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(86) 安全地帯にて7

読者の皆様、本年も本作を宜しくお願い申し上げます。

今回は、世界的規模となった感染についての話です。

それではどうぞ!

「やっぱり予想した通りだったな、和馬君」



「ええ。これで他国からの救援の望みは完全に絶たれましたね」



このウイルスによる世界的感染拡大の理由が空気感染によるものなのか、または血液感染によるものなのかは今の所、はっきりとは解らないが、いずれにせよ、効果的な治療方法が開発でもされない限りは、飛び火した感染国が日本と同じ末路を辿ってゆくのはまず間違い無いといえるだろう。

そして、人の移動が続く限り、残された安全地帯である非感染国へもウイルスを伝播させ、やがては世界全域へとウイルスが蔓延してゆくのはもう時間の問題だ。



「アメリカからの支援も今後はもう無さそうですね」



「ああ、今いる在日アメリカ軍が殺られてしまったら、もうそこで終わりだな」



「そうなると後は、自衛隊が頼みの綱になる訳だが、この有り様じゃなあ」



最早、政府機能が麻痺している今となっては、未だ自衛隊が組織的に機能しているとは考えにくく、先の館山航空基地の陥落状況から考察してみても解る様に重要な拠点が既に壊滅し喪失しているという事は、残存兵力についてもかなり弱体化し追い込まれていると考えるのが自然だろう。

また、これは日本に限らず世界各国においても考えられる事態であり、今後もし、武力を備えた組織を完全に失う事にでもなれば、脅威に対し対抗する術も無く、このまま感染者優位の状況のまま、やがては世界全域を完全制圧されてしまう事にもなりかねない。

もしも、最悪の予想が現実のものとなれば、その先に待ち受ける結末は、知的人類の絶滅及び文明社会の終焉であり、この先、破滅を突き進むのか、それとも危機を乗り越えるのか、ここから先の人類の存亡については、今が正に正念場を迎えた重大な局面と云えるだろう。


これで、自らが知っている全ての情報を伝え終わり、手にしていた手帳を閉じた英二は窓側を一瞥すると、腰をぽんぽんと軽く叩きながら、ゆっくりと立ち上がった。



「儂の話はこれで以上だ。さてと、完全に日が沈んでしまう前にここでもう一仕事するとしようか。すまんが二人供、ちょっと手伝ってくれんか?」



「ええ。良いですよ。それで何をすれば良いですか?」



今後の行動において役立つであろう貴重な情報を入手する事が出来た和馬と雄太は、今度は英二を手伝う為、手にしていた湯呑みを置いて、ゆっくりと立ち上がる。



「もうすぐ完全に日が沈むから、明かりを点けなきゃならなくなるだろ。そうなると、このままじゃ、ちょっとまずい事になるんだよな」



ここで、窓側を指差しながら歩いて行った英二は、網戸を静かに開けると窓枠上部に取り付けられた雨戸へと指を掛け、ゆっくりと雨戸を引き降ろす。



「だからさ。その前にこいつを降ろしておく訳よ」



「あっ、なるほど」



どうやら、英二は照明の明かりが外へと洩れ出す事によって、徘徊している感染者をこの場所へと引き寄せてしまう事を警戒している様である。



「今は、極力目立たない事が第一だし、なんせ何事も用心するに越した事はないからね。それでなあ。後、この部屋の他に残り3部屋あるから、悪いけれど和馬君と雄太君には、そちらの方を頼みたいんだ」



「わかりました。良いですよ」



なるべく身の安全に関する行動は早いに越した事は無いと考える和馬達は、急ぎ居間を出ると洋室、書斎といった残りの部屋へと入り、先程と同じ様に雨戸を引き降ろし始めた。

最後迄、読んで頂きまして、ありがとうございます。

次回は、和馬達が夕食に招待されるお話です。

それでは、次回をお楽しみに!

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