勉強? 会!!
「ってな夢を見たんだけどさ」
しゃべりながら鉛筆を動かす。宿題の防火ポスターの下絵を描きながら夢の内容を話したところだ。(ちなみに美桜は『資源を大切に』っていうのを描いている)
「すごいじゃん、友里奈! 『異世界、異世界』言い続けたかいがあったじゃない!!」
美桜が感嘆符を飛ばしてくれた。そうなんだよ、起きた瞬間はそう思ってハイテンションで美桜に電話かけちゃった訳だけど。うーん、話し終わったらなんかビミョー。夢の内容が中途半端だったからなぁ? でも夢ってそんな物だよね、殆どは無意味だし。
「ふぅむ」
美咲ねーちゃんは美桜と私の数学のプリントを睨みながら唸る。その『ふぅむ』は何? 悪寒がしますがな。
「取り合えず美桜、問2の(1)もう一回考えてみて。ユリーナは問5の文章問題と問8の表がアヤシイかな」
「……ユリーナっすか」
私が眉を寄せ口を尖らせると、美咲ねーちゃんはカラカラと笑い、レモンティーを飲んだ。氷までもが笑っている様なカランという音を立てる。
そこへ美桜が言う。
「……友里奈、ちょっと絵が大き過ぎない? これで標語入るの?」
うっ、ダブル駄目出しだっ。
「いい! 色塗りのときに誤魔化す。でさ、この夢どう思う?」
二人の意見を聞きに来たのに宿題がメインになってるよ。……いやモチロン! 助かってますぅ。
「面白そうな夢じゃない? もし続きが見られるとしたら、どうしたいの?」
美桜が聞いてくれた。
「うーん、そこなんだよね。今夜寝て、夢の続編が見られるとして、夢が始まった途端いきなりピンチじゃん。あの鳥は何だろう?弱点とかあったら知りたいなあ。あと、確かに異世界物は好きなんだけど、基本受け身姿勢で見てる訳。だからシステムとか、パーティーに必要な面子とか、そんなに詳しく理解してる訳じゃ無いんだよね」
「そういう事なら……」
美咲ねーちゃんが立ち上がり階段を上って行った。美桜は肩を竦めて言う。
「少し休憩しよ。その代わりに絶対、午前中に色塗り終わらせよう?」
私は深く頷き、「うん。じゃ、ちょっとトイレ借りるねー」とリビングを出た。
関係ないけど、ここの家はトイレさえも乙女チックで、……(汗っ!)。汚してしまわないか気を使う。いや、どこのトイレも汚さない方が良いんだけど。
洗面所は流石に普通……。ってか、むしろ描かきのタマゴが二人いるからか、壁に2つ3つ絵具らしき物が着いててホッとしちゃったりする。
リビングに戻ると美桜が飲み物を入れ直してくれていた。おやつはチョコ菓子。ぅぅん、小腹癒されるぅ。パクついてるところに美咲ねーちゃんが戻って来た、デカくて分厚い本を持って。
「これ、『神話図鑑』っつー物なんだけどさ、読んだり描いたりするときに頼りになる代物なのよ。……でも所謂一般的な異世界ならコレ見るより、蒼太くんに聞いた方が早いかもしれない」
ウチの兄2号と美咲ねーちゃんは同い年である。でも同じクラスになった事はあんまり無いみたい。子供の頃って、グループが確定されると違うグループの子とは遊ばなかったりするもんね。ましてや性別が違えば尚更か。
「兄2号? 確かに異世界物のゲームとかマンガとかは兄2号の影響だけど、兄達とはこんな話したこと無いからなぁ……」
「そっか。まぁ、異世界物に出てくる怪物とかは、結構神話を元にして作られた作品も多いから、とりあえず鳥だけでも調べてみる?」
美咲ねーちゃんは言いながら図鑑の該当箇所を開く。わぁお! グラフィックきれい。
確かに、今ハマってる異世界アニメに出てくる獣に似てるのが載ってますよっ。獣倒して一攫千金、的な内容のゲームにいたヤツもいる。倒すのが大変だった事を思い出して眉間にシワが寄る。
図鑑を普通に見入っていたら、美咲ねーちゃんに聞かれた。
「どう? 似てるのいる?」
「逆光だったから、ちょっと分かんないってのもあるけど、……この本スゲーッすね!」
「ふふん、良いでしょう」
本を褒めたら美咲ねーちゃんがドヤ顔した。美桜は対照的に困った顔をしつつ、数学のプリントを見直し始めた。美術の宿題を中断したついでに、数学を終わらせるつもりみたい。まあね、計算問題の1問くらいならすぐ終わるよね、私の文章問題と表に書き込むヤツとは違うよね……!
「んじゃさ、気になる怪物だけピックアップしといてよ。PCで画像検索出来ないか調べといてあげる。……英語のプリントのチェックが終わったら、だけどね。」
天国と地獄が1度に来るって、こういうことですか?




