表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/38

空へ


 見渡す限り青い空! とは言えないんだな、これが。空の向こう側から手前に向かって青空が広がってはいるけど、頭上には白い雲がポツポツある。さっきから日向になったり日陰になったりしていて、今は真上に雲があり風の強さもあって少し肌寒い。まあ、この分だと直ぐ日向になりそうだけどね。


 ルナは鳥たち1羽ずつに何か話しかけている。セレナに聞いてみたら鳥たちへ私の説明と行き先の指示を出してるらしい。やっぱり鳥と話せるのかー。すっごーい! 


 よーく見ると、ルナのピアスが光ってる。これまでも気付いて無かっただけでピアスが光ってることがあったのかも……。しまった! 見逃した!! 魔法使いでは無い、いろいろな教えを守ってるだけだって言ってたけど、部屋の石やピアスの石に何か関係があるのだろうな。


 ……って、アレ?


「ルナ。初めて会ったとき、いきなり後ろにいたよね? あれは何だったの?」


 ルナが風に(なび)く髪を押さえながら振り向く。……うっ、美しい! 陽光にシルバーの髪の毛が当たってキラキラしてる。ってのは置いておこう。この先一々見とれてたら、私、完璧に変態じゃーーん!!


「ああ、あのとき? 1人で出かけるときは直接乗っちゃうから」


 ……へっ?


「鳥に? 直接?」


『そうだよ』


 これにはセレナが答えてくれる。セレナの方を振り返ると、これまた陽光に髪の毛が……。はいっ、自主規制しまーすっ。


『首輪があるでしょう? あそこに手綱(たづな)を付けられるの。でもルナと鳥たちは繋がっているから、手綱が無くても問題は無いんだけどね』


 ……えーっとですね、ルナは私とセレナみたいにキュロットスカートを履いて無いんですね。ワンピースみたく上から長い布が続いているんですな。で、脚の付け根の左脇から長ーいスリットが入っているので、初めて会ったときに健康的な美しい脚が見えていた訳です。モチロン今も見えてます。……その状態で鳥に(また)がる。……チャレンジャーだなぁっ!!


「さぁ、出発しましょうか?」


 ルナはいたずらっぽく微笑むと助走をつけて篭に向かって走り、篭の(ふち)に手を乗せるか乗せないかのタイミングで飛び上がって篭の中にふわっと着地した。まるで体操選手の様だ。見とれてしまう。


『アレはルナの趣味だから、真似しなくていいよ』


 セレナはスタスタと歩き、篭の中から踏み台を出して篭のこちら側に置いた。踏み台を昇り縁を乗り越え中に入ると、私においでおいでをする。私が篭の中に入るとルナとセレナが手を伸ばして、踏み台を篭の中にしまった。


 ……ま、いっか。出発だ、これから。何が始まるのか恐さ半分、ワクワクが半分。


 荷物を入れた方の篭に繋がれた鳥たちのリーダーらしき鳥が、まるで選手宣誓の様に空に向かって「ギョエエエエッ」と鳴いた。そしてバサリッ……バサリッ……と翼を広げ大きく揺り動かす。風圧が凄くて、目を細めて睨む様にしか周りが見られない。狭い視界に、巣の中の細かい藁が舞い上がるのが見えた。


 鳥たちは大きく翼を動かしながら崖の縁へと進んで行く。3羽の中でリーダーらしき鳥の翼が更に大きく振り下ろされると、ふわりと崖から飛び上がった。縄で繋がれた篭がズルズルと引っ張り上げられていく。が、残りの2羽もリーダーと同じ様にして崖から飛び立ち、中空に篭がとどまった。鳥たちはホバリングしながら、こちらの鳥たちが空へ行くのを待っている様だ。


 いよいよ、こちらの鳥たちの番だ。心なしか緊張して来る。……私が緊張しても仕方が無いんだけどね。ルナとセレナは慣れているのだろう、余裕の表情だ。……当たり前か。


 自分でも気がつかないうちに篭の(ふち)を握りしめていた。手のひらの力を抜こうと思ったけどその力は、肩から指先にまで込めてしまっていることに気が付いた。……これは抜けんっ! 顔もこわばり、生唾も飲み込み辛い。


『ユリーナ、怖い顔になってるよ、鳥たちに気持ちが伝わっちゃうよ』


 セレナに言われるが、鳥たちが羽を動かし始めたのが目に留まり、顔だけは苦笑いのまま、更に指先にぎゅうぎゅうと力が入っていく。


 だんだんと崖の縁が近くに迫って来る。見晴らしは最高! なんて物じゃない!! 鳥に繋がれた紐があるんだから大丈夫だ、と自分に言い聞かせてるけど、それでも、風圧と篭の下から伝わってくる巣に敷かれた小枝や藁の当たるざらざらとした感触が心を逆撫でする。


 こちらの篭を繋いだ鳥がバサリと羽を打つと、ついに大空へ飛び立った。その途端、私達の乗った篭がガクンと下がる。その瞬間、どうしたって思っちゃう、落ちる!! って。


「うっ、……ぐわああああっ!!」


 そして、残りの2羽の羽ばたきの風圧に翻弄されそうになった。篭から指が離れちゃいそう! どーしよう!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ