表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
借金から始まる英雄譚  作者: マシュマロ悪魔族
第1章 借金少年と毒舌兵器
2/14

第1話 欠陥品の冒険者

「――はい、採取量が規定数に達していないため、Fランク依頼、『薬草採取』は失敗です」


 受付嬢の言葉を聞き、ギルド内に笑いが木霊こだまする。


『おいおい、聞いたかよ』『ああ、薬草採取で失敗するとかオレ初めて見た』『あの人って前からちょくちょく見るよね』『うん、多分冒険者になって1年以上経つと思うよ』『うわぁ、そんだけやっといて薬草採取もできないとか、オレなら恥ずかしくて死ねるわ』


 そんな言葉が飛び交うなか、噂の当人、ヒロ・ユニスは、ギルドを飛び出していた。


(ああ、クソッ、恥ずかしいなあ!)


 町のなかを走りながら、ヒロは今日の出来事を思い出していた。

 最初のうちは良かったのだ。

 そのとき、依頼された薬草10個のうち7つ採取を終えていた。そして、そいつらは茂みをかき分け表れた。

 ――小鬼ゴブリン

 知能・身体能力ともに子供レベルだが、高い繁殖能力と人間のように武器を使う知恵を合わせもつ緑色の悪鬼。

 数は3匹、武器は2匹がこん棒で1匹がナイフ。

 対してヒロの腰には一振りの剣。数では上回られているものの、間合いリーチや筋力などを計算にいれれば、勝算は十分にある……はずだった。


(まただ……)


 手が震える。

 足がすくむ。

 心が……魂が逃げろと叫んでいる。


 あの日――自分一人が助かったあの事件から彼が患っている心の病。

「魔物恐怖症」と呼ばれる特定の魔物、または魔物全般に対して一種のパニック状態におちいってしまうトラウマ

 パーティが全滅してしまった冒険者などがかかる精神病を彼は患っていた。

 ――結局のところ、彼は戦うことなく森を逃げてきたのだ。


 戦えない冒険者――『欠陥品ドロップアウト』と自分が陰で呼ばれていることを彼は知っている。

 歯がゆい、何より否定できない自分が一番情けなかった。


 そうしてがむしゃらに走っていたせいだろうか、正面からドンッという衝撃がやってきて、後方に尻餅をつく。


「おいおい、ちゃんと前を見て……て、なんだヒロか」


 とっさに謝ろうとした矢先、自分の名前を呼ばれてヒロはぶつかった男を見上げた。

 白と青の陣羽織には帝国の象徴である双竜紋、背中には彼の背丈ほどもある長槍を背負った長身の男。

 ヒロは彼を知っていた。

 リッド・グレイル、帝国軍駐在騎士である。


「リッドにぃ⁉」

「おう、元気なのはいいが、あまりはしゃぎすぎるなよ」


 彼は手を差し伸べて、少年を立ち上がらせる。

 ヒロはいぶかしい顔を浮かべながら青年に問いただす。


「兄貴ってこの時間は見回りじゃないだろ……ひょっとして、さぼり?」

「馬鹿、妙なこと言うなよ、仕事だよ、仕事。

近々、冒険者ギルドのお偉いさんが来るってんでその打ち合わせだよ」


 彼はめんどくさそうにため息をつく。


「それって首都からってこと? なんでこんなところに……」

「ほらあれだよ、この前『遺跡』で隠しルートが見つかったろ。

その調査をしたいんだとよ」


 この町の周辺にある5つのダンジョン。

「森」「遺跡」「洞窟」「湖」そして「山」。

 そのうちの一つ「トレイユの遺跡」で先月、隠されていた通路が発覚し、ギルド内で話題になったことは記憶に新しい。


「なるほど、それはリッド兄も忙しいや」

「……それだけだったら、よかったんだけどな」


 ヒロは納得する、しかしリッドはまだ何かあるのか、ヒロに耳を貸すようにジェスチャーしてきた。

 ヒロは不思議に思いつつリッドに近づいた。


「今回来る人物の中に『異世界人』様がいるんだよ」


 その言葉を聞いて、ヒロも目を白黒させる。

 ――異世界人

 召喚術の最奥にあるとされる「異世界召喚」よりもたらされる最強の使い魔、「異世界」。

 曰く、それは人型の化け物。

 人類が持ちうる最強の「最終兵器アルテマウェポン」。

 そして1年前、彼を助けた彼女と同じ――Bランクオーバー冒険者、物語えいゆうたんの主人公だ。


「まあそんな訳で俺はそろそろいくわ、お前の気を付けて帰るんだぞ」


 そう言って青年は立ち去った。

 その姿を見送ったあと、少年もまた帰路に戻る。

 ――ざわつく心を、しこりのような何かをごまかして。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ