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異世界貴族の暗躍無双~生まれ変わった史上最強の暗殺者、スローライフを諦める~  作者: 俺2号/結城 涼
一章―帝都の騒動―

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真意が見えない依頼。

今日の夜にもう一度更新します。

「色々と尋ねたいことだらけだが」



 父上は疲れた様子で言うと、俺の隣に立つラドラムを見た。



「私はお主に助けられたのだな? ラドラム殿」


「ええ、アルバート殿の推察通りですよ」



 すると父上はため息を漏らす。

 あまり仲が良くない相手から助けられたなんて、父上としては複雑な心境だろう。

 だが、ラドラムのおかげで投獄などは避けられたはず。



「グレン君は僕と取引をしたんです。彼は僕の屋敷まで来てくれたので、僕はある交換条件でアルバート殿に助力をしようといいました」


「ッ――グレン! お前いったい、何を代償に……!」



 父上が俺の両肩を強く握りしめた。

 勝手な行動をしたことは謝るべきだが。



「相談もせずにしたことは謝ります。でも、こうでもしなければ父上はやがて――」


「そんなことは聞いておらん! いったい何を代償にして、この男の助力を得たのだッ!」


「仕事を一つ引き受けてくれと。……でもその内容は聞けてません」


「何を馬鹿なことを。そんなのは詐欺の常とう手段ではないか!」



 俺もその言葉には何も反論できない。



「ラドラム殿。私を助けてくれたことには感謝している。だがお願いだ、グレンに危険なことはさせないでほしい」


「いやいやいや、アルバート殿はひどい人だなー。そんなことはさせませんってば」



 肩をすくめて軽く言ったラドラム。

 やれやれ、なんて呟きながら父上の対面に腰を下ろすと、俺にも座るよう手で促してくる。

 俺は父上の隣に腰を下ろした。



「グレン君も我慢の限界が近いだろうし、仕事について教えてあげよう」


「ええ、お願いします」


「って言うのはね、近頃帝都で頻発している盗みについてなんだ」


「……はい?」


「あー帝都から離れてると聞いたことないだろうけど、凄腕の怪盗が出没してるんだよね」



 俺と父上は顔を見合わせて呆気にとられる。



「分からんな。その騒動とやらにグレンが何の協力ができると思うのだ?」



 正直なことを言うと、いくらでも協力できる話だ。

 前世での経験を生かせばいいだけだし、探偵じみた捜査だってやろうと思えばできる。



 ――って、何を考えてるんだ俺は。

 もう前世とは離れた生活をしようって決めてるんだから。



「アルバート殿の疑問も間違いないんだけどさ、グレン君って頭も良いし、勘も鋭い。うちの妹に怪盗の調査を任せてるんだけど、目ぼしい進捗が見られなくってね」


「だからグレンに協力を……いや、助手のような役目として使いたいわけか」


「その通りです」



 なんとも解せない話だ。

 俺は何の功績を打ち立てたことはないし、目立つ知識を披露したこともない。

 凄腕の怪盗とやらの調査に対して、俺をあてがう理由が分からない。



 やはりこのラドラムと言う男、俺に何かしらの執着があるようだ。



「確かにグレンは頭が良い。だが、したこともない調査に協力ができるとは思えんが」



 父上が俺の気持ちを代弁する。



「僕って人を見る目はあるんですよね。別に危険なことをさせようってわけじゃないですし、何なら、うちの妹の書類仕事を手伝うぐらいでいいんです。アルバート殿をかばうことの代価としては、十分格安では?」


「確かにその通りだが……」


「父上、俺なら大丈夫ですよ」



 気になることは多いが、このままでは話が進まない。

 ようは俺がアリスに協力して、帝都の怪盗騒動の調査をすればいいだけのことだ。



「ラドラム様は危険じゃないと言ってましたよね?」


「うんうん、それは僕の名前で約束するよ」


「なら父上に助力をいただくため、俺はラドラム様が抱える問題に協力したいと思ってます」


「むぅ……だが……」



 俺は頷かない父上に代わりラドラムへ尋ねる。



「アリス様の補佐をするようなものですよね?」


「その通りだよ。グレン君が引き受けてくれるのなら、僕は全力でアルバート殿をかばうこととを約束しよう。アルバート殿を嵌めた人とかも調べてあげるし、身の安全も保障するよ」



 本当に補佐をするだけか? 何か隠していないか?

 気になってはいたものの、もうすでに、父上を一度助けてもらってる。

 ここでやっぱり嫌だ、と答えることの方が愚策に思えた。

 それに、ラドラムが述べた約束は魅力的過ぎる。 



 だから答えなんて決まっていた。



「分かりました。なら俺はラドラム様との約束を守ります」



 と。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 翌日からは、騎士が宿の前に立つようになった。

 代わりに俺たちの部屋の入り口には、ローゼンタール家の私兵が立ちはだかっている。

 父上の疑惑は簡単な話ではないらしく、いくらラドラムの権力と言えど、簡単に無罪放免……とまでは出来ないらしい。

 少なくとも数週間は時間がほしいとのことだ。



 俺はその三週間の間だけ怪盗騒動に対し協力する。

 朝から夕方まで、勤め人のようにラドラムの屋敷で仕事に励むのだ。



 ――俺は宿の外でラドラムの迎えを待っていた。

 するとその俺に対し、騎士たちが分かりやすく悪態をつく。



「娼婦の息子が偉そうに」



 なんて声が聞こえて来た。



「元将軍が女遊びで作ったっていうあれだろ?」


「ああ。遊び方も知らない馬鹿な男だ」



 ……まぁ、面白い話が聞けた。

 寒空の下に立って迎えを待ってみるもんだな。

 まぁ噂程度の信憑性しかないが、俺がどういう扱いだったのか、少しだけわかった気がする。



「別に気にしてないけどさ」



 何はともあれ父上は父上だ。

 しかし、俺は養子のはずだったわけだけど。



 興味深い話を聞けたと頷いていると、俺の前に一台の馬車が停まる。



「お待たせいたしました。グレン様」



 御者を務めていた爺やさんが話しかけてきた。



「いえ、わざわざ来ていただいてありがとうございます」



 というわけで、騎士の悪態はこのあたりで終了だ。

 俺は爺やさんに案内され馬車に乗る。

 馬車はすぐに動き出し、俺をローゼンタール公爵邸へと連れて行く。



アクセスありがとうございました。

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