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借金から始まる英雄譚  作者: マシュマロ悪魔族
第1章 借金少年と毒舌兵器
6/14

第5話 機械仕掛けの魔物(デウスマキナ)

ダンジョン名をすべて『トレイユ』に変更しました。

理由は一々名称を考えるのがめんどくさ……ゲフンゲフン、勿論、布石ですとも!

『トレイユの五大迷宮』――トレイユの街を囲うように存在する五つのダンジョンの総称。

 北に位置する灼熱の活火山『トレイユ大火山』

 南東にある大森林『トレイユの森』

 北西にある半魚人ハサギンの楽園『トレイユ地底湖』

 南西にある魔物住み着く鉱山洞『トレイユ大洞窟』

 そして、北西にある魔科学文明の残り香『トレイユ遺跡』


「誰もいない、か」


『トレイユ遺跡』に着いたヒロは辺りを見渡し、周りに誰もいないことを確認する。

 そして見張りがいないことを確認してからヒロは燭台カンテラの中に火をともす。

 ――本来、この迷宮は立ち入り禁止である。

 理由は新しい通路の発見であった。

 通路が新しく解放されれば当然注意しなければならないのは、そこから未知の魔物が湧き出る可能性だ。場合によっては人々を恐怖に陥れるCランク級魔物がダンジョンを飛び出し、町を襲う可能性すらありうるからだ。

 よって冒険者ギルドでは新しいダンジョンや隠しルートを見つけた際には、ダンジョンを封鎖し、ギルドより選ばれた上位冒険者によって攻略されてから、一般冒険者へ開通させる決まりがある。

 もっとも、この遺跡の場合、現れる魔物が機械型に限られている。ダンジョンに出る機械型魔物デウスマキナはダンジョン防衛に特化した命令がなされている、つまりはこの迷宮を飛び出す心配はほぼ無いといってもいい。故に立ち入りを封鎖するギルド員も夜まではいないということだ。

 万が一のことも考えて明かりを消してここまで来たが、もう心配はいらないようだ。

 燭台の明かりに照らされて、遺跡が姿を現す。

 それは鉄の門。

 門の先の漆黒の闇は冒険者の骸を貪りつくす貪欲さを感じさせた。

 思わず引き返したくなる衝動を抑え、ヒロは闇の中を進みだした。


 夜の静寂が少年を襲う。

 靴音は魔物のうねり、服のこすれる感触は魔物の舌触り。

 ましてや頼れるものは燭台の明かりだけという状況で、少年の精神ストレスは最高潮を優に超えていた。

 まだ戦闘にすらなっていないのに……

 少年は己のふがいなさを悔やんだ、未熟さはここでは罪であった。

 不意に先の方からブイイイイ……という不快音が聞こえてくる。

 ヒロは身構える、それはギルドで話に聞いた機械の駆動音に酷似していたからだ。

 辺りを確認する。通路は比較的広く、剣を振るうに問題はない。


(まあ、オレの剣の腕はあまり頼りにはならないけど)


 養父は強かったが、武器扱いは教わらなかった。

 養父オヤジの戦法はもっぱら……

 などとヒロが考えている内に駆動音の正体が姿を現す、四つ足の体躯は蜘蛛スパイダーを連想させた。

 だが、近づくにつれてその機体が異常だとヒロは気づいた。


(この機体は壊れている……?)


 本来四つ足の1本は欠け、さらにはコアが露出しているどころかすでに損傷すらしていた。

 機械蜘蛛マシンスパイダーはヒロに向かって襲い掛かる。


「っ……⁉」


 が、遅い。

 機械蜘蛛は本来魔猪ボアと同じくD級魔物モンスター、超重量・高機動・高火力とD級でも上位の怪物である。

 しかし今、ヒロはたやすくその攻撃を横に飛んで回避した。


「足を失ってうまく走れないのか、……なら!」


 蜘蛛の速度は片足を失い大幅に減少、多機能の戦闘武器もなく、ただ突進つっこむのみ。

 だから避けるのはそう難しい話ではなかった。

 それでも今までの彼なら逃げの一手を考慮したであろう。だがしかし、機械故に殺気が無いおかげか、あるいは孤児院かぞくを守るという決意のおかげか、彼は逃げるという選択を放棄した。

 今このとき、彼は冒険者となった。

 冒険者は壁に近づく。そして壁の真ん前で敵に対峙した。

 魔物は再び突進を決行する。だが、それこそ彼の目論見道理であった。

 衝突の直前、彼は滑り込むように死角である足と足の真ん中、胴体の真下に飛び込んだスライディング

 回避された蜘蛛は壁に豪快に衝突した。


「今だ!」


 機械蜘蛛が壁に激突し動きが止まったのを見て、ヒロは意を決して蜘蛛の死角、レンズの無い後方に飛びつく。

「っ……」蜘蛛の身体をよじ登っていくヒロ。機械は対象を失い、目を動かし続ける。

 勝負は決した。

 少年の刃が露出した核の損傷部分に突き刺さる。

 ひび割れていた核は耐えきれず、砕け散り、機械はその活動を停止させ、胴体が床にズンッと音を立てて崩れた。

 蜘蛛の身体から飛び降りて、ヒロはあらためて機械蜘蛛の姿を確認する。

 壊れた脚、叩き割られた装甲。

 まるで戦場から逃げてきた、あるいは生き延びたようなその姿フォルム


(オレ以外にもこの遺跡に人がいる……?)


 機械型魔物は無機物だが悠久の時を生きる魔物モンスターであり遺跡の防衛機構、その身体は自己修復機能をもつ。

 故に1ヶ月ものあいだ閉鎖されたこのダンジョンで、損傷した機体があるなどありえない。

 しかもこれはたった今負傷したような気さえする。

 だが、誰がこの遺跡に来ているというのだ。

 ギルドから派遣された正規の攻略組はまだのはずだ、ここから首都まで馬車でも1週間はかかるはずである。


(ここで考えていても仕方がない、か……)


 今は勝利できたことを喜ぶべきか。

 ヒロは嫌な予感を感じながらも再び闇のなかを進んでいった。

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