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異世界の問題点


「はい、これが例のノートだよ。」


 美桜に手渡す。リビングのエアコンと扇風機のスイッチを入れて待ってて貰って、ノートを取ってきた。美桜が見てる間におやつを漁ろう。……夕方ってお腹空くよね?


 ポテチの買い置きがあるはずだな? と思っておやつの棚を見ると塩味のポテチとクッキーを発見! ……この時期、夏季限定のちょっと変わった味のポテチも売ってるけどさ、一応は試して「やっぱ塩味!」ってなるのは何故だろう? ……私だけかな?


 美桜に「アイスコーヒーとアイスティーなら作れるよー」と言うと、「水筒が残ってるからいいよ」との返事だったので、お言葉に甘えさせて貰うことにする。おやつを準備して美桜のところへ戻ると、ノートを真剣に読んでくれていた。


 ……その顔はいつだったか一緒に帰る約束をしていて私の部活の方が早く終わり、美術室へ美桜を迎えに行ったときに見た表情(かお)に似ていた。一心不乱に絵筆を運んでいたっけ……。


 うっ! 体がムズ(かゆ)くなるっ! そんな顔で読まなくても(汗)。 なんだろう? いつも夢の話を聞いて貰ってるのに、恥ずかしくなっちゃったぞ!


「……すごいね」


 読み終わった美桜がため息と共に呟く。


「うん。なんか濃いでしょう?」


 私も相づちを返す。


「ノートに纏めたくなった気持ち、分かるよ。……友里奈は今向こうで、ルナさんのところにいるってこと?」


「そうだよ、ガラッと場面が変わったのは最初の日だけ。」


「ふうん……。」


 美桜はまたノートに視線を戻すと、ページを捲りながら聞いてきた。


「で? どんなことが訳分かんなくなってるの?」


「それも良く分かんないんだけどさ……」


 おやつを(すす)めつつ、バッグからペットボトルを出す。美桜も水筒を出して一口飲み、話を続けた。


「……私が感じたことを言わせて貰うね。普通の異世界物のお話って、あっちの世界に行って直ぐ目的意識を提示されるでしょう? 童話やファンタジーもそう。『ダンジョンを攻略して』、『魔物を退治して』とか、『家に帰りたい』、『姫を救ってくれ』とか……」


 美桜の口からこんなことを聞くとは思わなくて、ポカーンとしてしまった。それに気付いた美桜が少しむくれる。


「あのね、私のアノ人の妹なんですけどね?」


「違いない……。すんませんしたっ、続けて下さい」


 おどけて頭を下げる。美桜は一息つけてまた語り出す。


「友里奈の場合それがあるんだか、無いんだか……。まず、王子が牢屋にいたんだよね? なぜ王子が牢屋に入っているのか? 誰かが捕らえて閉じ込めたなら、それは誰か? 敵対勢力ってことで良いのか? ルナさんとセレナさんは王子とどんな関係なのか? それから王子の言ってた『世界が浄化され、人々も目を覚ます』の意味は何か? 朝露を集める花と玉虫の光を閉じ込めた花、これについては友里奈が言った通りだと私も思うけど。……こんな感じかな?」


「おおっ! なるほどっ! モヤモヤしてた気持ちがすっきりしたっ!!」


「はい、メモって、メモって」


 ノートを返されたので本棚のペン立てからシャーペンを1本抜き取り、ノートの後ろの方のページにメモった。


「やーーっ、助かった! 自分じゃ分からないことってある物だねぇ」


「まぁね、そういうときは1歩引いて考えると良いよ」


 美桜さん、軽く言いますが、それが出来れば苦労しない訳でして……!


 と、そのとき玄関のドアが開く音がして、母の「ただいま~」という声がした。


「誰か来てるの?」


 レジ袋の音と共に現れた母に美桜が挨拶する。


「お邪魔してまーす」


「あら、美桜ちゃん久しぶり。……二人がこうして揃ってるところを見るの、久々だわ」


「えっ、そう?」


「そうよ、中学生になって部活始めてからあんまり一緒にいるところ見てないもの」


 そっか、普段学校で美桜と会ってるから気付かなかったけど、母にしたらそうなんだな。と思ってたら同じことを美桜が口にした。


「友里奈とはしょっちゅう一緒にいるけど、お邪魔するのは久しぶりかもしれない」


「でしょ~。そうだ! たまには泊まって行きなさいよ、久しぶりに」


 私と美桜は顔を見合わせた。


「おばさん、美桜ちゃん家に電話してあげるから」


「いえ、それは大丈夫ですよ。泊まるなら着替え取りに行くし」


「美桜、明日部活は? ウチは明日は午後からだけど」


「お休みだよ」


「じゃ、決まりね! 美桜ちゃんが着替えを取りに行ってる間に友里奈は部屋を掃除すること! いいわね?」


 ……お母さま、それがメインだな?


 ってなわけで、美桜が泊まります。

 



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