第6話 銀色の出会い
ようやく第二ヒロイン登場……
階段を降りる、降りる、降りる。
ここまでの間にいくつか分かったことがある。
――ここに誰かがいる。
あれからも先ほどの戦闘のときとは違い、明らかに今壊された戦闘機械がいくつも見つけられた。
先ほどと同じ蜘蛛型もあれば、人型――機械兵士もあったが、どれも一撃のもとに仕留められていた。
これほどのことができる冒険者は最低でもCランクオーバー、英雄の領域だ。
だが、このトレイユでその領域の人物となるとヒロには心あたりがない。
――Cランクともなればダンジョン攻略の前線組だ。
彼らはこのような一つの町に留まらない、なぜなら彼らは常に未知との遭遇に飢えている。
新たな迷宮、未知の魔物、未発見のお宝。彼らが求めるのは常にそれらだ。
まさしく真の冒険者、英雄候補たち、それこそがCランクの領域なのだ。
(だとすると、可能性としてもっとも高いのは本部からやってきた攻略組だが……)
しかし、もしそうならもっとギルドで噂になるはずだ。
分からない、分からないが、分かることもある。それは――
(このままじゃ、そいつに宝を全部持っていかれるってこと!)
それはダメだ。
今のヒロにはお金が必要なのだ。
焦る気持ちを落ち着けながら、探索をつづける。
そして、目的の場所にたどり着く。
「ここか……」
地図で再度確認する。
冒険者ギルドでは冒険に役立つ様々な商品を取り扱っているが、その中で一番役立つものがこの地図だ。
これは、攻略組が記載した地図の複製品だ、攻略組から買い取った地図はこうしてほかの冒険者も購入することができる。しかも追加で料金を支払えばベテランが追記した最新の魔物の生息域まで入った物も購入することができる。
ヒロもこの遺跡を含め五つすべての地図を購入している……いや、させられた、というべきなのだろうが、詳細は割愛する。
ともかく、この目の前の壊れた壁の穴こそ未知のルートへの入り口だ。
穴の向こうに地図にない道が、燭台の火に照らされる。
ヒロは深呼吸し、穴を跨ぐ。
ここから先は前人未到の領域。
真の冒険が……
『侵入者発見、侵入者発見、タダチニ排除セヨ』
……始まるのだった。
――――――――
「しー、しー、死ぬ! 死ぬ! 死ぬ!」
全力で少年は走る、走る。
その後ろからは巨大な今まで見たこともない巨大な機械型魔物。
巨大殺戮機械兵である。
通路を埋め尽くす巨体で押し寄せるその威圧、まさに壁である。いや、違った、本当に壁だ、追いつかれたら一巻の終わり。
その未来を連想してヒロは泣きながら走り続けた。
しかし、得てして悪い事とは続くもの、前方より不吉な影が表れる。
機械蜘蛛――その数、五体。
「嘘だろおおおお!」
完全な挟み撃ちにヒロの絶叫は絶えない。
こういうのを何と言ったか……四面楚歌? いや、前門の虎、後門の狼……だったか。
今のヒロはそのどちらにも当てはまるような最悪の状態であった。
このままじゃ終わる……そう思った矢先、天はヒロを見放さなかった。
機械蜘蛛の少し手前、そこに扉があることにヒロは気づいた。
ヒロは勝負に出た。
限界を超えて加速する。
彼の手にドアノブが触れる。
「しゃあああああ!」
ドアを開け、閉める。
ドアの向こうで目的を失った機械たちが通り過ぎる音を聞き、ほっとするヒロ。
しかし、突如、部屋全体が明るくなり、己の失敗を理解する。
「しまった、誘導トラップか!」
つまり、あの機械たちは侵入者をここに運ぶためのダミー。
本命はこの部屋を埋め尽くす巨大な魔法陣。
魔法が起動し、視界が真っ白に染まるなか、ヒロの耳はわずかな音を聞き取った。
『データ解析、条件オールクリア――あなた様をろ……の一族と認めます』
―――――――
魔法が終わり、光で失っていた視力がもとに戻り始める。
そこは先ほどの景色とは完全に異なっていた。
複雑に絡まる太い線に大量の機械、その向こうを見てヒロは言葉を失う。
ガラスの向こうで少女が眠る。
その幻想的な景色に言葉を失う。
銀色の髪、小さな身体。
しかしそのすべてが美しい。
もし仮に彼女が天使だと名乗ったとしてもヒロは信じるだろう。
それほどの衝撃をヒロは感じていた。
無意識にヒロは少女の眠るガラスの棺桶を触れる。
そのとき、隣の機械から声が聞こえた。
『接触を確認、これよりナンバーX-001、解放します』
その声とともに、棺桶の中の水が抜けていく。
ガラスは音もなく消失し――少女が目を覚ます。
スカイブルーの瞳が外界にさらされ、より一層、超越した美を感じるヒロ。
その瞳がヒロを捉えた。
ゆっくりと棺だった台から降り、ヒロに近づいた。
「初めまして、天使です」
やはりそうだったのか……と納得するヒロ。
だが少女はフッ……と口元を吊り上げる。
「冗談ですよ、本気にしないでください」
「……えっ? 冗談?」
「ええ、冗談です。あなたを見ていると何となくからかいたくなったので」
表情をほとんど変えずにそう答えた。
「では、改めまして、私は識別番号X-001ですが、私はこの呼び名を好みません、言ったら殺殺するので、私のことはセーラと呼んでください。マスター」
「ま、マスター?」
「おや、お気に召しませんでしたか。では、ご主人様? それとも旦那様? どの呼び名で呼ばれたいのですか変態」
「ねえ、今オレのこと変態って言わなかった?」
「言ってません、それともそう呼ばれたいのですか、このモヤシは。
「またなんか含み入れた!」
そんな漫才みたいなやり取りを交わしつつ、ヒロは自分のマントを少女にかけた。
「……なるほど、変態は全裸より裸マントというよりマニアックな方が趣味ということですね」
「いや、違うから、確かに思った以上にHな感じになっちゃったけど、違うからね!」
この訳の分からない少女に半ば呆れながら、ヒロは自分の自己紹介をする。
「オレはヒロ。マスターでも変態でもなくてヒロ」
「ヒョロさんですか、軟弱そうな見た目道理ですね、まさに名は艇を現す……的な」
「ヒロだから、ひょろひょろじゃなくてヒロだからね」
「まあ、冗談はこの辺にしましょうか」
そう言って彼女はこちらを見つめた。
ヒロもまじめな顔に戻って、彼女に質問する。
「君は一体何者なの?」
「私は人ではありませんナンバーX-001、クロスギアの一人です」
人ではない――クロスギア、聞きなれない言葉にヒロは困惑する。
はあ、と小さくため息をついてから、話を進めた。
「何となく察しはついていましたが、まさか本当に何も知らずにここまで来てしまったのですね。
こんな人がマスターだなんて最悪です。チェンジをお願いします」
「なんかひどいこと言われてる気がするー⁉
そもそもクロスギアってなんだよ!」
「いいですか、クロスギア、というものは……」
「ちっ……なんだ一番乗りじゃねーのかよ、クソッ、どこのどいつだ、オレの獲物を掻っ攫おうっていう命知らずはよ」
セーラがその問いに答えようとしたとき、部屋の入り口から男の声が聞こえた。
次回で第1章完結……できるといいなぁ。




