神社で休憩と晩ごはん
美桜の家からの帰りに神社に寄った。時刻は3時。真夏の3時って暑いよね。
美桜のところで、冷たい麦茶をごちそうになってたのに、日向を歩いている間にどんどん汗になってしまった。
はぁー、木陰っていい気持ち。すぅっと、体温が下がる気がする。
私は鞄を木の根っこの上に置いて、大きく伸びをした。そして、深呼吸。冷たくは無いけど、日向とは違う空気が体に入って来る。
暫くそうして、深い息をしながら木の表面をぼんやりと眺め、頭を仰け反らせて枝や葉を見上げた。
風に葉が揺れている。太陽の光が当たっている葉が、くすぐったがっているかのように、ひらひらとはためいている。
視線を今度は逆にたどり、足元を見る。少しうねりのある、太い根っこが土の中に潜りこんでいた。
根から吸収された水分と養分は、幹や枝を通って葉の先へ。葉から吸収した太陽の光と二酸化炭素は根の先へ。そうして繰り返した先には実りの秋がある。
……じゃあ、私は?
ご飯や水分や酸素、ということでは無くて、……宿題をして、部活をやって、ダンスの練習をして、そして夜にはあの世界に行く……。そこに実りはあるのだろうか。
目を閉じて、もう一度深呼吸をする。
……何か、目には見えないものが体に入って来るような感じがする。それは嫌なものでは無くて、何か力のような、光のような感じがする。初めての嗅ぐ匂いのような、ずっと知っている感触のような、何か……。
大丈夫だよって、誰かが言ってくれた気がした。その途端、体の中に何か力強いものがふつふつと沸いてきたような気分になった。
ーー何がなんだか、よく分かんないけど、今こうして、こういう生活を送っていることには意味があるのだろうな。
ちょっと前の私だったら、『やったぁ! 選ばれた冒険者だ〰〰』って、はしゃいだかもしれない。
でも、意味があるにしろ無いにしろ、あの世界に行ってしまうだから、もしも使命があるのなら成し遂げよう。
そんなことを思いながら、神社の神様に手を合わせ「これからも見守っていて下さい」と呟いた。
慌ただしかった1日を、……って、まだ夕方だけど、リセット出来て気持ちが落ち着き、また眩しい光の中、家路をたどった。
家に帰ると兄2号が声をかけてきた。
「最近、録画したアニメ見てる?」
「あー、見てない分溜まってる」
「容量少なくなって来てるぞ、見て消しておかないと、新しいのを録画出来なくなっちゃうぞ」
なんか、見るの忘れちゃったんだよね。気持ち的にバタバタしてたからか。
「うーん、明日見る」
あのアニメは1人で満喫しなくちゃね! 家族の前でなんて絶対に見れない。
「そ、そうか? 分かった」
いかん、私の頬が急に上がったのだろう。兄が戸惑っているぞ。でも仕方が無いよね? 好きなものを思い浮かべたら、ニヤケちゃうよね?
「ところで兄。そのエプロンは何?」
「ああ、かーさん残業だって。だから、俺が夕飯作ろうかと思って」
……うっ。それは肉×油じゃないよな?
「バイト先のメニューで作ってみたいヤツがあったんだよ」
「手伝おうか?」
兄2号は嬉しそうな顔をした。いや、何を作るのかチェックしたいだけなんだけどね。
「じゃあ、着替えて来るね」
「おう!」
そうして出来たメニューは、5mlにスライスしたカボチャに薄い豚肉を巻き付けて油で揚げたフライと、お湯で戻して刻んだレーズンの入ったコールスローと、夏野菜たっぷりのミネストローネスープもどきだった。何故もどきかというと、兄2号と私で料理の下準備中に帰宅した兄1号が、「おっ! 揚げ物かぁっ!? 俺の出番かあっ!!」と騒ぎだしたからだ。
兄1号は夏の始めまで和食レストランでバイトをしていて、揚げ物を担当していたらしい。なので、子供だけで夕御飯を作るときは、兄が揚げ物をやってくれるのだ。
3人で晩御飯を作っていたのだがスープにマカロニを入れるときに、兄1号曰く「のぁあっ、手が滑ったぁ!!」と、マカロニを入れすぎたのだった。なのでスープと言うより、洋風煮物かな? これは。
「いいよ、いいよ。明日の朝コンソメスープを足すか、ベーコンとチーズを載せてオーブンで焼いちゃえば良いんだから」と母は嬉しそうに笑い、父も「味加減、丁度良いぞ。揚げ物もカラッと揚がってる。あっ、そうだ、同僚からお前達の好きなソルダム(プラムの一種 皮は緑で果肉は赤い)を貰って来たんだ」と、ニコニコしていた。
布団に入る前に、ノートを見ておさらいをする。
王子の短剣と、朝露を集める花の話。
今までルナ達に聞いた話。神話や宗教。魔法のこと。
これから行くギルドとクロ爺。
この間出合った少年と少女。
それと、あの得たいの知れない不気味な物たちと、3つの月の月食の話。
そして、もちろんルナとセレナ。
さあ! 寝るぞ(行くぞ)!!




