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女神と天使……なのか?



 ひょえっ! ……テレパシスト。


「えっと、えーっと、……」


 待て待て待て私、落ち着けっつーの! って、これが落ち着いていられるかぁーーーーっ!


「ユリーナでっす! よ・ろ・し・く・ね」


 はい、私の口と体が勝手に動いて、美少女が戦闘するアニメの様なポーズを取ってます。……何してんだろう、私。


 そんな私を見て、ルナは片手を頭に添えて肩を落とし、セレナはクスクスと笑っていた。


「とりあえず、奥に入って……。セレナ、悪いけどお茶を入れてくれる?」


 セレナは頷くと、軽やかな足取りで部屋の中に引っ込んだ。


「ごめんね、驚かせちゃった? 先に言っとけば良かったわね。……あなたのポーズにこっちも驚いたから、おあいこかな……?」


 後半小声で言ってるけど、丸聞こえなんですけどね……。


 狭い玄関は質素な感じがした。何の飾りも無い。でも土と木の匂いが漂っていて何だか気持ちが落ち着いた。どこか懐かしい感じがする匂いだ。


 短い廊下を抜けると、リビングらしき部屋に出た。位置的に鳥の巣の真下になるはず。


 部屋の一方に大きな窓があって、そこから光と風が入って来て部屋は予想外に明るい。よく目を凝らすと窓には焦げ茶色の筋があるので、階段のところの壁と同じ様な魔法がかけられているのかな? と思った。


 部屋の天井と壁は板が貼られていて、ここが土の中だとは感じられない。一方の壁にはドアが2つあり、もう一方向はキッチンがあるみたいだった。


 私達が入って来た廊下側の壁には、大きな時計の様な物が掛けられていた。真ん中に青い石が嵌め込まれていて、そこから長い針が1本と短い針が3本伸びている。長い針の先には赤い石が付いていて、短い針の先には黄色と碧と紫色の石が付いていて、じっと見ていると針の動く速度も回る方向もバラバラで、何じゃこりゃ? と思った。


 そして部屋の中央にはこじんまりとした白木のテーブルセットがあった。


「セレナのことも含めて、後で説明するからちょっとそこに座ってて」


 ルナはそう言うと、部屋のドアの内の1つに入って行った。


 と、そこへセレナがお茶を持って来てくれた。


『どうぞ。熱いから気をつけてね』


「すみません。ありがとうございまーす」


 って、コレなんだろう? ちょっと濁った茶色のお湯……。匂いを嗅ぐとほうじ茶の様な、ウーロン茶の様な感じがする。


 そしてテーブルの上に次々と並べられていく小瓶……。紫、オレンジ、赤、黄色、青。……ジャム?


『ここは砂糖が少ないの。代わりに好きなのを混ぜて飲んでね』


 そう言って小皿とスプーンを渡された。……ロシアンティー風かな? テレビで見たことあるぞ。


 小瓶を良く見比べる。紫と赤とオレンジは果実っぽいけど、黄色と青は花びらみたい。……よし、黄色にしてみよう! どうせ夢の(いせかい)なんだから現実には食せない物にする!


 恐る恐る口に含み飲み下す。……ぷはぁっ、美味ぃ~~~っ。スッゴい爽やか! えっ、何コレ。なんか体の中からパワー湧いて来る感じ。


『気に入ってくれた?』


 セレナがふふっと笑った。私はこくこくと2回頷く。


 そんな私を見たセレナが首を傾けて言った。


『ユリーナは何処から来たの?』


「えっ、と……。」


 急に尋ねられたので、脳内がフリーズする。


「どう説明したら良いのかな……」


『違う世界から来たんでしょ?』


 セレナ……、能力者ってヤツですか? 見透かされてんのかな。だとしたらさっきルナについた嘘もばれちゃうかな。


 私は普段嘘つきではありません。言い訳はしちゃう方です。可愛げの無い「デモ、デモ、ダッテ」って感じ。で、言い出した言い訳は絶対に言い切る。……だって言い訳は、私にとっては言い訳じゃなくて事実だから。相手が勝手に言い訳だと感じるんだと思うんだよね。事実を言ってるだけなのに言い訳だって決めつけられるのには腹が立つ。


 ……ああ、そうじゃなくて、嘘がばれるのは仕方がないことだから良いんだけど、ルナを信用せずに最初っから嘘をついてしまったのに、その後ルナとセレナから親切にしてもらったからばつが悪いんだよね。


「うううむぅ」


「何唸ってるの? お茶、口に合わなかった?」


 ひょえっ、ルナがいつの間にか真後ろにいた。って、これで2回めだ。剣士たる者敵に後ろを取られるな、って兄達が言いそうだ。


 ふと見ると、セレナが悲しそうな顔をしている。私は冷めてきたお茶をごくごくと飲んでからセレナに言った。


「美味しいですぅ~っ」


「なら良かったわ。って、コレ入れたの!?」


 ルナは抱えていた古着らしき物を放り出し、私のカップの側の黄色い瓶を手に取る。


「セレナ、悪戯しちゃだめじゃない」


 うん? ……お腹がポカポカして、いい気持ち。


 ああ、眉間にシワを寄せたルナは本当に綺麗だなあ、女神様って感じ。セレナがニコッて笑ってて、こちらは天使みたいに可愛い。


「ごめん、ユリーナ。この瓶に入ってるのには催眠効果があって、でも疲れは凄く良く取れるんだけど……。」


 私はルナの説明を聞きながら床に崩れ落ちた。そして思った。


 ああ、天使じゃなくて小悪魔だったのか……と。




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