ダンスと感想文
ガバッと起き上がる。そしてベッドの上に座ったまま、自分の腹筋力を賛美した。って、そんな場合か。夢の続きが見られたんだからメモんなきゃ!
夏の朝は暑い。喉も渇いてるけど、例のノートに要点を書く。
巨大な鳥、敵では無かった様だ。巣の場所も記入しておく。鳥は灰色で、今考えると巨大な鳩って感じがした。でも鳴き声がアレだから別物だろうな。……あの世界の移動手段に関係がありそうな感じ。
ルナ・シルバー、17歳くらいかな? すげぇ美女、って言うより女神。めっちゃグラマラス。褒めるとやたら照れまくって更に色っぽくなる。何か不思議な力を持っている。……鳥と話せるのかな?
セレナ・シルバー(名字は多分)、かわいい、見た目天使(しかし小悪魔!!)、多分私と歳が近い。そして、……。
「テレパシスト……」
あのとき、はにかんだ笑顔のままだった。
それからあの光る壁と不思議なエンブレム、窓、時計。お茶とジャム。
…ジャムは魔法薬? 濃厚な夢を見た割には、頭も体もスッキリしていることに気が付いた。
「友里奈、起きてる? 美桜ちゃんから電話よ」
ドアをノックされたと思ったら母の声がした。慌てて駆け寄りドアを開けて子機を受けとる。
「お母さん、ありがとっ。……もしもし美桜? おはよっ。……うん、……えっ……あっ忘れてた! ……やっぱりって! そこで笑うのは勘弁して下さいっ、……ほほう?……了解! じゃ、後でねーっ!」
「美桜ちゃん何だって? 聞くつもり無かったけど、随分焦ってたじゃない。」
うひゃあ、バレバレ。
「読書感想文と体育のダンスの振り付けの宿題忘れてて……。それで、ダンスの宿題を一緒にやろうって。」
「そんな宿題あるの?」
てっきり叱られるかと思ったら、拍子抜けした声で返事を貰った。まあ、まだギリギリ7月だからかな?
「うん、部活の後に運動部の子達を掴まえて、一緒にやろうって誘ってみることになったんだよ」
「ああ、……あなた達文化部だもんね」
母は凄ーく納得した顔をした。ちょっと母上! その顔はどーゆー意味!! まあ幼い頃から美桜も私も体を動かして遊ぶより、いつも家の中でチマチマ遊んでいたけどさ。
1階に下りながら母が言う。私も子機を手に後に続く。
「感想文の方は? 図書館にでも行って来る?」
「うーん、たまには家にある本にしようかなあ」
ウチはリビングに本棚があって、家族の誰が購入した本もそこに保管している。母が本好きで誰かが買った本も「次、読ませて」と言うのだ。母曰く「1度読んだ本も時間を置いて読み返すと、また違った感想を持つことが出来る」との事だ。だから本だけは大切に保管したいのだそう。
「後で見てみる」
「もし本屋に行くなら、言ってくれれば本代は出すからね」
お、臨時収入の予感がしますぞ。でも本当に、久しぶりに家の本棚を眺めるのも良いかもしれないな。幼い頃はまだ意味を読み解けなかった本も、今なら理解できるかもしれないと思った。
部活の後、何人かの同じクラスの女子に声をかけて、ダンスの宿題の件を話した。すると。「だったらいっそのこと女子全員でやろうよ」ということになった。まあ女子だけで16人なので、逆に声をかけた子・かけなかった子という風に揉め事の種を作るのもマズイよね。
逆に、いろんなアイディアが出てきそうでワクワクして来た。1人じゃ出来そうに無かった宿題が、皆となら簡単に出来そうな気分になって浮かれてしまう。うん、ウチのクラスは団結力があるな。夢とは関係無いけどあのノートに記しておこうと思った。
帰り道は美桜にまた夢の話を聞いて貰って、いつもの様に神社の神様にも報告をした。
夜お風呂上がりに鏡に写った顔を見て「あちゃあ!」と呟いた。昼間日向で話してたせいで日焼けしてる。どおりで顔を洗ったときヒリヒリした訳だ。ニキビと日焼けの二重奏だよ! っと思って良く鏡を見ると、……ニキビが減っていた。
「あれっ、……あのジャムかっ!? ……の訳無いよねぇ、いくらなんでも……」
果たして???