどの華があれば姫と言われることも珍しくないぞ」



と、父上はそう言ってから言葉をつづける。



「しかし――――妙に距離が近かったようだが」


「何のことでしょう」


「とぼけるんじゃない。アリスティーゼ嬢とのことだ。ラドラム殿から届いた手紙には、彼女を頼むと記載があった。今日ここに来るまで、アリスティーゼ嬢が居ることを知らなかったわけじゃない。まさか、あれほど近い仲だとは思わんかったが」


「……」


「あの男はいったい何を考えている。これでは正に噂通り、ローゼンタール家が我が家と仲を深めたと吹聴してるのと同じではないか…………はぁ」



 父上は気だるげに、ラドラムの行いを窺うように頭を抱えた。

 しかしすぐに「だが」と態度を改める。



「それにしても、アリスティーゼ嬢の実力は見事なものだ。さすが、あの男が推薦するだけの才女よ」



 それは俺も同意せざるを得ない。

 何せ今日までの執務のほぼすべては、アリスがたった一人で終わらせているからだ。



 フォリナーは重要都市で、執務の量はハミルトンの比ではない。

 文官が一人二人いようと全く足りない、それほどの仕事量をアリスはただ一人で、ソファでダラけながらこなしたのだから、俺としてもその実力は疑いようのない事実だ。



 つい、俺の部屋へ忍び込むことも許してしまいそうに……。



「いや、それは許さないけど」


「グレン?」


「独り言です」


「……まぁいいが、それでグレンはどう思う」


「どう、とは?」


「あの男の目的に決まっている。私をこの町の領主に据え、帝都中の男を虜にしてきた令嬢を送り込んできたなんて、何か思惑があるに決まってる」


「あー、あの人性格悪いですもんね」


「だろう?」



 俺たちはこう言いつつも、表情に嫌悪感は浮かべていなかった。

 ラドラムの性格なんて今更だし。

 彼に対してはむしろこのぐらいでちょうどいいのだと、彼自身がそう証明しているぐらいだ。



「多少は想像が付く……だとしても、奴の好きにさせるつもりはないが」


「えっと、父上?」


「今度は私の独り言だ」



 父上はそう言って机に資料を置いた。



「何はともあれ、アリスティーゼ嬢のことは丁重にな」


「……えー」


「グレン、いくらお前がアリスティーゼ嬢を気に入っていようと、彼女は公爵家の令嬢で――――」


「それは勘違いなんで気にしないでください」



 何やら男女の仲的な心配をされているようだが、違う、違うんだ。

 人となりは好ましく思ってるけど、父上が心配しているようなことを、俺からしようなんてまだ考えたことがない。



 俺は短く声を漏らし、困惑した父上に背を向けて歩きだす。



「そのアリス嬢から買い物に付き合ってくれって言われてるので、俺はそろそろ行きますね。夜には父上を歓迎する席が設けられるそうなので、その食材も見に行ってきますから」


「二人でか? それはまぁ、帝都でも二人で出歩いていたからな。しかしわざわざ二人が行くほどの事であろうか……」


「別に俺たちは気にしてませんよ。なのでちょっと失礼しますね」



 扉を開けると、茶を運んで来た婆やとすれ違った。

 久しぶりに三人そろうと、それだけで笑みがこぼれてしまう。

 恥ずかしいから口に出してなんて言えないけど、婆やは俺にとって、母のような存在だ。加えて父上がいれば、それだけで幸せに感じるのは普通のことだろう。



「少し出かけてきます」


「あらららら! 二人分のお茶をご用意してますのに」


「じゃあ、父上の相手をしてあげてください。いきなり一人でもつまらないでしょうし」


「坊ちゃんは相変わらず優しいですね。では私がご相伴に預かりましょう」



 このぐらいの軽さは、普通の貴族なら有り得ないかもしれない。

 けれど、ハミルトン家ではこれが普通だし、俺もこの方が好ましく感じる。

 俺が階段を下りていくのと同時に、婆やは部屋へと足を踏み入れた。





 ――――グレンが去ったあと、婆やはアルバートに茶を淹れた。

 ゆっくりと、茶菓子を交えて静かな時間を過ごした二人。

 おもむろに婆やが口を開く。



「坊ちゃんがお出かけするそうですが」


「うむ。アリスティーゼ嬢と買い物に行くそうだが」


「……どうしてお止めなさらないのです? お相手は公爵令嬢ですのに」


「別に良いのではないか? 帝都でも同じように二人で外を歩いていたそうだぞ」


「なりません。それは法務大臣閣下がご許可をなさったから良いのです。アルバート様、ひいてはハミルトン家はアリスティーゼ嬢をお預かりしている身。護衛もなしに外を歩かせるなんて、何かあってからどう責任を取るというのです」



 すると、アルバートはハッとした面持ちで机をたたく。



「ッ――――た、確かにその通りだ!」


「ですから武骨一辺なんて言われてしまうのですよ……」


「何の反論も出来んな! だが今からでも遅くない、私が二人と共に――――ッ」


「なりません。お二人はアルバート様を歓迎する用意をされてるのですから、それでは無粋と言うものかと」



 ではどうすればいい、アルバートは今日二度目の頭を抱えた。



「何故今になって私を諫めたのだ!?」



 そう、今更だ。

 気が付いたときに教えてくれればよかったものを。



「何か考えがあってのことかと思いましたから」



 しかしそのようなことはない。アルバートは婆やが言うように武骨一辺だし、残念なことにアリスのことを鑑みようともしていなかったのだから。

 するとそこで婆やが。

 頼もしい口調で、仕方なそうに言うのだ。



「今回だけですよ。私がお手伝いいたします」


「む……だが、婆やはもう斯様な仕事はしたくないと言っていただろう」


「坊ちゃんたちを見守るだけですもの、なので、今日だけは私が」



 婆やはそう言うと、メイド服の懐を漁る。

 純白の、タクトのような短い杖を手に取って、軽やかに振って笑みをこぼした。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 二月と言っても、帝都近辺では春模様がちらほら見受けられる。

 街路樹には小さくも蕾が姿を見せ出しているし、気温の上昇に伴って、街を行く人々の服装にも少しずつ変化があった。



 アリスとの外出も無事に終わりを迎えようとしている。

 すでに目ぼしい食材は手に入れたし、屋敷へ送ってもらう手筈になっていた。今は、町に出たついでに買い物でも、って口走ったアリスと歩いていたのだ。



「その伊達メガネ、いつの間に買ってたの?」


「秘密です。変装は怪盗の嗜みですもん」



 ふふっ、と笑って俺の前を歩くアリス。トン、トンと軽い足取りで振り返って、ロングスカートをふわりと浮かせた。

 タートルネックのセーターは良く似合ってるし、ベレー帽も被り慣れている。

 ひとまず容姿の良さは置いとくとして、変装に慣れてるのは怪盗だったことを思い返せる。



「なるほど……さすが元大怪盗」


「あれ? 褒められちゃってます?」


「前にも言ったけど、怪盗アリスのことは評価してるよ」



 普段の姿は少しもしてないけど。

 ただ、文官として仕事をしてる時のアリスは凄い。訳の分からない速さで仕事を片付けるし、あっという間に終わらせて俺に絡んでくるんだから、色々と凄い。



「んふふー、どうしたんです? 急に褒めちゃって。わたし(飼い猫)のこと、素直に褒めてくれることにしたんですか?」


「頼むから外で変なことは言わないで……」


「大丈夫ですよ。変装してますし、私の事なんて誰も分かりませんってば」


「帝都でのことを思い出してほしいもんだけどね」



 名前は聞いてないけど、アリスに惚れた貴族のことだ。

 あの時は変装を軽く見破られたのだから、あまり過信してほしくない。



「大丈夫です! あの人は帝都にいるはずですし、わざわざ私をじっと見る人なんていませんよ」



 問題は、変装していようと隠し切れない華だろうか。

 スタイルの良さに加えて、品の良さがどうにも鳴りを潜めていない。

 普通にナンパに声を掛けられることはありそうだ。



「でも、バレたら助けてくれますか?」


「放ってはおかないと思うけど」


「――――飼い猫ですもんねー?」


「だから、人聞きの悪いことを外で言うんじゃないって」


「嫌ですー! だって私の特権ですもん」



 そういう問題じゃない、こう言い返そうにもアリスが上機嫌だ。わざわざ、楽しそうにしてるのに水を差すのもどうかと考えさせられる。



 俺としても、我ながら楽し気に町を歩いていたように思った――――その時のことだ。



「お二人さん、よかったら占いでもいかがでス?」



 不意に、路肩から聞こえた男の声。

 俺が目を向けるとそこには小さな机が置かれ、妙に存在感のある水晶玉が一つ。小さな木の椅子が置かれ、そこに腰を下ろしていた黒いローブの男が居た。

 目元を布で隠していて、顔のうち上半分が伺えない。



「ああ、悪いけど占いは――」


「やりましょう」



 去ろうとしたのに、アリスが俺の腕をちょんちょんと引いてくる。



「えぇー……」


「いいじゃないですか。こういうのは気分が重要ですし」


「いや何でもいいけど……分かったよ」



 こうなればアリスはテコでも動かない。

 俺は仕方なく頷いて、占い師の傍に歩いていく。

 すると「おや?」と占い師が口にした後で、しっかりと俺を見て「ほほっ」と笑い。



「これは珍しいでスね。ガルディアの生まれでスか?」



 それなりに興味がひかれる一言を口にしたのだった。




久しぶりにも拘わらず、最後までご覧いただきありがとうございました。

次話については明日の更新となります。


※もしかしたらタイトルを変更するかもしれません。別に書籍化でどうのという話などではないのですが、もう少し別のがないかなと検討しています。

変更する際ですが、しばらくは旧題も併記して参りますので、どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ばあや、来てくれて良かったね。家族がそろった感じ。
[一言] ずーーーーと待ってました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ